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2001年07月20日(金) ■ |
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なんぱち59分間の夏 |
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自分が見ていない試合のことを書くのは大変恐縮なことなのだが、印象的な話を聞いたので感じたことを書きたい。 昨日、私が西京極球場で応援しているチームの試合にハラハラしていころ、友人は太陽が丘にいた。友人は府内の高校に勤めている。担任ではないとはいえ、教え子の試合はやはり気になるものなんだろう。その学校は南八幡高校という。地元では「なんぱち」と呼ばれている。中学生の多くが近隣の他校に行ってしまうため、生徒数は少ない。それに相対して野球部員も少ない。秋季大会は部員不足で出場を棄権。春は部員はそろったものの、塔南高校に0−28という大敗を喫した。そして、夏の初戦の対戦相手はなんと鳥羽高校!昨春から3期連続甲子園出場中で、この夏も優勝候補として名前が挙がっている。置かれている立場があまりにも違いすぎる。それが顕著に出たのは試合のスコアではなく、むしろ終了後に選手が残したコメントだ。 (以下京都新聞7/20付朝刊より一部抜粋) 鳥羽・岸本主将「…(前略)…春の選抜では初戦で負けたので、もう一度甲子園に行きたい。でも、今は一戦一戦勝つことだけを考えています」 南八幡・貴志捕手「…(前略)…鳥羽は本当に強かった。去年の冬にやっと9人そろった。みんなで試合が出来てよかった」 試合は0−14。5回コールド負けだ。それでも、春より強い相手に春の半分しか点数を取られていない。友人によると、2回は「0」点に抑え、鳥羽のあのエースからヒットを1本打ったのだという。それだけで、「すごいすごい!」となったらしい。抽選会の日の夜、この対戦カードを聞いたときは、正直、「試合になるのかなあ」と思った。だから、0−14と聞いても「ようやったやん」と感じた。友人は学校内にいるため、人数が足りなくて試合が出来ない選手のつらさとかがわかるのだろう。「勝ち負けとか点差ではなく、試合が出来てほんまによかったなあって思った」と話してくれた。 試合終了後、ウグイス嬢が「所要時間は59分です」と告げたという。おそらく記憶に残るほどの短い試合だ。しかし、そこには私などでは計り知れない選手の思いが沢山詰まっている。甲子園を目指して、「勝つ」ことだけに集中するのも野球だが、ここにあるのもまた「野球」である。
追伸:人数等の関係で南八幡高校のエール交換が遅れた。鳥羽の応援団は帰る支度を始めていた。それでもエールを送ると、すばやくエールが返ってきたのだという。やはり鳥羽はただで強いわけではない。前述した南八幡の選手のコメントではないが、「鳥羽は本当に強いチーム」だ。
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