Desert Beyond
ひさ



 きっとこんなもんだろう

昔から隙間というのは良くないものとされてきた。
冬には隙間風が入る。
心の隙間には魔が入る。
隙間を作るのは良くない。
隙間なんてできる余地がないほどに
何かに打ち込めたら
なんて人の生活は楽なものになるだろうと思う。
煩悩で迷うことや脇目を振ることもなくなる。
ここまで書いておいて言うのもなんだけど
隙間なんてどうでもいいのかもしれない。
そんな隙間を気にする事が心の隙間なのかもしれない。

人と人とのつながりなんて
いとも簡単に壊れてしまうものなんだなと思った。
そんなものだよなぁ。
今までの人生をここで振り返ってみれば
そんな事は珍しい訳でもないのかもしれないな。
哀しいけどね、それが現実なのかな。
どっちがどっちでも傷ついたりするんだろうな。

僕は朝から晩まで大学の4回生部屋というところにいる。
北向きの部屋で、僕の机は北向きの窓際にある。
北西には20分で登れる山が見える。木々は青い。
飛んでいる燕や白鷺も見える。
中途半端に西に落ちる夕陽も見える。
向こうのマンションは夜になると
電気のついているところとそうでないところが
はっきりとおかしな模様を作っていて
僕はその模様に意味があるんじゃないかと
どうしても思ってしまう。
自然にその模様の意味を考えてしまっているのだ。
しかしそこに意味などはない。
あのマンションに住んでいる人は
隣の住人が電気をつけているかどうかもわからないのだ。

ねえ、もうすぐ明日がきちゃうよ。

平気な振りをすると必ず反動がくるものだ。
その反動をも抑えようとすると
きっともっと大きい反動がくるのだろう。
心までニュートンの法則に支配されているかのようだ。
ずいぶん昔に言ったけど
矢張り世界は振動しているんだよ。
向こうに振れたらこっちに来る。
必ずね。

手前だけ電気を消して
奥側だけ電気をつける
それが節約。
なるほどと思って真似をする。
何ももたらすことのない真似。

今日の昼間は暑くてね
それでも突然迷い込んだ石を運ぶ雑用。
重労働を汗をかきながらこなした。
ちょうど日は西に傾きだして街を薄黄色に照りつけていた。
北向きの机につき
なんとなく坂本龍一のBTTBを聴きだした。
一曲目の「opus」
遠く真っ白い布団が3枚並べて干してあった。
それら布団も近くの木々も午後の風に吹かれて揺れていた。
音と眩しい光景がその数分間だけ心を癒した。
なんだか時はひどくゆっくり進んでいるようで
それに合わせて風に揺れている街もスローな光。


2007年05月30日(水)
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