Desert Beyond
ひさ



 誰もいない芝生で

学内の敷地の南西にあの建物が建つ前は
あの辺には青々とした芝生が広がっていたのだ。
全部忘れてしまうよ。

カナブンがズボンのすねの辺りにくっついていた。
きっと自転車で走っていたときに
ちょうどカナブンも飛んでいて
出会いがしら的にぶつかってしまったのだろう。
緑色をしていて、特に居心地が悪そうにするでもなく
黙り込んでじっとしていた。



激しくて
切なくて
優しくて
綺麗で
熱い
それがくるり。

今日、山に登ろうとした。
松山の街は黄砂で覆われているうえ
ぼんやりと曇っていてひたすら蒸し暑かった。
ここから山を眺めて
何度も何度もばらの花を聴いた。
夜にはSuperstarを10回くらい聴いた。
虹色の天使も何度も聴いた。

家にいる意味がなくなってしまっているからか
家にいながらうまくくつろげなくなった自分に気づく。
かつて腕を鳴らした企業戦士のおじさんが
定年退職をした次の週はきっとこんな感じなのだろう、と思った。

石を3つ切った。
パワーカッターは道後まで聴こえてしまうかのような
重く鋭いつんざく音で唄い
朝飯前かのようにじゃりんと仕事をこなした。

本気でわき目もふらない。
ふりやしないのさ。

小説の無駄に長い描写が鼻についてしまう。
こういうときは読まないほうがいい、と
本を横に置いてこの部屋で昼寝としゃれ込んだ。

写真は全部昨日のもの。
日が沈んで少したった街。
こんな時街はそわそわして夜の仕度を急ぐ。
夕闇がやってくる前の瞬間。
ビリージョエルのSTORM FRONTというアルバムの内表紙に
Uptownの上空から南に見た夕暮れ後の写真が載っている。
昨日の街の風景はあの写真と似ていた。

アーサー王って人はすごい人なんだってさ。
そして湖水地方って綺麗なところなんだって。
イギリスの事に疎い僕。
冬に白地に青の水玉の傘をさしたら寒いよね。
だから冬にはオレンジ色の傘をさせば良いのさ。

僕がいるのはね、4回生部屋なんだ。
大学の。
ここはがらんどうでさ、23個机があるのにね
私物を置いてちゃんと来る人は9人しかいないんだ。
僕の机の周りには石がごろごろっとしていてね
その内のひとつには苔を乗せているんだよ。
うん、昨日山行ったときに取って来ちゃったから。
僕はこの部屋でカスピ海ヨーグルトを育て
石を置き、長靴を置き。
あぁ、もう眠くなってきちゃった。



forgot to say I'm fulfilled

2007年05月27日(日)
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