Desert Beyond
ひさ



 

夜、車1台がかろうじて通れる狭い道路を自転車で往く。右はブロック塀が続き、左は住宅。自転車のランプは音をたてながらハンドルの揺れに合わせて揺れながら道を照らす。タイヤが道路の小石を踏む音。向こうで光がパリパリと見えた。アパートの階段横から道に向けて男女がしゃがんで花火をしていた。因れた白いティーシャツの男の子は次の花火に火をつけようとしていて、浴衣の女の子は手に持つ花火の光をじっと見ていた。

この世界で今までどのくらい多くの人が未明にノクターンに耳を傾けた事だろう。ノクターンは夜をもっと深いものにするような気がする。例え今晩のように満月の近い十二夜月の夜でも、ノクターンによって夜藍色の薄い帳が街に降ろされる。


2006年08月07日(月)
初日 最新 目次