Desert Beyond
ひさ



 夏はつとめて

クラスメートの家で男だけで飲み語って、
明け方に帰ってきた。
薄闇の街を自転車でゆっくりと抜けてくる。
途中のお堂で
お参りした早起きおじいさんが自転車にまたがった。
お堂の隣の花壇の隅に、白黒の猫が座っていた。
僕が止まって「にゃあ」と言うと、
じっとこちらを見たけど動かなかった。
あまり人がにゃあと言うのは珍しくないみたいだった。

四階のアパート、東向き。
カーテンを開けて椅子に座って東を見た。
高いところにある夏雲の上端だけは朝日に照らされ桃色だった。
山はまだ深緑で、上に建つ幾つかの鉄塔は存在感のない黒色。
そう思っているとすぐ傍の中空を
二羽の燕が鋭く弧を描いて一瞬で視界から消えた。
高く薄い雲はさざ波のように波をうっていて
薄いところと濃いところが遠くの山の向こうまで続いている。
僕のベランダのバスタオルはさざ波を受けて少し揺れた。



2006年07月29日(土)
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