Desert Beyond
ひさ



 山陰放送

昨日は丑三つ時を過ぎたあたりから
いつまでたってもぽつぽつ雨というふうに
灰藍色の夜空から水が落ちてきた。

今日は朝起きると
いつもの雨の日のように
ベランダの方から雨が何かを叩く音が聴こえた。
今日は大学に行かなくてもいいかと思った。
もう一度目を閉じたよ。
[二度寝]
雨の日はやっぱり憂鬱な気分になる。
そこまでガクンと落ちたりしないけど
静かに低いところを目立たずに飛ぶ感じだ。

午後にスーパーに行って鯖の切り身を買った。
1つは焼いて、もう2つは味噌煮にしてみようと思った。
お米も買った。
スーパーに行くときも買えるときも
雨は雲から地上に降り続ける。

東を見ると
低い山は雨と靄で霞んでよく見えない。
あんなに低い山なのに
雲がたまに巻きついているのがわかる。

ネットテレビ。
愛媛にセットしても
チューナーにはいくつもの番組があって
そのほとんどはノイズだけで見れない。
うまく説明できないけれど
瀬戸内海放送
山陰放送
僕にとっては言葉の持つ響きがすごく大きい。
特に山陰放送って、自分の中の山陰のイメージが原因なのか
山間の時間がゆっくり流れる場所で見れるような。
そこでは家々はまばらで
朝には九十九に続く低い山々に霧がかかり
夕には田んぼから山まで薄く靄がかかる。
おばあさんもおじいさんも
「こんにちは」とあいさつする。
きっと人々は朝が早くて
夜は早々に寝静まってしまう。
そんなときも夜更かしさんたちは
山陰放送を見ているんだろうな。
星は信じられないくらい綺麗で
闇はこわいほど深くて
人の住むところに自然があるんじゃなくて
自然の中に人々は住んでいるような場所。
そういう想像は人恋しい気分にさせる。
そこはかとなく寂しくなる。


スーパーから家に帰ってきたら
ポストに大きい封筒が入っていた。
この間の集中講義の講師だった
金沢大学のおばさん教授からだった。
温泉玉という温泉でできる特有の石ころについて
その形成過程の論文がどうしても読みたいと
自分の気持ちを強く伝えたら
住所を教えてくれといわれて住所を書いた紙を渡した。
きっと帰ってからすぐに論文を手配してくれたんだろうな。
全部で6つくらいの論文が封筒に入っていた。
そうでなくても読むものが沢山あるのに
一気に読むものが増えた。ありがたいありがたい。


何でなのか全くよくわからないけど
寂しさには波があって
一人で何も話さずに過ごしているのが辛くなるときがある。
キャッチボールはないとしても
テレビやラジオは向こうからこっちに話しかけてくれる。
音楽やビデオは話しかけてくれない。
一人暮らしはテレビをつけっぱなしで
出かけたりするって話をたまにきくけれど
そういうのは寂しさが先行するんだろうなと思う。
気持ちがわかる。
帰ってきて電気がついているのと
そうじゃないのとでは全く違うと思う。
僕はいつものように
部屋がくらくても「ただいま」って言う。


2006年03月01日(水)
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