女房様とお呼びっ!
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2005年02月23日(水) |
「お気持ち」問題 【まとめ】 |
先に記したとおり、今回、私が発した「私の何に興味があるの?」という問いは、 たぶんそのとき、文句を言うのに飽きたか、奴の変わり映えしない話に飽きたかで、 いずれにせよ、平たく言えば「他に話すことはないのか?」という意味で投げたものだった。 殆ど嫌味だったと言ってもいい。
だから、奴が一瞬言葉に詰まるも、「…強いて言えば」と答え始めたときは、ギョッとした。 まさか、答えが返ってくるとは思わなかったのだ。 せいぜい、いつものように「申し訳ありません…」と頭を垂れて、黙り込むと踏んでいた。
驚いたものの、そうなれば、当然答えを待つ。 挙句、奴の口から出たのが、「お気持ちです」という言葉だった。 意外な返答に、こちらも一瞬息を飲み、そして、それはすぐに大きな溜息となった。 そんな成行きだっただけに、またトンチなことを…と呆れてしまったのだ。
そのせいで、私もしばし沈黙した後に、「感情のシステムってことかぇ?」と返した。 質問形になっているが、これは明白に嫌味である。 当然、まともな答えが返るはずもなく、更に畳み掛けるように言う。
「私の気持ち如何で、キミの処遇が変わってくるんだから、 興味があるのは当然でしょうよ?」
遂に奴は言葉を失い、それで私も気が済んで、「私の存在ってことか」と丸めて終えた。
◇
結局その後の話題は、元々の「他に話すことはないのか?」という文句に終始する。 帰路についてさえカライ言葉を吐き続け、項垂れる奴を残して車を降りた。
家に戻り、一息つくうちに気も治まって、急ぎメールを書く。
> 帰りがけに話題した、私への興味について。 > キミの言うところが、自分に係る利害とはまた別の次元で、 > 私が機嫌よくいるか、健康でいるかが唯一の興味である、 > という意味合いも含まれようことは、理解できます。 > ありがたいことと思います。 > にも関わらず、話の成行きで切って捨てたようになり、申し訳ありません。 > もしかすると、それで充分なのかもしれません。 > 家族や友人同士が、各々別の生活を営みながらも、 > それでも、家族や友人であるがゆえに、気にかけるように。
「他に話すことはないのか?」という不満を離れてみれば、 そんなもんかなぁと思い至ったのだ。 まぁ、それにしたって、もちっと話すことくらいあるだろう?と苦笑したけれど。
◇
この一連の記事は、奴の回答を待って掲げ始めた。 ゆえに、奴の回答は、この問いの真意を窺って書かれたものではない。 こう段取りしたのは、それこそ、奴の真意を知りたかったからだ。
改めて、私の真意を知るところとなった奴からは、 質問の意を履き違えたことを詫びるメールがきたが、別に奴は悪くない。 脈絡なく唐突に、抽象的な問いを投げた私のほうに非があろう。
例えば私が同様にこう問われたら、奴の言う「根源的な質問」と捉えたと思う。 しかして、やっぱり答えあぐねて、「キミの気持ちだよ」とでも言ったかな(笑。 日頃は瑣末なことをあれこれ文句つけているが、 奴と向き合う上で奴に向く興味は、奴そのものでしかない。 奴が初っ端思い浮かべた「全て」と言い換えてもいい。
もちろん、奴の言うように、尊重すべき個人領域は各々にあり、 そこにあからさまな興味を向ける必要はない。 具体的な何かを知らずとも、目に届く相手の様子に気を配っていれば十分だ。 それは、奴にしても、従来の人間関係の中では当たり前にやり果せていることと思う。
しかしながら、こと私に対するとき、 曰く「奴隷の領分」、すなわち「奴隷かくあるべし」の自分律に囚われて、 そうした当たり前のことが出来なくなってしまう。
◇
確かに、奴への気持ちを示すにせよ、そうでないにせよ、 共にあれば、私の言動は奴の目に届き、それなりに意識もするだろう。 が、キミが見ているのは、決してモニタに映った現象ではないのだよ。 テレビの前で煎餅齧りながら、あー大変ねーとひとりごちてれば済むようなものじゃない。 生身の人間がそこにいる、それを切実にわかって欲しい。
もっとも、これは、ついこの間までロボットだった奴には易くないことと思う。 同様に、それまでずっと奴の制御室のモニタの中で指令を発してた女が、 3Dではなく、実体のあるヒトであると心底理解するには、まだまだ暇がかかろうし、 わかってもなお、ヒトになりたての奴が人間らしい心や振る舞いを会得するには、 更に時間がかかるはずだ。
そして、そうなる過程には、必ずや痛みが伴う。 せめて、奴がその辛さを予見して、受け入れようとしていることに希望を見るよ。 けれど、辛さというのは大抵、想像するよりもずっと厳しいものだ。 それは覚悟しておきたまえ、ふははは。
ときに、奴は、 「ご機嫌良くあるよう諸般を整える」のが自身の義務と目的だと述べているが、 それは、ヒトになってからの話だからね。 これも覚えておくように(笑
◇
最後に、奇しくも「お気持ちです」で符合しあったM側の皆さまには、 イリコになりかわり、改めてお礼を申し上げたい。 なぜなら、奴は「Mの連帯」に抱く同志的感情に、殊のほか思い入れがあるのだ。 きっと、今回の符合も万感の思いで眺め、励みにしたことだろう。
その他の皆さまにも、本当にありがとうございました。
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