女房様とお呼びっ!
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2005年02月23日(水) 「お気持ち」問題 【まとめ】

先に記したとおり、今回、私が発した「私の何に興味があるの?」という問いは、
たぶんそのとき、文句を言うのに飽きたか、奴の変わり映えしない話に飽きたかで、
いずれにせよ、平たく言えば「他に話すことはないのか?」という意味で投げたものだった。
殆ど嫌味だったと言ってもいい。

だから、奴が一瞬言葉に詰まるも、「…強いて言えば」と答え始めたときは、ギョッとした。
まさか、答えが返ってくるとは思わなかったのだ。
せいぜい、いつものように「申し訳ありません…」と頭を垂れて、黙り込むと踏んでいた。

驚いたものの、そうなれば、当然答えを待つ。
挙句、奴の口から出たのが、「お気持ちです」という言葉だった。
意外な返答に、こちらも一瞬息を飲み、そして、それはすぐに大きな溜息となった。
そんな成行きだっただけに、またトンチなことを…と呆れてしまったのだ。

そのせいで、私もしばし沈黙した後に、「感情のシステムってことかぇ?」と返した。
質問形になっているが、これは明白に嫌味である。
当然、まともな答えが返るはずもなく、更に畳み掛けるように言う。

「私の気持ち如何で、キミの処遇が変わってくるんだから、
 興味があるのは当然でしょうよ?」

遂に奴は言葉を失い、それで私も気が済んで、「私の存在ってことか」と丸めて終えた。



結局その後の話題は、元々の「他に話すことはないのか?」という文句に終始する。
帰路についてさえカライ言葉を吐き続け、項垂れる奴を残して車を降りた。

家に戻り、一息つくうちに気も治まって、急ぎメールを書く。


 > 帰りがけに話題した、私への興味について。
 > キミの言うところが、自分に係る利害とはまた別の次元で、
 > 私が機嫌よくいるか、健康でいるかが唯一の興味である、
 > という意味合いも含まれようことは、理解できます。
 > ありがたいことと思います。
 > にも関わらず、話の成行きで切って捨てたようになり、申し訳ありません。
 
 > もしかすると、それで充分なのかもしれません。
 > 家族や友人同士が、各々別の生活を営みながらも、
 > それでも、家族や友人であるがゆえに、気にかけるように。


「他に話すことはないのか?」という不満を離れてみれば、
そんなもんかなぁと思い至ったのだ。
まぁ、それにしたって、もちっと話すことくらいあるだろう?と苦笑したけれど。



この一連の記事は、奴の回答を待って掲げ始めた。
ゆえに、奴の回答は、この問いの真意を窺って書かれたものではない。
こう段取りしたのは、それこそ、奴の真意を知りたかったからだ。

改めて、私の真意を知るところとなった奴からは、
質問の意を履き違えたことを詫びるメールがきたが、別に奴は悪くない。
脈絡なく唐突に、抽象的な問いを投げた私のほうに非があろう。

例えば私が同様にこう問われたら、奴の言う「根源的な質問」と捉えたと思う。
しかして、やっぱり答えあぐねて、「キミの気持ちだよ」とでも言ったかな(笑。
日頃は瑣末なことをあれこれ文句つけているが、
奴と向き合う上で奴に向く興味は、奴そのものでしかない。
奴が初っ端思い浮かべた「全て」と言い換えてもいい。

もちろん、奴の言うように、尊重すべき個人領域は各々にあり、
そこにあからさまな興味を向ける必要はない。
具体的な何かを知らずとも、目に届く相手の様子に気を配っていれば十分だ。
それは、奴にしても、従来の人間関係の中では当たり前にやり果せていることと思う。

しかしながら、こと私に対するとき、
曰く「奴隷の領分」、すなわち「奴隷かくあるべし」の自分律に囚われて、
そうした当たり前のことが出来なくなってしまう。



確かに、奴への気持ちを示すにせよ、そうでないにせよ、
共にあれば、私の言動は奴の目に届き、それなりに意識もするだろう。
が、キミが見ているのは、決してモニタに映った現象ではないのだよ。
テレビの前で煎餅齧りながら、あー大変ねーとひとりごちてれば済むようなものじゃない。
生身の人間がそこにいる、それを切実にわかって欲しい。

もっとも、これは、ついこの間までロボットだった奴には易くないことと思う。
同様に、それまでずっと奴の制御室のモニタの中で指令を発してた女が、
3Dではなく、実体のあるヒトであると心底理解するには、まだまだ暇がかかろうし、
わかってもなお、ヒトになりたての奴が人間らしい心や振る舞いを会得するには、
更に時間がかかるはずだ。

そして、そうなる過程には、必ずや痛みが伴う。
せめて、奴がその辛さを予見して、受け入れようとしていることに希望を見るよ。
けれど、辛さというのは大抵、想像するよりもずっと厳しいものだ。
それは覚悟しておきたまえ、ふははは。

ときに、奴は、
「ご機嫌良くあるよう諸般を整える」のが自身の義務と目的だと述べているが、
それは、ヒトになってからの話だからね。
これも覚えておくように(笑



最後に、奇しくも「お気持ちです」で符合しあったM側の皆さまには、
イリコになりかわり、改めてお礼を申し上げたい。
なぜなら、奴は「Mの連帯」に抱く同志的感情に、殊のほか思い入れがあるのだ。
きっと、今回の符合も万感の思いで眺め、励みにしたことだろう。

その他の皆さまにも、本当にありがとうございました。


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