女房様とお呼びっ!
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男女が交際を始めるなり、カラダだけにせよ関係を持つときには、 必ず、どちらかが口火を切る必要がある。
どっちもその気になってても、 どっちかが「やろう」とか「やらないか?」とか言い出さない限り、何も始まらない。 「やらせろ(やって)!」とか「やらせて(やって)下さい」で始まることもあるだろう。
確かに、いつのまにやら、なし崩しってパターンもある。 男女の仲なら、よくあることだ。 が、それにしたって、どちらかが先手を打ってこそ、なし崩せるわけで。
いずれにせよ、二人揃って、相手から口説かれるのを待っていては、待つだけ無駄だ。 それどころか、待つのに焦れたり疲れたり、挙句腹を立てたり、その気が失せたりしてしまう。 一般に、そうなるケースは女のほうに多い。
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このとき、女は、「女は待つもの」という倫理観だか行儀作法だかに囚われて、 はたまた、性格的に自分から言い出せなくて、ひたすら男の沙汰を待つ。 「口説かれてナンボ」という見栄とかプライドから、そうする場合もあるしね。
対する男に、その気がなければ致し方ないが、 女同様その気はあるのに、これまた同じく受身な性格だったとすれば、 巡りあわせが悪いとしか言いようがない。 見栄にしてもプライドにしても、女心を慮れないような男なら、諦めたほうがマシだ。
ただ、男には、「男は待つもの」というお作法は(たぶん)ない。 彼もまた、「口説かれてナンボ」と思ってるなら、話は別だけど(笑
ところが、この男がM魚である場合、話はちょいとややこしくなる。 性格的に受身であるかどうかはさておき、M側としての作法、 ひいては、S側とM側の関わり方についての理念に囚われる場合が往々あるのだ。
いや…理念というと、いかにもお仕着せのルールのようだが、 この場合、理想と言い換えたほうが適当かもしれない。 女が、男には惚れられてこそと夢見るように。 理想を抱けば、それはM魚としてのプライドとか主義に繋がることもあろうか。 これまた、口説かれてナンボと頑なになる女のように。
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ここで改めて、S側とM側の関わり方について。
言うまでもなく、S側とM側の関係性は、能動対受動である。 ゆえに、具体的な行動の上でも、S側が主導し、M側が追従することになる。 これに照らせば、両者が関わる最初の契機もS側がつくり、M側が応じるのが道理だ。
もっとも、最初の契機においては、M側が主導して、S側を選ぶべきとか、 M側こそ願い出るべきで、あとはS側の意思次第とか、 上と逆行する理念は各々あるようだけど。(これは、DSよりの人に多いかな)
…話を戻して。
道理は道理として、さてここで、S側が女で、M側が男のとき、どうなるか。 S男性がM女性を口説くには、およそ問題はないだろうが、S女とM魚の場合、 この道理と「女は待つもの」「口説かれてナンボ」の事情がぶつかってしまうのだ。
もちろん、待たない女はそれなりにいる。 実際、イマドキは、女が男を口説くなんて珍しくもない。 S性を備えた女ともなれば、いきおい積極的な女である確率は高いだろう。
…いや、M魚的には、高いはずだ、高いもんだと思っているかもしれないね。 更に理想に照らして、S女は総じて積極的で、男を口説くもんだとか、 M魚相手なら当然だとか、思い込んでいる組もあるはずだ。
◇
しかして、そうでない女もいるのだ。 少なくとも、私はそうだ。 ので、私を相手にするなら、待ってれば口説いてくれるなんて期待しちゃいけない(笑。
もっとも、私だって、自分から口説くときもある。 まぁ、私の場合、口説くといっても、 根本的に受動の欲情システム上での変則なので、大きなことは言えないが(笑。
例えば、主従を期した出会いなら、 お試しだなんだにかこつけてでも、こちらが主導せずばなるまい。 プレイだけの関係にしても、こっちから粉かけたときには、きちんとケジメをつける。
つまり、私が自分から口説くのは、筋として、そうしてるだけであって、 S側としての道理に従っているわけでも、積極的な女だからでもないんだね。
◇
さて、再び、件のM魚との次第を振り返る。 ご本人には、何度も俎上にのせて誠に申し訳ないが、今しばらくご勘弁願いたい。
彼との成り行きは、彼のほうから、ご提案を受ける形で始まった。 ゆえに、私の感覚からすれば、口説かれるのは自分のほうだと思った。 ところが、二度も対面しながら、一向口説いてみえる気配がない。 僅かにアクションはあったものの、口頭でもメールでも、明白な意思が示されない。
確かに、メールの折々、私に焦点をあてた願望が告白されてはいた。 それをもって、こちらから、「じゃあ、やってみましょう」と口説けばよかったのかもしれない。 あるいは、「口説いてやって下さいね」と水を向ければよかったのかもしれない。
けれども、私には、そこまでの能動的な意思も優しさも持ち得なかった。 正直に言えば、会ってくれと言われて会って、 その上に、そこまでお膳立てまでする気にはなれなかったのだ。
一方、彼にしてみれば、M側のお作法に則って、 あるいは、M的理想を心に抱いて、私の沙汰を待っていたのではないか。 S女なんだから、気に入れば口説いてくれるはずと期していたのではないか。
そう思えば、ここにも、両者間の大きな食い違いがあったことになる。
◇
今更の話になるが、 彼のほうから「プレイして下さい」とはっきり請うてきていたなら、 たぶん、私は応じたはずだ。
もっとも、そこまで私が望まれなかっただけかもしれないけど。
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