女房様とお呼びっ!
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2004年05月02日(日) |
何のバチが当たったか 2 |
このとき私は、奴の感じている「寂寥感」とは、 プライドが傷ついたゆえの喪失感に由来する、あるいは同等だと考えた。 もっとも、私の理解が正しいかどうかはわからない。 それは、たぶんに予めある思い込みや決め付けが導いたものだからだ。
実際、「こういうことか?」と言葉にしてみたが、奴ははっきり肯定しなかった。 むしろ釈然としない面持ちで、言外に抵抗を示していたように思う。
一方私は、既にこの理解にとらわれて、 あたかも奴に「プライドを傷つけられました」と非難されたような心持になってしまった。 もちろん、奴は現実にそんなことは言ってないし、態度に表してもいない。 つまりは、私の中にある恨みがましい気持ちこそが、そんな想像を招いたのだろう。
そして、その不幸な想像は、改めての鬱屈を呼び覚ます。 すなわち、奴は自分の選択した結果に納得してないのではないか? 折れた自負を悔やみ、今の自分を受け入れかねているのではないか?…そう思うだに、やるせない。 未だ奴に振り回されているようで、腹立たしいような、心許ないような心境に陥った。
もっともこうした感情を、私もまた奴に伝える言葉を持たず、 ようよう「私こそ、’寂寥感’だわよ」と言い捨てて、話題を切った。 当然のこと、奴が私の「寂寥感」について尋ねることもなかった。
◇
こうして私は、奴との関係が未だ危機を脱しきっていないと思い知る。 少なくとも、奴にあっては、自分自身を消化しかねて苦悶しているのだろう。 その奴に今刃を突きつけても、ただ動揺を招き、またいつ意思が覆るかわからない。 ここで感情からいじましく気を晴らしたところで、再びの悪夢を引き寄せては元も子もない。
たとえ鬱屈を抱えても、黙ってやり過ごすべきなのだ、今は。 ようやく気付いて、以降努めてこの話題を避けた。 必然、ここに何をか書くこともやめた。
私が再び書き始めたのは、そこから三月ほど経った頃だ。 流石にもう奴の言動に不安を覚えることもなくなっており、再開することが出来た。 とはいえ、当初筆をとらせた奴への恨みがましい気持ちは、 同じく時間の経過とともに薄らいで、既に主な動機ではなくなっていた。
◇
では、何が動機たり得たのか? もちろん、当時の私の心象を奴に知らしめたい気持ちは依然あった。 けれど、その後の展望を思いついたことで、私は大きな動機を得たのだ。 でなければ、あれ程長々と重苦しく鬱陶しい事柄を書き連ねるなんて出来やしない。 実際、何度も放り出したくなったが、その展望を胸にやり果せた。
そこまで私を駆った展望とは、これをもとに奴に感想文を書かせることだった。 丁度その頃、その以前から奴に課していた作業が完了間近となり、 次の課題に恰好だワと思いついては、せっせと準備を進め、機をうかがった。
結局奴にその課題を命じたのは、更新を停止してからしばらく後だ。 奴の多忙折なかなか機を得られずに、それは正月休みの宿題となった。
その命は、再び奴を悩ませたことだろう。 既に半年が経ったとはいえ、読むことで書くことで、辛い記憶が蘇るのは必至だ。 それ以前、記事が掲示された折々にも、奴は辛さを味わったはずなのに。
よほど難儀したものか、課題が提出されたのは、二月も半ばのことだった。
◇
「念のいったイジメでしょ?」
この仕儀を友人とのお喋りのネタにしながら、そう言った。 冗談めかして言ったけれど、我ながらまったくその通りだと切実に思う。 いわんや、こうしてバチが当たってみれば……。
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