女房様とお呼びっ!
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2003年10月17日(金) 夢のなごり

奴へのメールを書き終えたとき、時刻は夜中の三時を回っていた。
電話を終えてから、二時間以上経過したことになる。

とはいえ、さして長い文面ではない。
書きかけては、昨今のメールを読み返し、ここに掲げた自らの記事を苦い思いで読み、
落ち着かないまま思いを巡らせては、時間が過ぎただけだ。

この期に及べば、長く抱いた葛藤も奴への思いも遠い風景のようで、明かすに憚られた。
そうしたところで、既に無意味に思えたし、何より奴には更なる負担を強いることになるだろう。
いわんや、先のメールで吐露された奴の心境に、何をかコメントしても仕方ない。
もうこれ以上、奴を辛い目に遭わせる気も、その必要もなかった。

けれども、往生際の悪い私は、せめての思いで追いすがる。
別れを切り出された側が、ソレデモキミヲアイシテイルと未練たらしく言い募るように。

我ながら、みっともないなと思ったけれど、夢に取り残されてしまえば寄る辺なく、
夢のしっぽにしがみつくよりほかなかった。
電話の礼を述べ、奴を気遣う文言を並べながら、その中に、夢のかけらを滑り込ませる。


> キミ自身の気持ちがどう揺らごうと、私の気持ちは一貫しています。
> 即ち、「XXは、私の従である」ということです。




翌日も、奴は律儀に定時のメールを寄越した。
かすかな期待を抱いて、メールを開くも、依然文頭は「XXです」と始まる。
昨日の今日で変わるはずがないやと自嘲しつつ、やはりダメだったかと今更に落胆した。
諦めきれない気持ちが、どこまでも夢を見させてしまうのだ。

それでも、いつも通りにきちんとしたためられた文面を、慰められる思いで読んだ。
奴が真実どういう心境にあれ、夢の名残を留めてくれていることに、本当に救われた。
しかし同時に、既に夢を俯瞰している奴の視点を見とめるにつけ、胸が潰れるようだった。

私が送った、先の二行を引用してのコメント。


> お電話でも伺い、また文字にも表していただき、嬉しく思っています。
> また、昨夜の電話で、私に必要な言葉を教えていただきました、
> 「許して下さい」という言葉は、私も申し上げようと思いました。何度も。
> しかし、それを実行に移すことができませんでした。
> 結局、自分をさらけ出す事ができなかったのです。許されたかったです。

> けれども、**様に対する働きかけを、私はすることができませんでした。
> 贖罪を求めることさえできなかったのです。
> これが私の限界なのだなあと、静かに実感しています。
(中略)
> 今しばらく自分の気持ちを、見つめなおしてみたいと思います。




最後に、「蛇足ながら…」と直近の自身の予定が告げられる。
私が「なるべく早いうちに直に会って話をしたい」と提案したことを受けての返答だ。

これまでは、私が用立てる打診があってもなくても、予定が報告されていた。
それが、今は早や’蛇足’なのかとがっかりした心持で見つめてしまう。
私にとって、奴の何もかもが蛇足であろうはずはないのに…。

それでも、スルーされるよりはよほどマシだと思い直す。
結果がどうなろうと、とにかく会わなくてはならない。



ひとまずの方針を得て、メッセンジャーで奴を呼ぶ。
この状況でも奴が従前通りにログインしているのが、今はせめての希望だった。

奴もまた、何かしらの展望をもって、その灯を灯していたのだろうか。
それとも、自ら幕を引かんとする責任か、あるいは、それもまた夢の名残に過ぎなかったのだろうか。


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