女房様とお呼びっ!
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2003年10月11日(土) 泥沼の呪縛

落ち込んでいるときに限って、また何かやらかして、更に落ち込んでしまう…
なんてのは、よくある話だ。

低迷した気が集中力を殺ぐのか、ウマクナイ判断をしてしまうのか、とかく不調は不調を招く。
しかも、この手の連鎖が起き始めると、どうにも足抜けし難くなる。
抜け出そうと足掻けば足掻くほど、却って足を取られたりもする。

二度の対面後の奴が、まさにそうだった。
次に会うまでのたった七日の間に、大小あわせて三つの地雷を送って寄越した。
もちろん、当の本人は、それが地雷だなんて思っちゃない。
それどころか、この状況にあれば、一言一句に気を払っていたことだろう。
しかし、嵌ってしまった泥沼は、その意思を努力をも無為なものにしてしまう。

かたや私は、奴のどんなしくじりも見逃せない。
未だ心がささくれているせいで、平素なら見過ごす程度の綻びでさえ、苛々と癇に障る。
かくて、奴のメールに地雷たる思い違いを目ざとく見つけては、深い溜息をついた。
もとより安定を欠いた私の機嫌は、その度確実に傾いていく。
三つも見れば、うんざりした気分にもなった。



一番大きな地雷は、二度目に会ったときの記録に埋まっていた。
奴には、日頃から、用向きはどうあれ対面した次第の記録を課している。


> 車中でお食事をなさっており、少なからずショックを受けました。


この一文に、私こそショックを受けた。
ナンデソウナルノ?!私は菓子を喰ってもいけないのか?!
…あぁもう、言葉にするに馬鹿馬鹿しいが、正直そう思わずにいられなかった。

もっとも、奴のいわんとすることはわかる。
恐らくは、’私が空腹なのに、飲食店に自分を伴うのがイヤで、買い食いをした’
と思い込んだのだろう。

実際、そうでないから腹が立つ。
大体私は、自身に思い込みをされる自体が嫌いだ。
更にこのときは、ヘンに邪推をされたように感じて、酷く不快になる。
それは、とりもなおさず、自身のアテツケがましさを指摘されたかのようで、余計にだ。
遂には、ナリフリにケチをつけられた気にもなり、一層気分が悪くなった。



この二度目の対面を巡って、奴はもうひとつの地雷を踏んだ。
少なくとも私が伝えていない事実を、さも心得たかのように言って寄越したのだ。

私としては、敢えて伝えなかった折から驚きつつ、
思い当たるソースを確認すれば、なるほど、それらしい記述があった。
確かに、奴ならおおよその推測がつくだろう。驚きは消えた。
が、しかし、事の次第を知ってしまえば、今度は不快が募る。

奴としては、偶さか知り得たことが他人事ながら悦ばしいものであったがために、
「何よりでした」と私の機嫌を慮ってみたのだろう。
けれども、当事者たちが伝えもせず、また配慮から特定の表現を避けているのに、
そう言われてしまっては、身も蓋もない。
私の感覚では、それはまったくもって行儀の悪いことで、だからこそ不快に思うのだ。

もちろん奴には、何の悪気もなかったと思う。
が、そう思うだに、やりきれなさに頭を抱える。
また、こんなことまで言ってやらねばならないのか。
大のオトナ相手に、この手の行儀を諭すのは、正直気が滅入る。
イイ歳をしてと思えば、腹も立つ。


最後のひとつも、これに同様、自分本位の思い込みが露見したものだった。
つくづく、奴にはこの手のしくじりが多い。
面倒だが、ひとつひとつ潰していくしかないのだろう。



そんなわけで、会う前から、既に私は不機嫌にいた。
ところが奴は、当日も、更に私の機嫌を損ねるような真似をしてくれる。
流石に私も、思わず声を荒げてしまい、当然奴は、一層落ち込むことになる。
一旦嵌った泥沼の呪縛は、かくも残酷だ。

もっとも、この成り行きが、私が鞭を取るきっかけとはなった。
とすれば、これも必然の巡りだったのだろうか。


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