女房様とお呼びっ!
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2003年07月12日(土) 無言調教 〜密室以前〜

当日、例によって、イリコの車でラブホに向かう。

前回の成り行きのせいで、話すに億劫で、
二言三言指示を与えた後は、自分から話題を取らずにいた。
一方奴は、前回苦言を呈したせいだろう、積極的にあれこれと話し掛けてくる。
今までの感覚からすると、ちょっと異様なくらいだ。
奴なりに努力してるんだなぁとぼんやり思う。

しかし、私のほうは依然として会話に乗り切れない。
初めのうちは、適当に言葉を返していたのだが、段々と相槌が間遠になってしまう。
それで、いきおい奴の言葉数が増え、対し私が黙りこくるという、普段とは逆の構図となった。
本音を言えば、ちょっと黙ってて欲しかったのだけど、奴の奮闘に水を差すようで憚られた。

もっともこの時、私は不機嫌から対話に臆したのではない。
私としては、この後の調教に備えて、精神集中に専念したかったのだ。
それも、いつも以上にテンションを上げる必要に駆られていた。
なぜなら、こうした状況下、つまりこじれている相手と行為に及ぶのは、相当のエナジーが要る。
力ずくでも、自らを盛り上げていかねばならない。



もっとも、調教のプランは固まっていた。
いや、二週間前、奴の言い分を聞いた時から、既に発想はあった。

ベタな思いつきだが、
「無理やり話す必要がない」と言うのなら、物理的に話す必要を奪ってやろうと。
あるいは、禍の元でしかない口ならば、なくしてしまえと。
ここに専ら感情から、イヤガラセっぽい要素があったことは否めない。

とにかく口を塞いで、口が利けない辛さと苦しみをとことん味あわせてやろう。
奴は「奴隷の分際では、自分から話しづらい」とほざいた。
ならば、奴隷の分際でも口を開かざるを得ない状況を拵えてやる。

しかるに、その手段はすぐに思いつく。
準備も簡易だ。まずはエネマシリンジ。
そして、ビニルシートと大ぶりの桶。前日に百均で買った。

実を言うと、今回の調教は、この道具立てで必要にして充分だったのだが、
事後のことも考えて、空の桶に責め具を詰めていく。
すなわち、鞭だの蝋燭だの。縄も何本か。
’飴’も必要かしらと、バイブレータの類。
セーフワード代わりの鈴つきタオル・・・気づけば結構な荷物になった。
その隙間に、今回必須のガムテープを突っ込む。



道中、コンビニへ寄る。
イリコが下げたカゴの中へ、いつものように自分が摂る飲み物や食べ物を入れ、
更に500mlのスポーツ飲料を三本放り込んだ。

一気に重みを増したカゴが、その日の予定の一端を奴に知らしめる。
その大量の水分は、程なく奴を苦しめるはずだ。
淡々とレジを通る品物を見ながら、奴は覚悟を決めていたことだろう。

もっとも、その覚悟を上回る苦しみが待とうとは、知る由もなかったろうけど。


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