女房様とお呼びっ!
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2003年04月29日(火) ワルアガキの果て 1

待ちに待った当日。チェックアウト後、直ちに一路ラブホに向かう。



こうしたホテルのハシゴは珍しくない。
私たちにあっては、密室にあることが普通なのだ。車で移動し、部屋に篭る。
明るい日差しも青空も私たちには関係ない。
時に酷く不健全だと笑ってしまうが、元々世間並みに健全な間柄ではないから、
それでいいと思っている。

それに、何をするにも密室のほうが都合がいい。
いや、篭れば必ず色事に励んでるのではなくって(笑。
奴にとっては、衣服を取り首輪をかけられ床に這う状態になれることで、
悦びや安堵を得るのがまずひとつ。
更には、成り行きからよもや奴が黙りこくって石になろうが泣いて項垂れようが、
人目を気にせずいられるのが何よりだ。

だから、叱ったり苦言を呈したりする場は大抵密室だ。
ひょっとしたら、そこで過ごす半分以上、そうしたカライ対話に費やしてるかもしれない(笑。
もちろん、ファミレスなどに寄ることも再々あるが、なるたけカライ話題を取るのは避けている。
だって、着席しちゃうと互いに逃げ場がないものね。
第一ご飯がまずくなるのがもったいない(笑。



もっとも、そうした人中で、密室での緊張から逃れて対面することにも意味を見ている。
奴にあっては、”裸に首輪”でないから出来る話もあるかと期するのだ。
たとえ、それが他愛のない話であっても構わない。
とかく普段は私から話すばかりだから、奴から話してくれるのはそれだけで新鮮だし、
そこから何か得る事があれば喜ばしい。

しかし、往々にして、そこでもやっぱり私が話題を取ることになる。
まぁ、私のほうにネタがあって、それに対し奴の食いつきがよくて、
その後会話が転がるようなら、最初にどっちが話を振ろうがさして気にもならないのだが、
これがウマクいかない時、私は非常に居心地の悪い思いをする。
それこそ、逃げ場がなくて困ってしまう。

喧嘩してるワケでもないのに、そういう場で沈黙して向き合うのが、私には堪えられないのだ。
人とあって、黙りこくって飯を喰うのが、私には苦痛だ。
この感覚に照らし、それは奴にとっても気詰まりではないかと心配にもなる。
だから、懸命に話題を呈して、その苦境から脱しようとする。
半ば無理やりに喋り続ける。そして疲れる。

今回のウツを招いたバスの中での経過は、このファミレスでの次第と根本的に同じだ。
それが、行楽という場面と友人連れだったことで、困惑や苦痛や疲労がいつにも増した。
更に、「話すことはないの?」「そうですね」というオチに至っては、一年前とまるで同じで。
そのために、いよいよ失望してしまったのだ。



確かにその後一年で、奴はそれ以前よりは自分から話題するようにはなった。
車を運転しながらだと結構喋ってくれて、ありがたく思っている。
けれども、私勝手の実感ながら、私のほうが気を使う場面が圧倒的に多いように思う。
いや勿論、立場の差から私がより負荷を負う覚悟はあるけど、愚痴を溜め込む機会は再々だ。

奴が話せない、話さない理由は様々あるだろう。
私の気が険しくなってれば、やっぱり話すに怖じるとも思う。

けどねぇ、別に何の問題もなく食事してるファミレスで、或いは新幹線で三時間、
寡黙なままにいるのはなんぞ?
周りが浮き立つ観光バスでお通夜みたいに黙りこくって、キミはそれでしんどくないの?
ただただ素朴な疑問を投げたかった。


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