女房様とお呼びっ!
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2002年01月21日(月) 現(うつつ)に映した夢だから

夫が「犬」であった頃、私は、夢でうなされては、泣きながら、目を覚ました。
それはとても悲しく恐ろしい夢で、目覚めてもなお、その恐怖は私を苛み続けた。
嗚咽の止まないまま、発作的に「犬」に電話をかけては、気が収まるまで泣いた。
「犬」は「主」の御乱行に困惑しながらも、大丈夫ですからと何度も繰り返した。

それ程の妄動に私を駆り立てた悪夢とは、つまり「犬」が私の元を去っていく夢だ。
それも、「もう遊びは止めようよ」と嘲るように笑って、「犬」がヒトに戻る夢。
自分の心を占めている大切な現実が、実は幻だと宣告されて、目の前が暗くなり、
お砂場にひとり置き去りにされた幼子のように不安になって、号泣してしまった。

夢の中で私は、「嘘でしょう?」と問うただろうか。いや、多分、訊いてない筈だ。
何故なら、その宣告は、現実的に「いつかくる未来」として、絶えず不安だったし、
「犬」はヒトたる彼本人の一部を借りてるだけなんだ、と考えるようにしてたから。
彼が「犬」の役を降りることは、単に男女が別れる結果より、恐ろしい気がしてた。

・・・・・。

今にして思えば、そこまで悲観的になる根拠は、恋するが故だったかもしれない。
成就した恋は、必ず不安を伴うものだ。生まれた命に、死の影がつきまとう様に。
幸せの高みの傍には、絶望の深い谷がある。つまり、それ程幸せだったってこと。
けれど、恋のただ中でバランスを欠いた私は、谷底ばかり見つめてしまったのね。

もちろん、SM関係の「主従」なんて、夢々しい口約束のもろさを怖れてもいたよ。
いや、不安になる要因をそこにばかり見てた気がする。格好の言い訳だったしね。
それが、どれ程「犬」の気持ちを苛んだか。戸惑わせたか。想像すると胸苦しい。
仲良くごっこ遊びしてる筈のお友達が、訳なく泣き始めたら、困るよね。ごめん。

一度だけ、私の不安に困り果てた「犬」が、ヒトに戻りかけたことがあったっけ。
いつものようにドアを開けたら、首輪を外した「犬」がいて、本当に腰が抜けた。
へなへなと崩れ落ちて、這いずりながら泣いた。「犬を返して!」と喚き散らした。
「私のせいでお心を乱して」と項垂れる「犬」。それは、精一杯の忠誠だったのか?

・・・・・。

先日、身近な奴隷が夢に出てきた。一年もつきあっといて、初めてのことだ(笑)
けど、良い夢じゃなかった。あの頃の夢見のように、泣きながら目を覚ましたよ。
だって奴は、いつだかの「犬」のように、「もう遊びは止めようよ」と言ったんだ。
覚醒して、それが夢だと気付いた瞬間、心の底から安堵した。涙を拭いながらね。

そして、笑ってしまった。ひとつは懐かしさに。今ひとつは、奴への想いの丈に。
こんな悪夢を見る程に、私と奴は近い距離になったんだナと、我ながら感心した。
更に感心したのは、己の潜在的な不安を俯瞰できるようになった、自分に対して。
尤も、当時の恋の激情のような心境にないにしても、不安を感じる意味を見たよ。

私は、今また「主従」という夢を見ている。そう、それは、やっぱり夢なのね。
夢がまとう、いつか醒めるという不安。それは仕方のないことだわ。覚悟してる。
でも、夢を見続けたいなら、いつまでも目を瞑っていよう。自然に目覚めるまで。
終わらない夢なら、ひょっとして、「夢」と呼ばなくていいかもしれないし(笑)

・・・・・。

キミの夢を見たと言ったら、どんな夢ですかと訊いたね。内緒ヨとはぐらかした。
その場で明かせば、キミはショックを受けるだろう?(笑)だから、そうしたのさ。
すると「夢の中で、私は”笑って”ましたか?」と言葉を継いだ。答えたっけ?私。
もちろん笑ってたんだけど、ほら、状況が状況だからさ。複雑な心境だねぇ(笑)

そうそう、ちゃんと笑ってたよ。てか、キミの笑顔は知ってるよ。いつも通りサ。


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