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2001年11月27日(火) サンクチュアリ 〜カマスの告白〜

カマスは、フリーのM魚である。プロアマ問わず、多くのS女達に愛されている。
フリーってのは妙な表現だが、つまり特定の相手を(彼の場合、主を)持ってない。
というよりは、「持たない」主義なのね。彼の環境では無理だと結論してるらしい。
家や会社があると、隷従を全う出来ない。相手にご迷惑だし、自分も辛いと言う。

ならば、クラブで束の間の隷従を晴らしてるのかと言えば、それも出来やしない。
「気持ちの動く相手でないと、ちんこは勃ちませんッ」と、本人としては自慢げだ。
けど、それって同時に自分の首絞めてるんだぜ?と問えば、自覚シテマスと嘆く。
結果として、彼は気に入りのS女達の間を泳いでいる。「みんなのカマス」として。

事実だけ見れば、何とも調子のイイ、我が儘M魚だが、彼を悪く言う者はいない。
それは、彼がS女を奉りながらも、決してモノ扱いせずに対応してくれる姿勢や、
己の立場を踏まえた謙虚な態度や、その上での真摯な想いを評価してるからだ。
そして、確かに、彼が愛される最大の理由は、その暖かく真面目な人柄にある。

・・・・・。

「あんなことってあるんですね」と告白は始まった。久しぶりにカマスに会った夜。
食事を終え、彼の投宿先でくつろいでいた時のことだ。普通にお茶を飲みながら。
そそ、彼とは再々密室にいるけれど、必ずプレイするって訳じゃない。気分次第。
そん時も、積もる話に花が咲いて、だらだらと雑談をしてた。そんな成り行きで。

「こないだ、ボク、フィストやったんですよ」「へぇ、尻穴狭くなってなかった?」
「ボクもそう思って、一旦は断ったんです。最近ヤッテないから出来ませんよって」
「でも、元々ガバガバじゃん?笑」彼の尻穴は過去に検証済みだ。結構拡がるの。
「でも、フィストはキツイですよ(笑」ま、本人が言うんだから、そうなんだろう。

「出来ないと相手に悪いじゃないですか」彼に限らず、この手の発想は可笑しい。
「出来なきゃ、それなりじゃん?」と口を挟む。「その方も、そう仰るんですヨ…」
「出来なかったらソレデイイからやろうと仰って、それでヤることにしたんです」
そう言う彼は、しおらしい表情だ。その顔に感応して、私は黙って続きを待った。

「でも、やっぱ入らなくて。シて頂いてるのに申し訳なくて。で、謝ったんです…」
「そしたら、 ”もうちょっと頑張って、ダメだったら止めよ”と仰って頂いて…」
「許して頂いたと思ったら、もの凄く感激して、次の瞬間急に入ってきたんです…」
「もう訳ワカランなって、頭真っ白になって、そしたら泪がドバーッと出てきて…」

・・・・・。

彼は、決してうぶなビギナではない。M魚としての履歴は、40年近くになる筈だ。
その手練れが、たかがフィストを受け入れただけで泣けちゃうってのは、凄いね。
きっと、諦めかけた事を、S側に励まされて達成した感動が泪を呼んだのだろう。
M側にとって、それが殆ど彼の努力に因るにしても、導かれることは至福だから。

しかも、カマスの場合、今や社会的に重鎮たる齢に届き、他者を率いてばかりだ。
勿論、それが彼の役目役割であり、主たる幸せなんだろうけど、時に辛かろうサ。
だから、全く正対する位置にいたがるのかナなんて考えるのは、穿ち過ぎかしら?
ま、彼が何故Mたるかはともかく、未だにピュアな感激を得られるのは素敵ダワ。

・・・・・。

「フィストされてワンワン泣いて。変ですね、ボク…」照れながらも、彼の話は続く。
「そしたら、ボクの泪が感染ったのか、お相手の方も涙流してらっしゃるんです…」
「男の尻に手入れて泣くのも珍しいナと笑っておいででしたけど…」彼はそう笑う。
でも、ホラまた涙目になってるよ、カマス。私は、抱きしめる様に彼を見つめた。


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