女房様とお呼びっ!
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ヒトには淋しい穴がある。
からっぽでがらんどう、いつも辛くて泣いている。 いつも泣いているものだから、 皮膚は爛れて、赤い肉を晒してて、 僅かなすきま風にもひりひり痛んで、なお辛い。
だから、大抵はその扉をしっかり閉ざしているのだけれど、 実は、ひっそり、お客を待っている。 暖かくて、豊かな、潤ったもの。
穴の中にみっしりと充実する、 あるべき物が帰ってきたような、懐かしいその感じ。
『 お帰りなさい 』
盆と正月が、いっぺんにやってきたような歓びが満ちて、 その一時、淋しかった事なんて忘れてしまう。
ずっと待ってたのよ、やっぱり来てくれたのね、 嬉しいわ、幸せよ。 身体総出で、お客様の到来を歓迎する。 アドレナリンが次から次へと湧いてきて、 心臓ばくばく、血はたぎり、呼吸が犬のように速くなる。
そうして迎えられたお客もまた、 ヒトに宿る淋しい瘤(こぶ)でありました。
隠しようのない、むき出しの赤い肉。 時折、それはとても邪魔なものだけど、千切って捨ててしまう訳にもいかず、 無防備に風に吹きさらされて、いつも縮こまりながら、 収まるべき場所を探していた。 暖かくて、豊かな、潤った場所。
柔らかく包まれる、懐かしい感じ。
『 ただいま、会いたかった 』
両手を拡げて、全身を投げ出すような、 狂おしいほどの愛しさ。
淋しい穴と淋しい瘤は、強烈な引力に導かれるように再会し、 抱き合って、歓びを貪りあって、 ずっとこのまま繋がっていたいねと思うのだけれど。
残酷な神さまは、また、 穴は穴のままに、瘤は瘤のままにと、 互いを引き離しておしまいになる。
そうして、 穴は再び、辛く淋しい待つ日を重ね、瘤は探しあぐねて淋しく暮らす。 いつまで経っても終わらない、その繰り返しがヒトの運命。
それからね、誰にも幾つかずつ、淋しい穴と瘤があるらしい。 あなたには、どれ程の穴と瘤がありますか?
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