女房様とお呼びっ!
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2001年11月08日(木) 逃げた魚に導かれ #3

「××様は、とても厳しい方なんです」逃げた魚の△△は、崇める様に言ったっけ。
何人もの奴隷を部屋に通わせては使い立て、また戯れに奴隷同士をつがわせる。
従わぬ者は、容赦なく鞭で打ち据えて、意に背く者は、躊躇わず放逐すると言う。
妄想小説まんまジャンと感心するも、正直なトコ、びびったサ。どんな女だよぅ?

その彼女が、私の背後、ボックス席に陣取って、厳しい声でお供を叱責している。
「挨拶くらい、まともに出来ないのッ?」従者は慌てて土下座して、頭を垂れた。
が、そのけたたましさも、彼女の溢れる若さを認めるや、ただ微笑ましい風景だ。
まさしく、百聞は一見に如かず。思い込みにケリをつけ、また少し緊張が解けた。

やがて、何事もなかったかの如く、彼女は、ママと親しげにお喋りに興じ始めた。
彼女に叱りとばされた奴隷は、カウンター内へ移り、手慣れた風に仕事にかかる。
カウンターに独り残された私は、頃合いを待ちながら、彼女の従者に声を掛けた。
「キミも何人かのうちのひとり?」「ハイ」行儀良く返事をする彼は、幸せそうだ。

・・・・・。

さて、いよいよ、彼女に話を切り出す時がやって来た。ママが席を外したらしい。
まだ、他の客は来ない。今を逃すと後がない。小さく勇気を奮い、椅子を降りる。
背を屈めて、彼女に会釈。さぁ、言わねば!「あの…△△クンってご存じですか?」
初対面の女の、思いがけない振る舞いに驚いたのだろう。彼女も少しく身構えた。

しかし、この場に居合わせるシンパシーは幸いだ。直ちに彼女は事態を承知する。
大人らしい仕草で、目の前のソファを勧めてくれた。うーん、度胸のある娘ダワ。
私は、礼に応えて膝を揃えて座る。お供連れの彼女は、足を組んだまま。可愛い。
でも、その瞳は誠意を映し、私の話を聞こうとしてくれてる。あぁ、いい娘ダワ。

彼女の態度に励まされて、私は、話すべき事、訊くべき事を、つらつら明かした。
ただの威勢のいいおねえちゃんと見える彼女は、しかし、最後まで黙って聞いた。
そして、組んだ足をほどき、困ったように笑う。「あぁ、ヤラレちゃいましたか…」
「でも、あの子はそういう子なんです。諦めて下さい。アタシも諦めてるんです…」

彼女の証言は、私の気持ちに無理なく納得をもたらした。「約束を破る子なんです」
優れた素養を持ちながら、この悪癖を改められない。彼女からも、逃げたらしい。
「もしも連絡あったら、教えて下さい」彼女は名刺を差し出しながら、頭を下げる。
私も突然の非礼を詫びつつ、名刺を渡す。彼女に会えてヨカッタ。心から思った。

・・・・・。

彼女を祝うゲスト達が次々に到着し始め、店内が、むせ返る程に華やいでいく。
さっきまで、主賓と見ず知らずだった私も末席に留まる。賑やかさに気が晴れる。
昨日までの鬱屈から解放されて、弾けてしまった。勢いで、花を届けさせたりサ。
弾けついでに、支払いを忘れて店を後にした・・・後で気付いて大汗かいたよ(笑)

で、この未払いを届ける為に再度訪れて、以降、私はその店の常連客となった。

・・・・・。

そうそう、この時の出来事が、更に2年程後、思いがけない邂逅を生んだのよ。
その顛末は、また今度・・・うふふ、逃げた魚は、いい置き土産をしたものネ(笑)


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