DiaryINDEX｜past｜will
| 2001年09月07日(金) | Ｒに捧ぐ �� |
そう、その女。
化粧をし、お洒落をし、物腰柔らかく、暖かな微笑みを湛え、
賢明にして思慮深く、また謙虚に大人らしく振る舞う、彼女の中に、
一体、どれ程の生き物が住んでいるのだろうか？
・・・・・。
例えば。
鼻水を垂らし、お漏らしをし、お洋服を台無しにして、
親に叱られ、夕飯時まで泣きじゃくる、年端のいかない女の子。
甘えたくってダダをこね、構って欲しくて嘘を付く、こませなガキ。
淡い恋心。振り向いて欲しい男の子に、何て言ったらいいのか、ワカンナイ。
近づいてみるものの、後ろから膝かっくんをして、ケラケラ笑って逃げてしまう。
そして思春期。処女の憂鬱。男への恐れ、憧れ。
その小さな身体に抱えきれないほどの想い。未だ引きずる少女。
やがて子を孕み、産み落とした瞬間から、母という役目を負わされた。
幸せと不幸せが一度にやってきて、戸惑いながら、親ぶるコドモ。その葛藤。
女の歴史が、幾通りもの自分を創り出し、女一人の中で同居を余儀なくさせる。
・・・・・。
同居しているのは、なにも人の姿をしたものばかりではない。
それは、ケモノ・・・？
あるいは、魔物・・・？
何で、一緒に住み始めたのかはわからないけれど、
気が付いたら、そこにいた。
闇の中で目をぎらぎらさせて、爪を研ぎ、
飢えた口から涎を垂らして、生の肉を欲しがるケモノ。
獲物を求めて、今にも駆け出しそうなそいつは、
時々、繋いだ鎖を引きちぎらんばかりに、騒いだり、暴れたりする。
明るいところが苦手な天の邪鬼は、
すきあらば、誰彼なしに暗がりに連れ込んで、
「お前は馬鹿だ！」とか「役立たずだ！」とか言い立てる。
厄介な同居人たち。「早く出てってよっ！」
と叫んだところで、一向に居なくなる気配はない。
・・・・・。
今話したそいつらは、
彼女の中の生き物の全てじゃない。ほんの一部さ。
誰もが人知れず、ワンダーランドを背負っているものだけど、
彼女のそれは、とんでもないスケールで。
だから、やすやすと色んな生き物を披露してくれてるのかも知れないね。
それを、私達はとても楽しんでいるよ。ありがとう。
そう、その女、Ｒ。
あんたは全く食えない女だよ。
いつも通りの言葉を贈る。賞賛と労いの気持ちを込めて。
