女房様とお呼びっ!
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私の淫らな性情は、時折夢の中にまで忍び込む。いや・・・ 夢にまで見ることで、その根深さに気付いてしまうのだ・・・嗚呼!
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立っている私の足下には、たくさんの小鳥がいる。 どの小鳥も羽を休めて、よちよちと地面の上を跳ねている。 小鳥たちは、私を囲むように寄り集まって、飛び立つ気配もない。
私は、小鳥たちの中に座り込み、 傍らの一羽の小鳥を鷲掴みにして持ち上げて、ひっくり返す。 手の中に、白や水色のふわふわとした羽毛、つぶらな瞳、小さなくちばし。 否応なく重力を奪われて、仰向けられたまま足掻く足。
このまま、この掌を握ってしまえば、 この華奢な生き物は、はらはらと砕け散ってしまうのだろう。 しかし、殺すつもりはない。殺してはならない。 ・・・力の加減に注意を払い、私は作業を開始する。
どうやら私は、生きた小鳥を「履きたい!」と思っているのだ。
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私は脚を折り曲げて、そのつま先に、小鳥のくちばしををあてがう。 くちばしの両側に指を添えて、力を込め、無理矢理に小さな口を開かせる。 足の親指の爪をくちばしの端に引っかけて、尚も無理にこじ開けようとする。
けれど、小鳥の口は小さすぎて、ちっとも足指はめり込んでいかない。 小さな穴をくじるように、くちくちと親指の先を動かしてみるが、駄目だ。 小鳥は、もう精一杯に口の端を裂かれて、苦しそうに小さくイヤイヤをする。
でも、私の手に掴まれて、逃げることの出来ない小鳥。 抗う猶予ない力に阻まれて、僅かに羽ばたくことも出来ない。
それでも、私は、まだやめない。 なぜ入らないのだろう?、とムキになっている。苛立ち始める。
小鳥の黒い、つぶらな瞳の目尻にぽっちりと涙が浮かぶ。 小鳥が、泣く。さえずることも出来ずに。
ようやく私は諦めて、その一羽を地面に向かって投げ捨てる。
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群の仲間が、そんな酷い目にあっているというのに、 他の小鳥たちは、ひーひーとさえずりながら、未だ私を取り囲んでいる。 その中からまた一羽、地面から足を引き剥がされ、むごい検査を課せられていく。
何羽もの小鳥が、無茶を強いられ、ほとほとと泣く。 そして、程なく見放され、地面に叩きつけられる。 際限なく続く拷問のように。何羽も何羽も繰り返される。 私は、まるでひよこの選別人のように、地味な作業を反復している。
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突然、私は立ち上がる。足下に小鳥を「履いて」!
靴になった小鳥たちは、不格好なバランスで、私の足を飲み込んでいる。 小さな瞳から絶えず流れる涙が、柔らかな羽毛を濡らし、いまや見る影もない。
不如意に過ぎる苛立ちや、無味な作業から解放されて、気持ちは晴れやかだ。 せいせいと目的を果たした私は、おろしたての靴の履き心地を試す。 二、三度足踏みをして、歩いてみる。そして気づく。
「履き心地が悪いわ・・・」
・・・・・
その心地悪さを引きずりながら、私は目覚め、しばし陶然と動悸した。
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