女房様とお呼びっ!
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ベッドの上で死んでいる私。それを見ている男。小さな頃から憧れた風景・・・! 頭の中で、身勝手な物語の再生が始まる。死人の私は美しく、完璧に清らかだ。 私が死んでいることを知りながら、男は私の冷たい肌に触れ、そぅっと撫で回す。 やがて、口づける。暖かく血の通う柔らかな唇が、私の青ざめた唇に重なる。
・・・・・。
っと、ここまで書いて気付いちゃったのね。今の今まで、考えてもみなかった(汗) ・・・この成り行きって、白雪姫とかいばら姫とか、ありきたりなお伽噺じゃん(笑) ナニヤッテンダカネ・・・と今更に呆れてしまったわ。あはは。デモデスヨ・・・? この実験に姫が目覚めるハッピーエンドはないのだ。あくまでも死んだままナノ。
・・・・・。
男の熱い舌先が、ただの肉片となった私の唇をこじあける。あっけなく侵入する。 ぬめる舌が、粘膜を確かめるように蠢く。歯列を掃くように動く。隙間をなぞる。 男の唾液が、弛緩した私の唇の端から垂れて、頬を伝っていく。ゾクゾクスル・・・ その雫を追って、男の舌が頬を這い、舐め上げるように、やがて目尻に到達する。
死んでいる私は目を閉じたまま、睫毛の際を舌が滑るのを感じている。アァ・・・ 男の手が額におかれ、髪の生え際を撫で上げながら、目蓋にキスが繰り返される と、不意に目蓋に圧力がかかり、眼球が剥き出しにされて、瞳に舌が触れる。 震える舌先から、再び涎が滴って、泪のように目尻へと流れ、耳元へ垂れてくる。
私は、陶然としながら、緩慢で深い呼吸を続けている。海の底にいる時みたいに。 幼い子が、大事な玩具をねぶりまわすように、男は顔中に執拗なキスを繰り返す。 湿った音が、頭蓋に反響する。本当にボンベを背負って海中に漂っているようだ、 やがて男の唇が、再び唇に重なる。さっきよりも荒々しく、舌を押し入れてくる。
「 口を開けろ・・・!」
へ?ヨビカケマシタネ?シンデルアタシニ・・・くそー、雑念がよぎるじゃない。 頭をフル回転して、都合良く解釈することにした。コレハ、カレノヒトリゴトダ。 だってさ、こっちは死んでるってか、動かない木偶なんだから、方法あるじゃん。 指でこじ開けるとかさ、顎骨に手をかけるとかさ・・・死人ながら不満に思う(笑)
・・・・・。
死んだ私の口腔は易々とこじ開けられて、生きた軟体動物がぬるりと入り込む。 そして、仲間の死体にまとわりついては、小さく噛んだり、吸い上げたりする。 洞穴になった私の口腔は、男の唾液で溢れ返りそうになり、けれど嚥下も出来ず。 またも、ごぼごぼと逆流させてしまう液体が、首筋を伝い、うなじまで濡らす。
その間に、胸の上で固く結びあわせた私の五指が一本一本引き剥がされている。 抗いもせずほどかれて、やがて手首を掴まれ、そのまま腕ごと体側に下ろされる。 男の目的は既に童貞少年の如く。白いブラウスの中身を見たい。真っ直ぐな欲望。 不器用にボタンを弄っていたが、不意に力が籠もり、身頃を引き裂いてしまった。
男の目の前に広がる、私の乳房。乳首。そして、忙しなく剥ぎ取られるブラウス。 既に男の口元は私の顔を離れ、剥き出しの胸や腹に、熱い息を浴びせている。 その掌が、無秩序に露わになった肌を這い、乳房の脂肪を持ち上げ、包み込む。 死んでいる筈の私の肌は、けれどそそげたち、乳首はしこりきっているだろう。
その頃には、私の内側にたぎる熱が籠もり、甘い痺れが体中を巡り始めていた。 それでも、自らを欺くように深い呼吸を繰り返す。頭の中がシンと冴え渡ってく。 子どもの頃楽しんだ、あの感覚が蘇ってくる。浮遊感。アア、キモチガイイ・・・! 敢えて喘がない。息を詰めない。筋肉が最大限に弛緩しきっている。OKダ・・・!
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