女房様とお呼びっ!
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2001年07月10日(火) 「犬」と「女房」とセックスレス #5

「犬」と夢にウツツを抜かしてた間、私は「犬」以外の男とセックスをしなかった。
それは、別に貞操観念とかでなくって、「犬」に没頭して満たされてたからサ。
なので、手持ちの男達とはセックスする必要がなくなり、やがて縁は切れてった。
夢が破れて、インポになって・・・随分長いこと、ヨソの男とは無縁だった訳ね(笑)

結局、テレクラで見つけた「犬」の言葉を操るその男とは縁がなかったのだけど、
対面自体は、とてもエキサイティングだった。心にエロが戻ったのを実感したよ。
プレイに及ぶ事はなかったけれど、SMな駆け引きには興奮した。感覚が蘇った。
ちょっとした悪戯を仕掛け、反応を観察する。下腹に疼きが生じ、突上げてくる。

何より、結婚してようが、30過ぎてようが、インポなブランクがあろうが、
街場の華やかな場で、男と交渉する自分に感動する。再びの可能性に心が踊る。
どうしてもっと早くこうしなかったんだろう?こうする事が好きだったじゃない?
難解なパズルが不意に解けたように、気持ちが晴れ晴れとし、とても嬉しかった。

・・・・・。

おかしなもので、「犬」と破綻して以降、私は人付き合いに消極的になっていた。
同時期に仕事に見切りをつけたせいもあり、身近な所でこじんまりと暮らしてた。
性に鬱屈した心が、刺激のない生活を求めた。色気のない暮らし。色気のない私。
インポに悩みながらも、そのことに疑問は抱かなかった。何だか自分を諦めてた。

当然SMな人達との関わりも途絶えてたのだけど、一度だけパーティーに伺った。
その頃、月一で同好会の例会を主催してた夫が、そこにゲストで招かれたんだ。
それで私を誘ってくれて、いつもなら即座に辞退するのだけど、行くことにした。
ただ全然お洒落する気になれずGパン姿。でもって途中で一人帰ってきちゃった。

だってね、あれ程好きだった自分の姿態が、みっともなくなったと感じていたし、
SMなエロを謳歌している、かつての友人達の姿や喋る言葉に吐き気を催したし、
以前と変わることなく「Mの鑑」として皆に慕われている夫を見るのが、辛かった。
会場傍の暗がりで、夫にかつての首輪を掛けた時、死んだ心を再確認したものよ。

あの頃想いを込めた首輪を、ただのフェチファッションとして巻いたのね。夫に。

・・・・・。

男との対面で、新たな「犬」探しに希望を得た私は、毎日テレコミ活動に勤しんだ。
それだけで充足しちゃって、オナニーでイク試みは先送りにされた。単純だね(笑)
尤もそう簡単に思惑に適う男が出現する筈もなく、でも刺激に満ちた交渉が続く。
当初テンパってた私だけど、例のエロ雑誌を読んで楽しむ余裕も出てきたりした。

そして、またもある記事に目が止まる。SMの女王様が書いたと謳う本の紹介だ。
近所へ出掛けたついでに、本屋で探す。発刊から暫く経ってるらしく、棚差しだ。
郵便局で順番待ちをしながら、目を通し始める。をを、結構エッチじゃないかっ!
コレ、意外に萌えるじゃん。期待に胸を高鳴らせ、家に戻る。急いで続きを読む。

『蜜蜂の巣』という本だ。SM行為を必要とする男女と彼女の関わりが描かれる。
淡々とした語り口。直接的なエロ表現は少なくて、オカズとしては今イチだった。
けれど、数々のエピソードから伝わる人の哀しみや業の深さに魂が揺さぶられる。
取り憑かれた様に読み進めた。やはり、ここに私の心がある。そう確認しながら。

しかし、私は一気に読み終える事が出来なかった。仕方なく本を閉じ、泣いた。
そこに辿り着くまでに、涙腺が緩みがちだったのは確かだ。目蓋が熱っぽかった。
けれど、その章を目で追ううちに視界は涙で霞み、やがて筋となり流れは絶えず、
喉の奥に熱い塊を感じ、それは知らぬ間に嗚咽となった。号泣の予兆に震えた。

そして、声をあげて、自分でも怖くなるほど泣いた。苦しかった。

・・・・・。

今でも、その章の最初の頁には付箋が貼ってある。もう随分と煤けちゃったわネ。
こうして回想する為に、そこを開かなくちゃいけないんだけど、未だに気が重い。
けど敢えて事務的に、そこに書かれる文字を写し取ってしまおう。エイヤってさ。
つまりこの文章が、私に再び気付かせてしまったのよ。自分の心にある真実に…。

『 ポチは大丈夫なのだろうか? 私がいなくて生きていけるのか? 』


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