女房様とお呼びっ!
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2001年07月11日(水) |
「犬」と「女房」とセックスレス #6 |
手許にある『蜜蜂の巣』…その本のその箇所に、どうして付箋が残っているのか? 泣く程に恐ろしく感動するとこだから、栞代わりに貼ったのではない、もちろん。 目が腫れるまで涙したその日から数日経って、ひとつの決意を胸にそうしたんだ。 大事な人に、大切なことを伝えておきたい。ただそれだけの一途な想いと決心で。
今の私のありのままを、夫に伝えよう。コレ読んで泣いちゃったんだと明かそう。 インポだったことを告げよう。何故そうなったか、責めるのではなく説明しよう。 どう悩み、どう考え、どう模索したか、報告しよう。テレコミのことも含めて。 そして、一番言いたいことを、きちんと言っておこう。その理由も明らかにして。
私は、夫に手紙を書いた。誠実に伝えるために。祈りをこめて。 飾り気のない便せんに、飾らない言葉で、本当の事を、鉛筆で書いた。 私にとって「犬」はあなたしか考えられません、と告白した。 この本のここを読んで下さいと、黄色い付箋を貼った。
・・・・・。
固い決心をして書いた割には、その行為があんまり照れ臭くて恥ずかしかったよ。 それで、銀行の封筒なんかに入れちゃって、その夜、夕刊みたいに手渡したんだ。 夫は酷く吃驚して、少し身構える気配を見せた。当たり前だよね。ごめんよう。 それに対して、どう取り繕ったかは憶えてない。だって私も舞い上がってたから。
身勝手な話だけど、そうしてから、私の方はとっても気が楽になったのね(笑) そりゃ、どう返事が返ってくるのかドキドキしてたけど、穏やかな気持ちだった。 逆に、夫は困っただろうね。何の前振りもなく、いきなりだもの。悪かったよう。 それでも夫は、その後も特に変わりのない態度で振る舞ってくれた。ありがとう。
一週間位経ってからかな、夫はちゃんと返事をくれた。何気ない所作の合間にね。 「返事はもうちょっと待って。」・・・それが彼の返事だった。嬉しく安堵した。 答えを保留にされたのに、安心するなんて変かなぁ?でも、待てばいいんだもの。 あれから結構年月経ったけど、未だに保留のままだ。一生待ってもいいかもね(笑)
・・・・・。
私達の出会いはテレコミの伝言番組だ。彼が録音した直電番号に掛けたんだ。 特別に興味を惹かれた訳じゃない。ただ手っ取り早かった。手慰みにそうしたの。 彼が使う「奴隷」という言葉を、当初私は嫌悪した。現代モラルが理解を阻んだ。 けれど、彼は根気よく説明してくれた。奴隷の意味について。自分の夢について。
実際に会うまでの一ヶ月間、私達は夜毎の電話で、沢山の話題を交わし会った。 殆どは彼の夢の話、その中で彼は「主との結婚生活」についても再々語ってた。 「ホントはフルタイムの奴隷でいたいけど、現実的なのはパートタイムですよね」 生活の中にキーワードを潜ませて、そのシグナルで奴隷に戻るのだと説明してた。
この策は、幻想を現実に置き換えたいと望むSM人なら、一度は検討するだろう。 でも私達は夢に埋没しすぎて、現実を見るのが怖くて、あまり話題にしなかった。 当時、「犬」はハッキリ言ってたもの。「ワタシにパートタイマーは無理です」と。 その言葉を盾に、今後共にある為に探るべき命題に目を瞑ったんだよね、私達。
このパートタイムの方法を、手紙の中で改めて提案した。ラブホでどう?とかね。 だってどう考えても、今の生活のある家の中では出来ないし。具体的案としてさ。 私達のこれまでを知るS女達は「家ん中で襲っちゃえぇ」とか無責任な事を言う。 「今でも充分ダイジョブよ」とも言う。そうかぁとも思うが、そんな気もする(笑)
・・・・・。
この手紙で、私達の関係性を探る以外に、もう一つ明らかにしたことがある。 それは、私自身のSMシーンへの復帰だ。夫主宰の同好会へ戻りたいと伝えた。 その頃何となく、夫の会への意欲や注力が薄れているのが気になっていたのだ。 夫の本意はわからなかった。けれど、彼の大切な拠り所を守りたいと希望した。
ただ、私達の主従関係が破綻したのは周知だ。今更、私が参加してもいいのか? そう懸念した私は、再び便箋を広げ、何人かの古い友人に宛てて手紙を書いた。 そして「犬」の「主」として皆が知る名ではなく、全く別の名前で署名をした。 Mの鑑の誉れ高い主宰の「妻」ではなく、「ただのS女」の私を主張するために。
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