女房様とお呼びっ!
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今日は梅雨寒の日です。元気でいますか?タナカ。
ここにある、お前が私に宛てた手紙の最後の日付は、 もう五年以上も前のものです・・・随分時間が経ちましたね。 でも、お前と過ごした時間のあれこれは、今でもすぐに思い出せるわよ。 きっと、お前にしたってそうなんだろうって思いたい。ね、どうかしら?
『 もうワタシは、青葉様以外の方にお仕えすることは考えられません。 と言うより、お仕えできません。 他の女王様を探す事など考えることもできません。 もし仮に、他の女王様に御調教頂いたとしても、 こんな素直な従順な気持ちを持つことや、 その女王様を尊敬してお慕いすることなど出来ないと思います。 』
こんな事書いたの覚えてる?
お前の手紙はいつだって、言い訳と反省と懇願に満ちていた。 それは、鞭打たれ、浣腸をされ、蝋燭を垂らされ、聖水を浴びせられ、 それを歓び、受け入れようとする者だけが書ける手紙。 いかにも奴隷らしいラブレターだった。
お前がワープロで手紙を綴りながら、再び欲情してたのは知っている。 綿々と謝罪の言葉を連ねながら、咎められる自分を夢想してたこともね。 何が起き、何を感じたかを文字にして、私に告げるその作業が、 実は、誰あろうお前自身の満足のために、なされていたことも知っている。
だけどね、お前の手紙には本当に励まされたんだ。 どんなに「女王様」と呼ばれようとも、たかが女ひとり、 男を責める時には、不安や戸惑いや後悔がつきまとうものなのよ。 今でもそうだし、当時はまだまだそうだったと思う。 その試行錯誤の過程や感情を、お前に告げることはなかったけれど。
だから、お前がそれらを難なく無視し、誤解し、独り善がりに解釈し、 身勝手に綴る手紙が、とても嬉しかったのね。 そのことに、私が「ありがとう」なんて言ったらば、 お前はまた、あの哀しそうに落ち着きのない目をするかしら?
人はそれを幻想だと、絵空事だというかも知れないけれど、 私はこれからも、いつまでも、お前のことを奴隷と思っていよう。 別れ際にはいつも、手を振る代わりにその頬へ手をやった。 薄い頬の肉が震えて、小さな動物のようだったよ・・・。
今日はやっぱり寒いわね? やせっぽちのタナカ・・・風邪なんか引いちゃ駄目よ。
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