サッカー観戦日記

2003年09月30日(火) 雑文・01年高校女子選手権 予選分析

17・18日に引き続き高校女子選手権関連の文を置いておきます。

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01年高校女子選手権 予選分析

北海道 
予選参加8校 参加選手132人
札幌地区から5校、室蘭・帯広・函館地区から各1校参加。
全国大会出場経験チーム 北海道文教大明清

明清が全試合二桁得点・無失点で圧勝している。特に二番手は存在せず、明清がらみでないカードは接戦となっている。つまり本格的なサッカー部は明清のみ、ということなのだろう。しかも最近の明清は大学・一般チーム相手にも互角以上の結果を残しており道内に胸を借りるべき格上チームも存在しない。残念ながら系列校の北海道文教大にもサッカー部はない。今後の明清の成長にはなかなか厳しい環境にある。


東北 
予選参加28校 参加選手443人
県別参加校 青森4岩手10宮城9秋田1山形4福島0
全国大会出場経験チーム 聖和学園・常盤木学園・石巻市立女子商

聖和・常盤木両校は直接対決以外いずれも全試合二桁得点・無失点で圧勝している。県大会・東北大会ともに常盤木が優勝、聖和が準優勝。両校以外のゲームは接戦となっており、三番手は存在しない。YKK以外の一般チーム・大学も二強ほどのレベルにはない。

青森は三沢が優勝。しかし県大会で接戦続きではレベル的に厳しく、東北大会では聖和0−24で敗退。
東北サッカーの盟主・岩手の10校参加は人口比ではトップクラス。しかし9試合中引き分けが4試合を占め接戦が多く、明確なナンバー1が存在しない。宮古・宮古商の両校優勝。宮古商が東北3位に入ったが、特に実力を感じさせるスコアは残していない。一般チームには強豪・盛岡ゼブラがおり、競技志向のチームなら胸を借りる機会はあるはずだが……。盛岡市内の高校チームは岩手女子のみ。岩手ではサッカーをエンジョイする環境にはあっても高いレベルを追求する高校チームはまだないのだろう。
宮城も2強以外は接戦続き。かつての全国大会常連・石巻市立女子商も目立つ存在ではない。しっかりした大学サッカー部も一般チームもなく、宮城の女子の環境はまだまだ脆弱なもの。2強やトレセンは頑張っているが、地域に根付いた存在とは言えないようだ。
秋田は和洋女子のみ参加するが東北大会では常盤木に26失点で敗退。
山形大会は4校のリーグ戦で行われた。二桁得点のゲームもあり、つまり弱小チームとは明確なレベル差があるチームが存在するわけで今後に期待が持てる。予選参加校のひとつ城北女子に元モンテディオの選手が教員として赴任する。学校自体は共学化するが、もしこの選手が女子部も指導してくれれば、と期待している。毎年女子インカレに出場する山形大も選手育成に乗り出しているようだ。山形大のレベル自体は聖和よりも格段に落ちるが、高校生以下を育てながら自らも成長することを楽しみにしている。
福島は予選参加校ゼロ。全日本女子ユース(U−15)には参加することもあるのだが。一般クラブよりも気楽に入部できる高校サッカー部の存在意義は大きい。ある程度の人口(例えば20万人)を持つ町に女子サッカー部を作る努力は、ボランティア団体とはいえ協会の義務であると私は考えている。福島の現状はただ、悲しい。


関東 
予選参加58校 参加選手1108人
県別参加校 茨城2栃木5群馬9埼玉16千葉3東京13神奈川8山梨2
全国大会出場経験チーム 本庄第一・埼玉平成・湘南学院・入間向陽・埼玉栄・松山女子・高崎商科短大附属・宇都宮文星女子・東京経営短大村田女子

関東大会は各県2校参加(茨城1、東京3)の16校によるトーナメント方式で行われた。全16試合中二桁スコアは二試合、9点差が1試合、ついで5点差が1試合と接戦が多く、本格的なサッカー部が大半を占めていることが良く分かる。優勝した本庄第一も4試合中Vゴール勝ちが二試合と苦戦している。二桁失点したのは予選のない山梨第二代表と予選参加三校の千葉第二代表。

茨城は各カテゴリーでふるわず、筑波大が孤軍奮闘している程度。いわゆる「サッカーの町」古河や鹿島にも女子部はない。
栃木は宇都宮文星女子がある程度の結果を出している。U−18やU−15の大会に栃木選抜が出場することもあり、まずまずのレベルか。
群馬は人口の割には参加校が多い。しかしU−15の段階では結果を残しておらず、関東では苦しいところか。もっともトップクラスのチーム相手に群馬勢は善戦しており全国的にはレベルは高い部類に入るだろう。
埼玉の16校参加は全国最多で県内で高校リーグが組まれるなど充実している。しかも接戦が多い。同年代のライバルが近くに、しかも数多く存在するメリットは計り知れない。日本でもっとも環境が整っている、と断言してもよいだろう。もちろんクラブも多く、Lリーグクラブまである。
千葉はレベルの高い男子と比べて厳しい。関東レベルで通用するのは八千代松陰ぐらいか。U−15・U−18も振るわず、Lリーグ・ジェフ市原だけが目立つ。「新サッカー王国」などと呼ばれることもある千葉だが、あらゆるカテゴリーにサッカーが浸透していない以上はまだまだ、といわざるを得ない。
東京は埼玉同様高校リーグが存在する。この大会の参加資格はJFA主催大会と比べて緩やかなものだそうで、参加チームの数は高校女子選手権の参加校を上回る。別に全国大会が全てではない。都内にも、普段の練習の目標となる大会を作ることの重要性はいうまでもないだろう。えてして部員不足になりがちな女子サッカーでは、出場選手資格を厳格に規定しては満足なゲームも行えないことが多い。JFA的にはプライベート・リーグに過ぎないこの種の大会の充実こそが女子サッカーの発展を現実に支えている。東京勢は関東レベルでは十分戦えるが、激戦区だけになかなか全国大会には出場できない。しかし全国レベルのチームもいくつかあるだろう。
神奈川も埼玉・東京同様に県内の大会が充実しているが、現段階では湘南が突出している。各カテゴリーで成果を挙げる横須賀シーガルズや日体大・神奈川大など高校以外の実力チームも多く、県全体のレベルは全国トップクラス。
山梨は関東では一番実績で劣る。あらゆるカテゴリーで関東レベルでの結果が出ておらず、まずは普及から、という段階なのだろう。


東海 
予選参加22校 参加選手431人
県別参加校 静岡12愛知9三重1岐阜0
全国大会出場経験チーム 藤枝西・吉原・春日井商・桐陽・清水南・榛原・四日市西・沼津西

8チーム参加の東海大会は8点差が1試合あったほかは落ち着いたスコアとなった。藤枝西・吉原がやや抜けていた感はある。唯一予選なしで参加した四日市西もしっかりしたチームで、東海大会のレベルが低いものではないことはわかる。一般・大学チームのレベルは高校と同等であり、格上相手に経験を積むというわけにはいかないだろう。

静岡はグループリーグ+8校での決勝トーナメント方式で開催。優勝は藤枝西。全国レベルのチームがいくつかある中で、全20試合中二桁スコアは1試合のみだった。他に5点差以上が3試合と、全体的なレベルの高さが伺える。静岡選抜は毎年全日本女子ユース(U−15)に参加するが、むしろ静岡の強さは選抜チーム以外の中学生のレベルの高さにあり、高校全体のレベルを支えている。宮城や鹿児島のように私学の情熱が高校のレベルを支えている、といった脆弱なものではなく、地域に根付いた強さはさすがに王国だと思わせる。
Lリーグなどの一般チームの層も厚く、最近では静岡産業大も力をつけており、県全体がバランスの取れた発展を続けている。
愛知もグループリーグ+決勝トーナメント方式。リーグではスコアの開きはあるがトーナメントは接戦続き。優勝は旭ヶ丘でグループリーグでは0−4で敗れた愛知啓成に決勝で雪辱した形となる。しかし静岡勢よりはやや力が落ちるようだ。女子インカレ常連の中京大が手ごろな目標になりそう。
三重は四日市西のみだがここはしっかりしたチームでLリーグや代表にも人材を送っている。Lリーグの伊賀FCくノ一や下部組織のフロイラインという目標もあるだろう。しかし県内1チームでは少ない。
岐阜は参加なし。一般には東海リーグ参加チームも存在する。


北信越 
予選参加2校 参加選手45人
県別参加校 長野0新潟0富山2石川0福井0
全国大会出場経験チーム 高岡商・呉羽

富山の2校のみ参加であり、この地域がいかに女子サッカー不毛地帯であるかが一目瞭然である。富山には高校女子部が6チームあるという新聞記事を読んだことはあるが同好会レベルとしても本格的な活動には至らなかったようだ。インカレには上越教育大が毎回出場しているが、(*1)それは単に地域に他の大学チームが存在しないからであり、競技レベル自体は低い。一般チームのレベルも低い。まずはチームを作ることから始めてほしい。


関西 
予選参加15校 参加選手289人
県別参加校 滋賀1京都2大阪2兵庫8奈良1和歌山1
全国大会出場経験チーム 啓明女学院・日ノ本学園・京都橘・塩原女子・登美ヶ丘・西山・神戸市立須磨(*2)

県予選はなく、15校参加でのトーナメント方式で関西大会は行われた。クラブが発達しているとはいえ、人口比から15校という数字は極端に少ない。全15試合中二桁スコアは3試合、7点差以上なら7試合とチーム間のレベル差も大きい。競技レベルが高いとは言い難い京都橘も大量得点勝ちするほどで、ほとんどのチームにはあまり練習している様子はみられない。啓明・日ノ本の2強以外でも兵庫県勢が好成績を挙げている。関西は格上相手に胸を借りることも容易であり、その気になれば強化は難しくないはずなのだが。サッカー熱のあまりない関西の雰囲気が、女子にもそのまま反映されている。まずはサッカーをエンジョイする環境作りを進め、強化はその先の課題なのだろう。


中国
予選参加10校 参加選手164人
県別参加校 鳥取0島根1岡山2広島7山口0
全国大会出場経験チーム 広島皆実・廿日市・総社

中国大会は島根・岡山・広島の代表3校によるリーグ戦方式で行われた。予選のない島根の代表校は2試合とも20点以上失っての敗北。皆実が総社を4−1で下して優勝を決めた。

鳥取・島根は女子では特に実績もない。男子の競技人口は全国的にも多い部類に入る地域ではあるが、女子はまず普及から。
岡山は代表決定戦で総社が7−0と圧勝した。総社は元U−15岡山県選抜も多いが全国レベルでは苦しい。やはり中学生の層の薄さ、県内のライバル不足など自力で解決できない問題が多い。隣の高梁にある吉備国際大が最近力をつけており、手ごろな対戦相手にはなりそう。Lリーグを目指す湯郷ベルの誕生も興味深い。
広島県大会はトーナメント方式で行われ、全7試合中二桁スコアは3試合。皆実は祇園北に4−0、決勝の山陽女子には1−0と接戦を演じており、県大会も甘いレベルではないことが推測される。準優勝の山陽女子は廿日市に4−1、沼田に6−0と完勝しており、今後の注目株。沼田も初戦は27−0と圧勝しており、しっかり練習しているチームと思われる。県大会の充実が女子サッカーの普及につながり、それが更なる県大会の充実につながることは他の地区でも証明済みであり、広島の今後の成長は大いに期待できる。現在高校と一般のレベルは互角のようだ。


四国
予選参加8校 参加選手115人
県別参加校 香川0徳島2愛媛5高知1
全国大会出場経験チーム 済美・宇和島南

四国大会は徳島・愛媛・高知の代表3校によるリーグ戦方式で行われ、済美が2試合とも二桁得点・無失点で圧勝した。

香川はエントリーなし。やはり各カテゴリーで実績はない。
徳島も現時点ではレベル的には厳しいだろう。しかし全日本女子ユース(U−15)には愛媛を押さえて毎年のように出場しており、少なくともU−15県選抜はある程度の力があるはず。
愛媛は済美と宇和島南の直接対決が事実上の県代表・四国代表決定戦となる。1−0で済美勝利。他のカードでは両校とも5点差以上の勝ち。両校とも大学・一般チーム以上の力を持ち、県内最大のライバル関係にあるが、松山市・宇和島市間にはかなりの距離があり、手軽には対戦できないそうだ。県全体の強化なしに両校がさらに力をつけるのは難しいかもしれない。
高知は一般では高知JFCローザが四国トップクラスだが、高校は特に実績はない。そもそも男子のレベルもサッカー熱も四国では格段に落ちるとされており、まずはサッカー自体の普及が課題か。


九州
予選参加15校 参加選手253人
県別参加校 福岡4佐賀0長崎1熊本0大分0宮崎1鹿児島6沖縄3
全国大会出場経験チーム 神村学園・鳳凰・大津・鹿屋女子・鹿児島女子・那覇西・不知火女子(*3)

九州大会には福岡・鹿児島・沖縄から2校ずつ、それに長崎・宮崎の各1校を加えた8校によるトーナメント方式で行われた。神村は準決勝で豊国学園を3−0で破り決勝では鳳凰に1−0で勝ち県大会決勝の雪辱を果たした。鳳凰は5−0、6−0と楽々決勝進出。豊国学園が3番手といえる存在。

福岡は4チームでトーナメント方式での県大会開催だがリーグ戦のほうがいいのでは?豊国が初戦を二桁得点で圧勝し、決勝では誠修を4−2で破る。誠修は初戦で福岡女学院に3−1で勝つ。福岡女学院も一般チームとしては代表選手輩出実績のあるチーム。豊国・誠修・福岡女学院の3チームは一定のレベルにありそう。福岡大は毎年インカレに出場しているが神村ほどのレベルではなく、豊国あたりにとっては互角のライバルだろう。県全体のレベルアップが待たれる。
長崎は島原商のみ。サッカーの町・国見にもおなじみのユニフォームを着た国見レディースが活動しているが、高校チームとしては存在していない。
Jクラブのある佐賀・大分にもエントリーなし。熊本では大津がかつて全国大会に出場したことがあるが現在は高校部活としては活動せず。女子の競技力はその国の男子の競技レベルや経済力とともに女性の社会的地位の高さが反映される。熊本ではかつて高校野球部監督として知られた県議が女性市議に議場内で公然と痴漢行為を働き、周囲もその場で止めもせず、本人も処分すらされない、という酷い事件があったが、女性差別が特にひどいとされる九州の社会環境が、女子サッカーの普及に水を差しているのかもしれない。
宮崎は聖ドミンゴのみエントリー。九州大会では初戦突破している。
鹿児島は決勝で鳳凰が神村にVゴール勝ち。両校とも他のゲームは圧勝している。全国大会を経験している鹿屋女子・鹿児島女子も1回戦は大勝しているが準決勝では両校あわせて20失点しており、2強との差は大きい。全日本女子ユースには鹿児島選抜がU−15、U−18ともコンスタントに出ており、九州ではダントツの存在といえる。ただし一般チームは弱く、女子サッカーが広く普及しているとは言い難い。
沖縄は3校でのトーナメント方式だがリーグ戦のほうが良いと思う。那覇西が11−0、4−0で優勝。しかし九州大会では神村に1−7と敗退。ある程度希望の持てる結果だが、県内の強化なしには全国は無理だ。

*1 02年度は参加せず
*2 02年度大会には田辺商が出場
*3 現在の誠修

上の文章は01年度大会直後に書いたものに後日手を加えた


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