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2003年01月14日(火) 勘違い

昔、隣の家に結婚して二年目の夫婦が引越してきた。
その人たちは沖縄の人たちで、
近所のいつも何か言いたげなおばさんたちやうちの両親とは違う、
今まで見たことのないような明るい雰囲気をもった二人だった。

二人には子供がいなかった。
子供は好きなのだがまだできなかったらしく、
隣に住んでいたまだ幼かった私に何かしらと声をかけてくれた。
ある時夜中に両親が二人で飲みにいってしまい、
真っ暗な中に一人取り残されて怖くて泣いている私を
二人で両親が帰る頃までなだめてくれたこともあった。

私は人見知りしながらもこの夫婦に少しずつなついていき、
隣の家によく遊びにいくようになった。
私は彼らが好きだったし、彼らも私が好きなのだと思っていた。
彼らが夏に帰省した時の
おみやげのお菓子はあまりおいしくなかったが、
二人がくれたものだから一生懸命食べた。

しばらくして、私たちの関係に変化が訪れた。
二人の間に子供ができたのだ。
彼らは何かしらと私に自分たちの間に
これから生まれようとする子供の話をし、
私と遊ぶことは二の次になっていた。
そのうちに私は、彼らが私と遊んでくれていたのは
私が好きだからではなく
「子供」が好きだったからなのだということに気づいた。
私でなくても、別によかったのだ。

自分の場所をとられたような気がした私は、
二人が子供を欲しがっていたことを知ってはいたけれど
奥さんのおなかに触るのも本当はとてもいやだったし、
「(子供ができて)よかったね」とも本当は言いたくなかった。
今日は遊びにいくのはやめようと思いつつも、
もしかしたら今日は子供の話をしないのではないかと
はかない期待を抱きながら、
徐々に日にちをおきつつも
私は彼らの家に遊びにいくことをやめなかった。
でも、遊びにいくたび寂しさは募るばかりだった。

ある日遊びにいったら二人とも留守だった。
ただでかけているだけなのだろうとわかってはいたが、
一人にされた寂しさでいっぱいになった私は
誰もいない自分の家に戻り、一人で泣いた。
その日を境に、近所で顔をあわせた日以外は
彼らの家にあまり遊びにいかなくなった。

「最近、遊びにこないんだね」とだんなさんが
一度だけ言ったが、私は何も言わずにただ笑っていた。
彼の濁りのない瞳に見つめられ、
自分の寂しさを見抜かれないように必死に笑顔を作った。

一ヵ月後、夫婦は引越していった。
家を離れる前にうちに挨拶をしにきた。
母が二人がきていることを私の部屋に言いにきたが、
私は眠っているふりをして彼らには会わなかった。
玄関のほうから、「元気でね」と彼らが言うのが聞こえた。

彼らのトラックが発進した音が聞こえると同時に、
胸の奧で何かがぎゅーっとちぢんでいくような気がした。
しばらくしてトラックの音が聞こえなくなった頃、
泣かないように我慢していた私は、
緊張から解かれたせいか疲れて眠ってしまった。


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