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2003年01月15日(水) まだ、奪わないで。

友人のK君の犬が病気で危険な状態だという。

なすすべもない彼は、弟のように一緒に過ごしてきた彼が
目を閉じて眠っているのをただ見守るだけ。
昨日から、彼が口にした言葉は犬の名前だけ。
でも、犬は少し大きな物音にすら目をあけようとしない。
老犬というほど年をとっているわけではなく、
特に間違った飼い方をしていたわけでもなかった。

彼は、K君が唯一心を開ける相手だった。
彼は人がとても苦手だったが、犬の具合が悪い時は
恐怖心をおさえつつ犬を獣医に連れて行った。

医師からちょっと無神経な発言をされて傷ついたり、
看護士たちが自分のことを悪く言っているのではないかという
不安に心をいためながらも、犬が具合が悪いときは我慢して通院した。
医師が犬に対していい加減な治療をした時、
自分がこうだから犬もちゃんと扱ってもらえないのではないかと
何度も自分を責め、病院をかえるたびにもっと強くなろうと思っていた。
そんな苦労もあったためか、
犬が元気なときはK君は本当にうれしそうだった。

K君から今犬を奪ったら、彼の心まで奪うことになる。
そんなことをして誰が得をするのだろうか。
神の与えた試練とか前世の行いがどうとかそんなことはどうでもいい。
今何かが彼の犬の命を奪おうとしているなら、
それは大きな間違いとしか言いようがない。
年令という数字だけ見れば彼は大人かもしれないけれど、
K君は一人で人生を歩むにはまだ早すぎる。
彼が傷ついたときに支えてあげられるのは、
彼が怯えることなく信じられるのは、
今目を閉じているあの子しかいない。

早く間違いに気づいてください。
まだ、K君から彼を奪うべきではないということを。
どうしても代償が必要なら、
私がこれから生きるのに使う時間を
好きなだけ削ってかまいません。

だからどうか、
まだ、彼からあの子を奪わないでください。
せめて、あと数年、
彼が犬との別れをちゃんとうけとめられるようになるまで。


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