- different corner -
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涙はストレスを洗い流す作用があるという。
私はつらいことがあっても泣くことができない。 でも、ぜんぜん泣けないわけではなく、 泣くことで自分がつらくなる時に限って 涙が出るようになっているようだ。
昔、私が幼い頃、父は私が泣きだして両手で顔を覆うと おもしろがって私の両手をつかんで顔をおおえないようにし、 涙でぬれた歪んだ顔を見て声をたてて楽しそうに笑っていた。 布団をかぶっていてもはがされて見つけられた。
私は泣く原因となったことよりも 自分の泣いている顔を見られているのが 恥ずかしくて泣き喚いた。 もう泣きたくないのに、涙がとまらなかった。 そんなことが何度も繰り返された。
小学生の頃、先生からの配布物が足りなかったので 先生にもらいにいったら、私が小声でいったのが 気に食わなかったらしく、怒鳴りつけられた。 私は先生を怒らせないように大きい声で言い直そうとしたけれど、 涙がでてきてはっきりしゃべれなくなった。
先生の怒鳴り声はさらに大きくなり、 それに比例するかのようにクラスは静まりかえっていった。 先生をもう怒らせちゃいけない、 みんなに迷惑をかけちゃいけない、 だからもう泣いちゃいけない。 なのに、涙はそれに反してどんどんでてきて、 私をますます辱めた。
「ぷりんとをください おねがいします」
そうはっきりと言えるようになるまで、 教室の前で何度も言い直しをさせられた。
そんなことがあり、泣くことはよくないことなのだと 私は小さい頃から思っていた。
でも、つらいときに涙が出ないから、 何をされても平気なんだろうと誤解され、 かわいげがないと言われ、 あなたは私と違って強い人だと言われ、 どうして故人の死を嘆いてないのか怪訝な顔をされ、 無感動な人だと思われた。 でも、泣くことすらできない自分を とても恥ずかしく思ったときだけは涙がちゃんと出た。
今、私は疲れと絶望感とあきらめに覆われながら、 新しい傷がいつ治るのか待ちわびている。 涙腺が動こうとしているのはわかるけど、涙が出る様子はない。 きっと私は、また一適の涙も流さずにこれを乗り越えるのだろう。
そんな私のことを、 誰かは強い人だと言うのかもしれない。 かわいげがないと言うのかもしれない。
でも、もういいのだ。もう……。
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