転勤が決まって月末には引っ越しだというのに、妹の要請により、甥っ子の子守りに行って来た。 来週には見積もりに来て貰う予定だし、正直余所の家の手伝いなんてやっている場合ではないのだが、段ボールが来ない段階で出来る事は限られているし、まあ行ってやってもいいよという事で。 今回も妹の所で甥っ子を拾って、公共交通機関で実家に向かった。 段々大きくなって、座席に寝かせるのが大変になって来た。スペース的な意味で。
道中甥っ子はお利口さんだったのだが、私が大失敗をしてしまった。 乗り換えの時、早く良い席を確保したい一心で、「さあ走るよ!」と片手でキャリーケースを、もう片手で甥っ子の手を引っ張ったのだ。私は前しか見ていなかった。 ギャーという泣き声で振り返ると、甥っ子が地面に伏せていた。お昼寝のすぐ後という事もあり、足が縺れて転んだ模様。 キャリーケースを放っぽって慌てて甥っ子を抱き上げると、おでこに擦り傷が付いて赤くなっていた。 そう言えば妹はこれぐらいの頃、顔から玄関に落ちて、鼻を擦り剥いていたっけな。大きな瘡蓋が出来て、暫くコアラみたいな顔になっていた。あれは私のせいではなかったけれど。 そんな事を思い出しながら、ごめんね、私が悪かったねと、号泣が続く間ずっと甥っ子をヨシヨシしていた。 それが落ち着いたら、しゃくりあげる甥っ子を抱っこして移動。最初からこうすれば良かった……。 目当ての便に乗り換えてからも、甥っ子は泣きべそ顔であった。よほど痛かったらしい。 赤かったおでこは、青みがかったたんこぶになっていた。ただでさえおデコちゃんなのに。 移動中にも少しお昼寝をして、実家に着くと、母が甥っ子に素敵な物を用意していてくれた。 ノベルティの玩具の車で、甥っ子が大好きなやつである。 チョロQのようなスピードは出ないが、結構ちゃんとした作りで、扉が開いて中に小さな物なら入れられるようになっている。しかも2台。 一体どうしたの?と母に訊くと、親しくしているご近所さんの身内がそこでバイトをしているのを聞きつけて、貰って来て欲しいとお願いしたとか……というか、こんなノベルティがあるなんて知らなかったよ。 勿論甥子は大喜びで、早速新しい玩具で遊んでいた。 取り敢えず、頭に異常は無いようで一安心だ。
うちの両親は、よく私と妹の名前を取り違えて呼ぶ。 私は自分の両親をお父さんお母さんと呼ぶが、甥っ子はそれに対していちいち 「ちがうよ〜、おかあさんじゃないよ〜、ばあちゃんだよ〜」 と訂正を入れて来る。甥っ子にとってのお父さんお母さんは、私にとっての義弟と妹だからだ。 そしてつい、甥っ子を妹の名前で呼んでしまう私と両親。 結構カオスである。
実家のトイレで補助便座に座らせて排便を促したところ、「あっちいって」と言うので、2歳児でも人に見られながらの排泄は嫌なのだろうと思って、甥っ子を置いてトイレのドアを閉め、おしめを片付けて戻ってみたところ、ドアに鍵がかけられていた。 螺旋回しを使って外側からあけると、甥っ子は便座に座って、ニヤニヤと得意顔をしていた。 こいつ……と思って抱き上げると、便座にはうんこがべったり……ケツにうんこが付いたまま、一人で便座から降りて、内側から鍵をかけたのだな。悪戯が成功したので、ニヤニヤしていたのだな。 甥っ子の気持ちはわかるが、どうすんのこれ……頼むから、私の仕事を増やさないで頂きたい。
来週は引越しの見積もりだ。 こんな事やっている場合じゃないのに……ほんと。
2週間振りに会った甥っ子は、随分顔が大人びていた。 と感じたけれど、やはりまだまだ幼児。言葉がたどたどしくて面白い。 ・おくすり→おすくり ・かぴかぴ(洟が乾いたさま)→ぱきぱき 等 ・これなあに? なあしてんのー? ・(○○よ、と言われて)そっかー、○○かあー 語彙が増えて来たので、言葉が通じなくて癇癪を起こす事が以前よりも減った。 要求が通らなくて癇癪を起こすのは相変わらずだが。
髪が伸びて来たので、散髪に連れて行った。 そして泣く。暴れる力が強くなって、抑え付けるのが大変。 私も床屋さんも疲れて、虎刈りだけどまあいいよね……と妥協する事に。 なのに甥っ子は、床屋さんが貸してくれた車の玩具を握ったまま離さない。 仕方が無いので、じゃあ自分でお願いしなさいと言ったら、しゃくりあげながら「かしてください……」と。 甥っ子は泣き過ぎて、暫く声がガラガラであった。折角声が可愛い時期なのに勿体無い。
ビー玉を片手に隠して、「どっちだ?」とやってみせると大喜びする。興奮して涎が垂れていても気付かない位。 そして自分でも真似するが、鷲掴みにして両手に握るので、どっちも糞も無いという。
お店のワゴンを覗いたら、チョロQの模造品のような小さい玩具の車が9個セットでなんと300円で投げ売りされていたので、甥っ子に買ってやったところ、喜んで、 「あら〜、いいじゃなーい。あら〜」 と、頭の天辺から声を出していた。誰の真似だよ、それ……。 (後で主人に話したところ、一発で「お義母さんだな」と。なるほど、言われてみればそうかも。母の真似だったのか)
食事中に好きな番組(の録画)を観たがる。 きかんしゃトーマスだったり、ピタゴラスイッチだったり、アンパンマンだったり。 私に向かって「トーマス、トーマス!」と訴えていたので、 「じゃあ祖母ちゃんにお願いしてご覧。『トーマス見せて下さい』って」 と促すと、途端に消え入りそうな声で、 「ばあちゃん、トーマスみせてください……」 さっきと態度が全く違うので、これはと思い、 「お前それ、わかって演技してるんだよな?」 と言いながら顔を覗き込むと、甥っ子は俯いたまま、ニヤァと笑った……やっぱり!
実家のトイレではまだうんこ出来ていない。 妹のアパートでは何度か成功しており、自分のうんこを指差して 「みて〜、えすじふっくみたい〜」 と言うらしい。S字フックはお気に入りのアイテムだとか。 早く教えてくれるようになるといいなあ……ヒステリックになりながらうんこの始末するの、私だって嫌なんだよ。
そうだ、今回の一番の進歩。 私の事をちゃんと呼べるようになっていた。 今までは他の人が聞いたら「?」と思うものだったが、ちゃんと意味が通じる呼び方を出来るようになった。
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