その日私は
憂鬱だった。
会社の玄関先で夕礼待ちをしていたリュウと目が合ったのに…
リュウはマッハのスピードで目を反らした。
「見てはいけないものを見た」かのように。
私はとても鬱だった。
それでも薄井くんからのメールは届く。
「月曜日からずっと風邪気味だよー。
みぃちゃんの風邪が移ったかな。」
そして
「今度カラオケいつ行けそう?」
「とりあえず今週は無理だわ。ごめん。」
リュウとの事のショックと、薄井くんの鬱陶しさで
とてもカラオケなんて行く気にはなれなかった。
「そうか。今週もダメか。
来週は俺が予定あるし、なかなか合わないね。」
そんな返信が来た。
とりあえず、今回は何とかなった。
だけど、いつまでこんな事続けるんだろう?私。
私もリュウに期待して、裏切られて。
散々傷ついてきたのに、こんな事してて。
自分がやられてイヤな事は他の人にもしなきゃいいのに。
だけど、告白されたワケでもないから、どうしようもない。
とりあえず、誘われたら断り続ければ相手も気づくだろう。
そう思った。
気づくと薄井くんからメールが来てる。
「明日みぃちゃんとカラオケ行けると思ってたから残念や~
またヒマになっちゃったよ」
・・・それにしても鬱陶しい。
別に約束してたワケじゃないのに。
そんな当てつけがましく言われても…。
リュウも私に対してこんな気持ち?
でも、私はここまでシツコクしてないし・・・。
リュウは一体どんな気持ちだったんだろう。
どんな気持ちであんな視線の反らし方をしたんだろう。
そんな事を考えていたら
また薄井くんからメールが来てた。
「お~い、返信がないと哀しいぞ~~。
すねちゃうぞ~
…あんまメールせんほうがええかな?」
そういや、さっきから返信してなかったや。
つか
ウザっ
私はようやく返信をした。
「気分によっては返信できないこともあるから。
先に謝っておくわ。」
「さきに謝られてもね~
気分ってヒドいな~(泣)
ころっ
女子バレー、オリンピック出場だって♪」
返信しないと拗ねるとか言うのに
先に「返信できない。」って言えば、ヒドい?
私はどこまでもアナタのメールに付き合わなきゃいけないの?
「とりあえず今、鬱入ってるから、あんまりメールしたくないから。」
「そうなの?
ごめんね。俺いい病院とか知ってるから無理しないで
相談とかしてね。」
・・・マジ病人扱い?
「別に病院行く程じゃないから。」
「だからさ、気分転換ならいつでも付き合うから言ってよ」
「ありがと。とりあえず遊ぶ気が出たら言うわ。」
「気になったらね~。へいへい。ふぅ~」
アナタに誘われたのを断ってもいけないんですか?
もう返信しなかった。
けどメールは届く
「俺はいつも健気に応援してるよ」
返信しなかった。
けど、メールは届く。
「俺もね、みぃちゃんが思うよりも結構悩むこと多いし辛いこともあるよ。
でも、頑張るしかないんだ。
今度映画でも見に行かない?
もちろん、明日でもいいよ~。」
何でしょう?
人が鬱だからメールしたくないと言ってるのに。
相手の気持ちも考えずにガンガンメール送りつけて。
遊ぶ気しないって言ってるのに明日映画???
潮時かもしれない。
こんな面倒な事に巻き込まれるのは
本当に勘弁だわ。
そして。
薄井くんから逃げてる自分が
私から逃げたリュウと被る。
リュウもこんな気持ちだったら
私にはもうなす術はないよ。
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