※ふふふ・・・このシリーズの更新は、いったい何ヶ月ぶりでしょうか? 数えるのが異様に怖いですわ☆ さて世間ではいよいよ、魔人学園の続編(と言うか、番外編?)の製作発表が公表されましたねー。主人公がトレジャーハンターと言うのは、学園モノには違和感バリバリという感じがしないでもないですが(汗)。おまけに制作元があのAT○ASとは・・・多分ちゃんちゃん☆ は首、突っ込まないでしょう。二次創作にコトのほか厳しいことで有名なところですから。・・・でも頼むから、「魔人學園」最終話はシャフト単独で作ってくれ・・・☆ まあ、今はともあれ、榊さんです。今回榊さんは、とんでもない受難に逢ってしまいます。イヤイヤついた任務ではあるみたいですが、やはり榊さんにとっては火附盗賊改与力というのは天職ということなんでしょうかねえ。人間と言うのはとっさのときに本性が現れる、と言いますから。でわ。 ところでこのコーナー、魔人ファンの方もボチボチ読んでくださっているようですが、最近SDの流×彩方面でこちらに来られる方も多いみたいです。メールで感想いただきましたし・・・またそっちの続きも書かないと。でも、もうしばらくお待ちくださいね、ichanさんv ***************** 「あなた・・・涼浬、と言う名でしたね、どうしてここにいるんですか!」 一瞬の茫然自失状態から無理やり抜け出して、あたしは何とかそう尋ねていた。 確かこの女・涼浬が、骨董屋を営んでいるのは王子のはずだ。ついでに言えば、涼浬が属してる《龍閃組》の本拠地は、内藤新宿。 そしてここは神田。どう考えても、たまたま見かけたから挨拶でもしようと思って着いて来た、なんてことはありえないのだけれど。 「日本橋辺りで、馬で爆走なさるお二方をお見かけいたしました。ただならぬ様子でしたので、後を追って参ったまでです」 「日本橋って・・・」 さては、おろくの火事について調べてたのね。 口では何だかんだ誤魔化してたけどこの女、やっぱり笹屋の奥方とあたしの話を盗み聞きしてたってことか、天井裏で。でないと、おろくの火事と笹屋をつなげて考えようなんて、思わないはずだもの。 が、色々と思案をめぐらせてるあたしをよそに、涼浬はこの場に居合わせるはずのない連中の存在に気づき、いきなり敵意をむき出しにしてたりする。 「なっ!? 貴様たちは《鬼道衆》!? 何故榊様たちと一緒にここにいるのだ!?」 「・・・多分お前たちと同じ理由だと思うがな・・・」 苦笑いして答えるのは九桐。 ・・・お前『たち』? 彼の言葉の真意を測りかねていると、その答えは外から騒々しく突入して来たのだった。 「御厨ーー! 榊ーーー! 無事かーーーー!?」 げげっ・・・☆ あの声は紛れもなく、蓬莱寺京梧じゃないの!? 御厨さんじゃああるまいに、何で黙って入って来られないワケ? 涼浬を見習いなさいって! てぐすね引いてお待ちかねの鬼火にとっては、絶好の標的になっちゃうじゃないのさ! が。鬼火の方は人間の混乱した事情など、わざわざ把握してくれるはずもない。蓬莱寺の叫び声に呼応するがごとく、戸口めがけていっせいに襲い掛かったのだ。 あたしが思わず、想像したくもない「黒焦げの半死体」を頭に想像したその時、凛とした声が聞こえ・・・。 『剣掌・・・発勁ッ!!』 ジャッ! 続いて、焼けた石に水をかけたような音が響いたかと思うと、戸口に迫っていた鬼火はすべて、その一刀のうちに切り伏せられてしまっていた。 「ったく・・・少しは相手をちゃんとみて襲い掛かって来やがれ。俺は『てめえら』の言わば、天敵なんだよ。涼浬同様な。・・・おっ、2人とも何とか息災ってか?」 不敵な笑みと共に、怪我ひとつない体で戸口をくぐって現れるは、蓬莱寺京梧。 「な、何であんたまでここにいるのよ!? 蓬莱寺!?」 つい毒ついたのは彼の<力>を信じていなかった自分を取り繕うためと、あからさまに彼を案じてしまっていた気恥ずかしさからだったんだけど・・・肝心の蓬莱寺の返答と来たらからかいも、理不尽さに対する文句も飛んで来やしない、いつもと違い極めてまっとうなものだった。・・・怒鳴りつけたことをこっちが後悔するくらいに、ね。 「別に俺だけじゃねえぜ。雄慶や藍も来てる。もっとも雄慶は『火』とはあんまり相性良くねえから、入れねえでいるけどよ。藍たちは長屋の連中を宥めてる最中だ。何も知らされねえで待機だけさせられる、なんて、結構神経的に堪えるらしいからな」 「・・・悪かったわね、徒に住人を不安に陥れちゃって【怒】」 「へ? イヤ、別にお前らのやり口を責めてるつもりはねえんだが・・・」 どこか呑気にも思える会話は、だけどさっきまでは決して起こりえなかったことではある。 それが許されるのも、鬼火たちが蓬莱寺を遠巻きにして牽制しているからだ。彼の言葉「天敵」を、まさに裏付けるかのように。 その隙に涼浬は、どこから取り出したのか、あたしの目の前の床にトスッ、と、1本の刀を突き刺した。そして鞘を両手で掲げてみせる。 「榊様・・・どうかこれをお使いくださいませ。どれだけか戦いを有利に運べると存じます」 「これは?」 「銘は『村雨丸』。かの、里見八犬伝にてその名を知らしめた、常に刃に水を湛える刀にございます。この場においては、最良の武器かと」 「むっ、『村雨丸』ですってえ!?」 里見八犬伝を読む限りじゃ、滴り落ちる水のおかげで切れ味が落ちないって話だけど・・・確かに鬼火たち相手にはもってこいの刀では、あるわよね。 しかし、てっきり伝説か、作り話の世界の物体だとばかり思っていたけど、実在するものだったとは・・・骨董品店って言うのも、案外侮れないわ。もちろんこの刀がホンモノの『村雨丸』だったとして、の話だけど。 ゴウッ・・・! と、そのうち。 蓬莱寺とまともに戦っても埒が明かないと見たか、早速1匹の鬼火がおあつらえ向きにあたしめがけて襲い掛かって来た! 「うわわわわわわっ!?」 情けない悲鳴を上げて攻撃をよけると、あたしは思わず『村雨丸』を引っこ抜いていた。そしてそのままの勢いでほとんどヤケクソになって、鬼火に切りかかる。 ジャッ! ───一刀両断、とはよく言ったもの。今まで苦戦していたのが嘘と言わんばかりにあっさりと、鬼火はその場で切り捨てられた。 「こ・・・怖い刀だわ、これ・・・☆」 改めて刀を見やりつつ、あたしはゾッとせずにはいられない。 『村雨丸』が聞きしに勝る、涼やかな冷気を持った刀だからってこともある。でもこれはどちらかと言えば、切れ味が良すぎてかえって寒気が来る、ってヤツね。 正直これは、使いすぎると危険な刀だわ。このまま下手に、たくさんの鬼火を「気持ちよく」斬り続けて御覧なさいな。きっと勘違いして、自分が天下無敵に思えて来るに違いないわ。 そうしてそのうち、切れ味の良さが忘れられずに夜な夜な獲物を求めて、辻斬り三昧・・・。 ブルルルッ☆ しゃ、しゃれにならないわよ、火附盗賊改が辻斬りなんてっ。 「・・・役目が終わったら、とっととつき返しましょ(汗)」 硬く硬く心に戒めて、あたしはとりあえず当面の敵を切り伏せることに専念するのだった。 ******************* 戦況が逆転したのは、それからまもなくのこと。 この手の相手とは場数を踏んでいるらしい、《鬼道衆》の3人。 「火」の天敵らしい、蓬莱寺と涼浬の乱入。 そして、「火」に対しては絶大な切れ味を生む『村雨丸』が冴え渡ったおかげで、この室内を覆い尽くさんばかりにいた鬼火たちは、見る見るうちにその数を減らしていった。 おかげで、今まで把握できずにいた室内の様子が、一目で分かるようになる。 とりあえず壁も天井も床も、まだ焦げないままで済んでいるようだ。そして、この部屋に唯一ある襖は押入れのものらしく、わずかに開いた隙間から布団が入っているのが伺える。そしてその布団が、少しだけ震えているのも。 どうやらこの部屋の住人・油売りの彦一は、鬼火に襲撃された際、とっさに押入れに逃げ込んで難を逃れていたみたいだ。 「・・・榊さん」 「ええ」 御厨さんも、そのことに気づいたみたい。鬼火たちに察知されないよう目配せで、あたしに知らせてくる。 やれやれ。何とか無事で良かったわよ。これだけ大騒ぎしておきながら、結局焼死体が1体見つかった、なんてことになったらやりきれないもの。 そうして・・・。 ドコッ!! 風祭の拳が、最後の1つの鬼火を打ち砕いた。 後に残されたのは───明らかにかつては「人」だったもの。惨たらしい火傷の跡を隠そうともせずあたしたちを睨みつけて来る、小さな子供の幽霊だけだった。 おそらくソレは、姉・おろくの起こした火事で焼け死んだ、勇之介の成れの果て。 ───オノレ・・・オノレぇっ・・・! ドウシテオ前タチハ、邪魔ヲスルンダぁ・・・! 聞いてるだけで気がどうかなってしまいそうな怨嗟の声に、それでもあたしは踏ん張っている。 理由の1つは、運良く今あたしは1人じゃなかったから。「味方」がいる心強さとか、変な見栄っ張りとか言った感情が、かろうじてあたしに冷静さを失わせないで済んでいるのだろう。 そして、もう1つの理由は・・・きっと皆の胸を去来する感情と同じものがあたしの心にもよぎっていたから、に違いない。 「勇之介・・・」 だけど。 幽霊に対してそう、呼びかける桔梗の表情と来たら、あたしたちのような「悲しさ」を既に通り越して、むしろ「悲痛」と呼べる代物だ。 「ねえ勇之介、もうやめとくれよ、ねえ? これ以上恨みをあちこちに振りまいても、あんたが苦しいだけじゃないさ? 姉さんをハメた挙句にあんたを見殺しにした2人は他ならないあんたの手で、もう十二分に報いを受けてるんだから・・・」 ───ウルサイ! 勇之介が吐き出す言葉の1つ1つが、未だ毒と、紅蓮の炎を帯びているように聞こえる。 ───誰モ助ケテクレナカッタ。ダカラ姉サンハ、サンザン苦シンデ死ンダンダ。 ソノ苦シサヲ、コノ江戸中の人間ニ思イ知ラセテヤルンダ! オ前ガ言ッタヨウニ!! 「・・・・・っ!?」 桔梗の顔が、目に見えて歪む。 きっと彼女は、勇之介に<力>を与える時に言ったのだろう。自分と姉のおろくを救ってくれなかった連中に、今こそ思い知らせてやれ、とでも。 それは《鬼道衆》の野望のためになるというよりは、無念のうちに非業の死を遂げた姉弟に同情したから、だったのかも知れない。 ───でも結局、過ぎた復讐は憎しみを倍増させただけ。勇之介の気は、これっぽっちも晴れちゃあいなかったみたいだ。 何とか説得して凶行をやめさせようと思っていたのだろうけど、自らの『好意』が裏目に出てしまった今。桔梗は項垂れて顔色も悪い。 そして彼女とは裏腹に、冷静な表情と確固たる決意を胸に前へ進み出たのは、九桐だった。 「・・・もうやめておけ桔梗、こうなることは半ば、分かっていたことだろう」 「く、九桐・・・」 「下がっていろ。一気に済ませる」 そうとだけ言い、九桐は槍を構えたかと思うと勇之介に切りかかる体勢に入る。仮にも子供の「なり」をした幽霊を手にかけようというのに、その顔つきからはまるで罪悪感などは感じられない。少なくとも、表からは。 あえて下世話な言い方をすれば、自分たち《鬼道衆》にとって不都合を招くから勇之介を始末する、格好になるのだ。・・・だがそれについて何も言い訳を口にしない辺り、潔いというかなんと言うか。 おそらくは蓬莱寺の方は、そのことを察してるんでしょうね。「自分たちがそそのかしておきながら」云々、と噛み付こうとする涼浬を、やんわりと押しとどめているのが見えた。 後になって思い返せば───その時のあたしたちは、勇之介の幽霊に対してのみ完全に、意識を集中させてしまっていた。 室内にいた鬼火を全部切り捨てた後、って安心感や、戦闘後の疲労感も作用していたのだと思う。そして、あとはこの勇之介さえ何とかすれば騒動は解決するんだ、って油断も。 だからよもやこの場面に、予期せぬ第3者が表戸を開けて乱入してくるなんて、全くの想定外だったのだ!! 「おっ父(とう)!!」 「・・・・・・・・・!?」 おそらくは裏道を駆け抜けて、外で待機していたはずの《龍閃組》の目に止まることもなしに、この家へたどり着いたんだろう。油売りの父親、恋しさに。 だけどこの場合、それは最悪のたいみんぐに他ならなかった。 ───死ネ!! 憎しみと殺意に支配されている勇之介の呪詛の声を聞くや否や、あたしは弾かれたように飛び出していたらしい。 それはほとんど無意識の行動。後先なんて何も考えていない、全くあたしらしからぬ無謀な動作。 それが正解だった、と実感したのは、小娘を懐に抱きかかえたまま前のめりに倒れこんだ直後。こともあろうに勇之介は、父親思いのこの娘を(お夏とか言った名前だったかしら?)焼き殺そうとしていたのだから───父親の目の前で!! 幸いなことに油売りは、子を殺される親の悲惨な悲鳴を上げずに済んだけど。 グォオオオオッ・・・・・! 熱く、赤く炎が立ち上り。 「あ・・・・・・あああああああっ!?」 代わりに室内に響き渡ったのは・・・・・背中から全身を炎に包まれたあたしの大絶叫だった・・・。 《続》 *************************** ※今回、ちゃんちゃん☆ は、今シリーズを書く際に取り決めていたモットーを、自ら破ってしまいました。 それは、「外来語を使わず、日本語だけで文章書くぞ!」ってこと。まあ漢字と平仮名だけだと読みにくいことはなはだしいので、適当にカタカナを混ぜてはいたんですが、日本語以外は使いたくなかったんですよ。だって榊さんはれっきとした純日本製の侍ですし、勝麟太郎のように国外のことに詳しいわけでもないですから。 でも・・・でもねえ・・・「タイミング」に該当する日本語がどーしても思いつかなかったんですよお!! 苦し紛れに「たいみんぐ」と平仮名で表記してますけどね。うう、日本語ってホントウに難しいよお・・・。 そーいえば今度「外法帖」をリメイクしたゲームが作られるそうですねえ。これ書いてる途中でのっぺりに知らされ、おいおい・・・と思いましたわ。 よーするに「剣風帖」においての「朧綺譚」みたいなものだったりするんでしょうか? だったらちゃんちゃん☆ が望むのはたった1つ。 「今度こそ榊さんED作ってくれ〜!!!」(笑) ちなみに今回執筆中、聞いていたBGMはアニメの「はじめの○歩」だったりするんだな。いつもこのシリーズ書く時は、絶対「魔人學園」のBGMだと決めていたのに・・・意志が弱い筆者を許してくれ・・・☆
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