ちゃんちゃん☆のショート創作

ちゃんちゃん☆ HOME

My追加

Darling(6)SD・流×彩?
2003年04月21日(月)

 えーーー。「茂保衛門様」書かずに、いきなりこちらの更新です。最後に書いたのが2001年11月02日だったから、実に1年5ヶ月ぶりの新作と言うことになるんだなあ・・・(滝汗)。
 何で久しぶりにこのシリーズを? とお思いでしょうが、色々なワケがございまして。
 1つ目は、せめてこのレンタル日記を1ヶ月更新状態にしておきたいと言う事。でも「茂保衛門様」は、書くのにそれなりの労力が必要になるので、そっちを1ヶ月更新というのは、さすがに無理。それで、一応まだネタが残ってるし、そんなに長丁場でもないこのシリーズを、久しぶりに書いてみようかということであります。
 そして、もう1つの理由。・・・実はこのシリーズに、初のメールでの感想が送られてきたんだったりして(感涙)。VETTYさん、ありがとうございます。都合で返事書けませんが、とりあえず新作復活!ということで、良かったらお許し下さいませ。

**************

Darling(6)

 睡眠不足の体を抱え、流川は富ヶ岡中学の廊下を不機嫌な顔で歩いていた。

「・・・見つかんねえ・・・」

 断わっておくが、家ではきちんと睡眠をとっている。ただ困ったことに、学校の授業中眠ろうとしたところ、全然眠くならなかったのだ。

 そもそも授業中に眠るとはどういうことだ、と教師から反論が来そうではあるが
、そこは流川の日頃の行ないがモノを言った。いつもぐーだらと眠りこけている問題児が、目の座った顔で親の敵を見るような目つきでこちらを睨み付けてくるのである(本人は単に、不機嫌だっただけだが)。その間、教師とクラスメートたちは(一部女子生徒を除き)生きた心地がしなかった。
 教室の平和と、教師の心の平安のためには、やはり流川にはいつもの通り眠っていてもらった方が良い、と、半ば野放し状態に決定されてしまったのであった。むろん、本人は知らぬことではあるが。

 とにかく今の流川は、安眠できる環境を手に入れようと、校内を徘徊している状態なのであった。
 2年の教室棟まで来た時である。何やら廊下のつきあたりで人だかりを見つけた。
 見れば掲示板に、テストの成績が張り出してあるらしい。皆が悲喜こもごもの声を上げるのを、単なる傍観者の流川はさめた目で見ていたのだが。

「げーーーっ、彩子ってば、また順位上げたわよ」
「バスケのマネージャーしてて毎日クタクタのくせに、バケモノよバケモノ」
「天はニ物を与えるって、やっぱアリなのかねえ」

 ・・・少々のやっかみと、好意を感じる声に、ふと成績表を見やる。
 確かにそこには彩子の名前が、何と10位以内に書かれていたのだった。

<ま、俺にはカンケーねーけど>

「あれ、どうしたの流川」
 声をかけられ、振り返る。
 そこには、流川がずっと探していた彩子。
「あんたが2年の教室棟まで足を運ぶなんて、一体どう言う風の吹きまわし? 困るわよー、今日は傘持ってきてないんだからさ」
「雨なんて降らねえっス」
 笑いながらのからかい言葉に、さすがの流川も即座に反論を返していた。
「あはは、ゴメンゴメン。だけど、本当にどうしたのよ? いつもなら休み時間なんて、あんたの絶好のお昼寝タイムじゃない」
 何で知ってるのか、とか、あんたは俺が昼寝してるところを見たのか、とか、色んな言葉が頭の中を交錯したが、あえて流川が口にしたのは1つだけ。
「イエ・・・眠れなくて」

 ───流川のその言葉を聞いた時の彩子の表情と来たら。
 こういう表情こそ、「鳩が豆鉄砲を食らったような」と言うにふさわしいものだろう。

「眠れないって・・・あんたが?」
「そう」
「一体何があったのよ? 何か拾い食いでもして、お腹こわしたとか?」
「俺は犬じゃねえ☆」
「だ、だけどさあ・・・」

 彩子の心配そうな声が、耳に心地よく響く。
 女の声は高いから苦手だし、おまけに結構大きな声だと言うのに、どうしてだ? と流川が訝しがった時。

 ぺとっ。

 彩子の、柔らかくてすべすべした掌が、流川のおでこに押し付けられた。

「・・・・・っ!?」

 流川はあろうことか、ひどく動揺した。そして思わず後ずさってしまう。
 当然、彩子の掌はおでこから外れたわけなのだが・・・。

「あ、ゴメン、イヤだった? でも熱はなかったみたいで、安心したわ」

 流川の今の態度を、女性への嫌悪と受け取ったのだろう。苦笑まじりに彩子は、手を元の場所に下ろす。
 そのやわらかな手を、流川は半ばボーゼンとして見送っていた。

 ───あの手の感触がなくなったおでこが、こんなにもスースーするものだとは、思いもよらなくて。

「でも気分が悪くなったら、ちゃんと保健室に行くのよ? 我慢しちゃダメよ流川」

 彩子の忠告にも、ただ馬鹿みたいにブンブンと首を振るしか出来なくて。

 ───この時。
 さしもの流川も、自分がどうやら彩子に対して特別の感情を抱いていると言う事実を、自覚せざるを得なくなったのだった。


 実のところ、流川が休み時間を利用して2年の教室棟まで来たのは、彩子に会うためだったのである。
 昨日、試合帰りのバスの中、流川はいつの間にか彩子の膝枕で寝てしまう、という失態を起こしてしまった。目が覚めた後でチームメートから、完全にやっかみの声を浴びせられたわけだが、別にそんなことで堪える流川ではない。

 ただ・・・彩子の膝枕の使い心地はと言えば、家の自分のベッドでの寝心地に勝るとも劣らないものだった。ふんわりとして、あたたかくて、時々いい匂いがして・・・。それを思い出すと、教室の固い机の上などではどうにも眠ることが出来ず、結果寝不足になってしまった。
 それで、出来たら膝など貸してもらえないだろうか、と、後先まるで考えずにここまで足を運んでいたのだけれど。

<出来るかああっ! 掌だけでこんなにドキドキすンのに、膝枕してくれなんて、言えるわけねえええっ!>

 外見こそいつもの無表情な流川であったが、その中身は相当焦りまくっている。
「? どうしたの、何か顔赤くない?」
 おまけに、心配そうに彩子が顔を覗きこんで来ては、表面上はただただ沈黙を守るしかなくて。
 そんな流川の葛藤にケリをつけたのは、だが、新たなる葛藤の始まりを告げるものでもあったのだが・・・。

「彩子くん、テストの結果見たよ。すごいじゃないか」
 いきなり彩子にかけられた声に、我に返る流川。見れば声の主は流川も知っている、バスケ部の顧問教師だ。
「ええ、まあ、今回は頑張りましたから」
「しかし、バスケ部のマネージャーは休んでなかったじゃないか。私も鼻が高いよ。『バスケばっかりやって、勉強がおざなりになる』なんて言葉、平気で使ってくる先生もいるからねえ。彩子くんを見たまえ、と言ってやりたいよ」

 完全に流川の存在は無視されている。イヤ、気付いていないのかもしれない。
<そろそろ教室に戻るか・・・>
 一抹の寂しさと、どこかしらの安堵感を覚えつつも、流川はこの場を立ち去ろうとしたのだが。
「どうだね? 神奈川でも1、2を争う進学校を志望校にしたら?」
 教師の口から飛び出した言葉に、思わず足を止めていたのである。


 ・・・突然だが、流川の学校での成績はというと、さんさんたるものだ。いつも授業中居眠りしているのだから、当たり前ではあるが。
 だから、進路希望相談係の教師からは、「バスケで行ける高校を目指したら?」とまで言われるくらいで、本人もそのつもりでいた。
 バスケ顧問の教師から、爆弾発言が飛び出すまでは!

「そこって、バスケ部あるんスか?」
 流川は感情の赴くまま、彩子と教師の話に首を突っ込んでいた。
「る、流川?」
「は? バスケ部? い、いや、確かなかったと思うよ。進学校だからね、どちらかと言えば文科系の部が多いところだし」
 教師はとりあえず、そう答えたが。
「・・・・・・・」
 目の据わった流川ににらみ付けるようにされては、それ以上の言葉を口に出せずにいる。
 そのうち。

 キーンコーンカーンコーン・・・。

 休み時間終了を告げるチャイムが鳴り響き、とりあえず教師に安堵の息をつかせたのだった。

「早く教室に戻んなさい」と彩子に促され、教室への階段を降りる流川。だがその内面はと言えば、平穏なものとは程遠かった。
 目はすっかり覚めている。と言うより、睡眠不足を忘れてしまうほど、彩子の進路方向は彼にとって、青天の霹靂だったのだ。

 下手をすれば、自分が彩子と一緒にいられる時間は、あと2年しかないと言うことになるじゃないか!

 恋心を自覚した直後の衝撃の事実に、流川は足元がおぼつかない自分を感じるのであった。

<続>

***************

※良いのか? 流川。あんな言い方じゃ、聡い先生なら流川→彩子に気付いてると思うんだけど(汗)。
 ところで今回出てきた、バスケ部の顧問教師ですが、実は登場は初めてじゃないんですよねえ。以前、塚本と彩子の問題で、キャプテンの二階堂と一緒に、流川に話を聞いていた教師と同一人物だったりします。新しいキャラ持ってきても、ややこしいだけだからなあ・・・。


 
 




BACK   NEXT
目次ページ