つたないことば
pastwill


2002年01月27日(日)  大丈夫。

悲鳴、
轟音、
大気の振動。


それは幽かな記憶。


聞いたわけでも、
感じていたわけでもなく、

身体に刻み込まれたもの。


それは時々からだの中で叫んだり、
暴れたりしてる。


「その晩」見えたという紅い月の日は
よけいそれは起きた。


きっといつかそれに負けてしまうのかもしれない。

背負うには大きすぎるのかもしれない。

もしその時がきたら、

オレがオレでいるうちに、

殺して。

だって大切な人を傷つけるのは死ぬほどつらいから。

だから、



大丈夫。

オレは大丈夫。

まだ笑ってられるから。

いつの日かその時がきても、

きっと笑っていけるから。

だから、



大丈夫。



2002年01月16日(水)  アメとムチ

ある日きみとケンカをした
原因はささいなことだったのに
ぼくもきみも意地張って言い合って謝りもしないで
お互いそっぽ向いて家路についた
ぼくは家に帰ってもなんであんなに怒ったんだろって
そんなことばっかり考えててきみに謝ることなんて
ちっとも考えてなくてちょっとイライラした
きみは今どんな気持ちで家にいるのかな
やっぱりイライラしてるのかな
ぼくは怒りにまかせてひどいことをきみに言ったような気がして
今はどうしても顔を合わせたくなかった
だから謝りに行こうとか思わないんだ
まだ怒ってるかな
サスケまだ怒ってるかな
明日になったら謝ろう
ちゃんとごめんねって言おう
そしたらきみは許してくれるのかな
そう考えてぼくはきみに無性に会いたくなったんだ


2002年01月11日(金)  逢魔刻

夕闇は魔を引き寄せる。

夕陽に照らされてオレンジ色に染まっていても
狭い路地に一歩踏み込めばそこは闇。

魔はそんなところに潜み、人に囁きかけ、たぶらかすという。

逢う魔が時―とはよく言ったものである。



(じゃあ今俺の目の前にいるあれもそうだな)



サスケはぼんやりとその光景を見ていた。

向かい側から黒髪の兄弟が手をつないで歩いてくる。

背の高い兄と小さな弟。

弟のほうが兄に一生懸命話しかける。

兄はそれに応え、微笑みかける。

そのなんともほのぼのとした光景は、サスケにとって嫌悪を
抱くもの以外の何物でもなかった。


(だいたい俺の中にあいつとのそういう記憶はない)


今思えばあいつの背中ばかり見ていた。

それに向けて差し伸べた手はいつも空を切った。

あいつは俺のことなんか見ちゃいなかった。

俺だけが、

いつもあいつを、


オイカケテ







兄弟はサスケのすぐ傍まで近づいていた。

弟を伏し目がちに見ていた兄が不意に顔を上げた。

そして、


にこりと微笑んだ。



(なんなんだよ)


今更そんな風に笑ったって無駄だ。

それくらいじゃ俺の決意は曲がらないからな。

今は駄目でもいつか必ず、

必ず、

あんたを、


――――――――。






笑いかけるくらいなら、殺してくれればよかったのに。



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