つたないことば
pastwill


2001年11月27日(火)  オレンジシンドローム

君は夕方になると必ずそこに居た。

誰かを待っているのだろう。
夕暮れ独自のオレンジの閃光を浴びながら君の眼は遼か遠くを見据え、
ほんの数メートルしか離れてない通行人さえ見えないみたいだった。

陽が落ちる。
影が次第に長くなってゆく。
しかし君の影は塀になじんだまま動こうしない。

君の目の前を黒髮の若い青年が通った。
君は目覚めたかのようにはっとして、とっさにその背を目で追う。
そして何かに気付き、がっくりとうなだれた。

そうか、君が。
君が待っているのは。
君に依存しているのは。

僕は君に声を掛ける事も手を差しのべる事も出来ず、ただ遠くから
見ているだけだ。
君の距離まで10メートル。
それでも永遠に辿り着けない気がした。

陽が落ちた。
長い影は地に溶けた。
オレンジ色だった君は深い藍色になった。

僕は涙をこぼした。


2001年11月05日(月)  空を掴め

例えば、あの汚いアパートに独りぼっちで往んでる金色の髮の少年とか。
例えば、そこの木のそばで泥だらけになって修行してる黒髪の少年とか。
例えば、あたたかい家族に囲まれて一見幸せそうな桜色の髪の少女とか。
君達は今、夢だの野望だの恋だのと一生懸命地面を這い擦り回ってる。
でもそんなのは頭上で僕らを見下してる奴からすればとってもちっぽけな
ものでしかない。あいつには僕らのすべてが見えてるけど僕らはあいつの
表面しか見えない。
あいつを掴め。
あいつが見せるあたたかな笑顔にだまされるな。
あいつが与える底知れない闇を恐れるな。
掴んで正体を暴いて超えて行け。


君達を見下す無限の魔物を掴め。



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