帰宅した主人が、なんだか元気が無かったので、どうしたのかと訊いてみた。 「一寸嫌な事があった」 という返事で、はっきりとした返事が返って来なかったので、妻として心配してこう言った。 「職場で誰かに苛められたの? そいつの名前教えて。そしたら私が始末」 「駄目〜始末しちゃ駄目」 じゃあはっきり言えと詰問したら、ごにょごにょと語り出した。 「歩いて帰って来る途中でね、そこの曲がり角の家と、近くの二世帯住宅の屋根の上でね、誰かがお話してたの」 お日様はとっくに沈んで、外は暗くて寒いというのに、誰かが屋根の修理でもしていたのかと思ったら、そうではないらしい。 じゃあなんなのさ、と尚も訊くと、 「わかんないけれど、誰かがいたの! んで、ごにょごにょとお話してたのが聞こえたの。話の内容はわかんない」 姿は見えねど、声だけは聞こえる。 今日は偶々、疲れていて体調が悪かった事もあり、何かと波長が合ってしまったのだろうか。 余り話したがらないが、主人には時々、こういう事があるらしい。 そりゃそうだよね、他人に知れたら、気狂い扱いされるだろう。 私は目に見えるものだけが全てじゃないと思っているし、この世のものではないものの話の存在も否定しないから、主人の話も信じるけれど。 屋根の上には何がいたのだろう。 「死人が出なきゃいいけれど」 という主人の言葉に怖くなった。 しかし別の可能性と共に、別の怖さも。 彼の言動を見る限り、ドーパミンが出過ぎとも思えないけれど。 ええと、病院でリスパダールとか処方して貰った方が良くない?
土曜プレミアムで、映画「デトロイト・メタル・シティ」を観た。 原作は読んでいないし、映画が公開された時にも興味は無かったが、昨年わうわうで一挙放映されていたアニメ版が面白かったので、主人と楽しみにしていたのだ。 音楽はアニメのオープニングとエンディングで知っていたので、一緒に楽しく歌えた。先にアニメを観といて良かったと思った。 「この曲、デスメタとして案外ちゃんと出来てるなあ……。誰が作ったんだろ」 と主人が呟いたので、その場でネット検索してみた。 「あった。『映画“デトロイト・メタル・シティ”……音楽:服部隆之』」 「え?」 「え?」 よくよく見てみると、服部さんはサントラ担当と思われ、主題歌は違う人が作ったようである……ああ吃驚した。
こういうのは大抵刷り込みが働いて、先に観た或いは読んだ物の方が良いと思うものだが、アニメも映画もそれぞれどちらも良いと思った。 映画は上手にストーリーを組み立ててあったし、アニメのイメージを損なわない配役が良かった。 松山ケンイチの顔は好きではないが、二重人格振りは非常に上手かったし、加藤ローサも以前の大根っぷりが抜けて、大分演技が上手になったような。 アニメよりは大分若かったけれど、社長役の松雪泰子は突き抜けていて、やはり女優は凄いと思った。 いやあ、最後の最後まで楽しかった! しかし流石に、映画だと、資本主義の豚と悪魔玉の出番は無かったか……。
そう言えばKISSのジーン・シモンズは、この映画の撮影のために来日していたから、アプレンティスの最終回の出演が日本からの中継だったのよね。 こんなギャグ映画のために……とトランプおじさんが知ったら、どう思うかしら。
夜の昼ドラ「宿命」を、第1回目から観ている。 結構面白い。 お見合い相手が実は異母兄妹なのでは……という流れになりそうだが、普通、両家の顔合わせの時点で気付かないか? あの有川母が、名前にだけ飛び付くとは思えないんだけれどなあ。 それほどの大物政治家なら、せめてウィキペディアで事前に調べておこうよ。そうすれば、出身地とか出身大学とか在学期間とかで気が付くと思うのだけれど、欲に目が眩んで見えなくなっていたのか? お習字で初めて気付くって、どんだけー。
親近相姦なんて、昼ドラで出尽くしたようなネタだが、こういう悲劇を防ぐにはどうしたらいいのか。 中国みたいに、結婚していない男女は同衾するべからずという法律でも作ったらいいのに。 そうしたら中絶問題も、300日問題(民法第772条の嫡出推定。そんなの常識なのに、再婚前に拵えた子供に戸籍を!とか言っている困った人達)も、一気に片が付いていい事尽くめではないか。 という訳で、外国人参政権や子供手当てより、こっちを優先して法律作っちゃえよ民主党。
それにしても、白井父も有川母も、大学時代からどんだけ顔が変わってるんだよ。 普通は、どちらかが気付くだろうが。 行きずりの相手なら兎も角、暫く懇ろにしていた間柄なのだから、幾ら40年も前とはいえ、普通は顔ぐらい覚えているよね? ああでも40年も経つとどうなのだろう。私まだ40年も生きていないから、わからないや(←嘘じゃないよ!) そこで一応40年以上生きている主人に訊いてみた。 「ねえ、40年も昔の恋人の顔って、忘れちゃうもの?」 「40年前は子供だったからわかんない」 そうか、そうだよね……。 「でもさ、人間って二十歳も過ぎれば、顔はそんなに変わらないよね? 真野さんに至っては年齢不詳なぐらいに見た目を保っているし。激太りしたんなら兎も角。学生時代の胡瓜体型からビヤ樽に変貌した貴方ですら、昔の友達にもちゃんと見分けて貰えるぐらいなんだし」 「ビヤ樽とは失礼な。俺は麦酒なんて飲まんぞ!(←寧ろ飲めない) シオン、それは喧嘩売ってるのか?」 えっ。 いや、そういう訳では……。
待てど暮らせど、うちに来ないんですけれど。
TVで裁判員裁判のニュースを見る度に、 「いいな〜、私にも通知来ないかなあ」 と言っているのだが、こういうのって、やりたい人の所には届かない物なのね。 絶対やりたくない!と言っている主人には、いずれ届くかも。 「その時は、私が代わりに行ってあげるよ♪」 と私がわくわくしながら申し出ると、 「じゃあその時は、シオンに髭描いてやるよ。油性ペンでな」 えー? それは嫌だなあ……。
死に掛けた。
買い物に行く途中、車で信号待ちをしていたら、突然心臓がどくんとなった。 不整脈である。 人間は1日のうちに1回は不整脈を起こすらしいので、それ自体は別に珍しくないのだが、今日のはいつもの不整脈とは違う。 次のトクトクが聞こえない。 あれ、もしかして、心臓が動いていない? 今しがた青に変わったばかりの信号が真ん中にあって、昼間なのに周囲は暗くなっている。 視界がどんどん狭まっているのだ。 これがブラック・アウトってやつかー! 運転中にこれはまずい。 幾ら田舎でも、道の真ん中での停車は迷惑だが、下手に動いて事故ったらもっと迷惑だ。 ここは、ハザードランプをつけてPに入れてサイドブレーキかけた方がいいのか。 前の車が発進する前に何とかしなければ。 動いてくれ心臓、頑張れ心臓! とハザードボタンに手を伸ばしながら心臓にエールを送っていたら、やっと心臓が動いた。 そうしたらぱっと視界が開けたので、そのまま左折して、コンビニの駐車場に入って車を停めた。 暫く休んでみたが、再び不整脈は起こらなかったので、買い物に行ってから帰宅した。
しかし危なかった。 主人の父は、1度心の臓の病で倒れている。 心臓が止まったのが自分でもわかって、血が流れずに寒くなって来るのだといっていた。 私は焦りの方が大きくて寒さは感じなかったが、あんな感じなのだろうか。 不整脈はこれまでにも時々あったが、今日ほど酷いのは初めてだ。 1度病院に行った方がいいのかな。 でもホルター心電図つけるなら、春か秋がいいな……夏は暑くて鬱陶しいし、冬は機械が冷たいんだもん。
大学入試センター試験の1日目。 私が受けたのもセンター試験だった。 日頃の成績は悪かったが、本番に強かったので、結構いい点は取れた。 一方、共通一次世代の主人は、大雪を警戒して知り合いの所に止めて貰ったら、周囲の音が気になってよく眠れず、一次の結果は散々だったらしい。 というような話を、寝る前に2人でしていた。 主人は前期日程の受験のために、親が用意してくれたホテルに泊まったが、宿と一緒に手配してくれていたディナーが、何故かフランス料理のフルコース。。 それが人生初の本格ディナー体験だったらしい。 「たかが受験だよ? 一体うちの親父は何を考えていたんだ」 いやあ、いいお父さんでないの。 私は親からお金だけ貰って、宿も電車の手配も、自分で旅行会社に行ってやってたなあ。 「ディナーと言えば私、後期で泊まったホテルで晩御飯食べた時、デザートにグラスに入ったアイスクリームが出たのね。で、それを食べ終わった後に、家の中でやるようにグラスを舐めていたのよ、無意識のうちに。ハッとして周りを見回したら、隅っこだったから幸い誰にも見られていなかったようなんだけれど、あの時思ったね。『普段の行いが出る』ってこういう事か!と。だから日頃から心がけなければと決心したの」 と私が話すと、主人が言った。 「そうか。でも残念ながら、その経験は余り生きていないようだね……」 えっ、そうなの!?
昨年末に、youtubeでラフマニノフの前奏曲を聴き比べていたら、主人が、 「キーシンもアシュケナージも、ピアノの音しかしないけれど、プロコフィエフのピアノには、色彩感がある。」 と評していた。 一方私は、テンポや強弱のつけ方の違いぐらいしか判らず、どれもピアノの演奏なのだから、ピアノの音しかしないのは当たり前なのでは?と不思議に思った。 しかしその後、アニメ版のだめカンタービレを見ていたら、 「なんて色彩感豊かなピアノ!」 という台詞があり、そうそうそれなんだよねー弾く人によって違うんだよ、と得心する主人に対し、やはりわからない私なのであった。 そんな私の弾くピアノは、やはり白黒なんだろうな。
今日は偶々予告で、「スーパーピアノレッスン」で展覧会の絵をやると知ったので、録画して主人と一緒に見た。 先生は、フセイン・セルメットというピアニスト。ど素人の私は、初めて聞いた名前だ。 生徒は金髪で顎の無い若者。名前は忘れた。 なんかのコンクールで優勝したほどの腕前だそうだが、ミスタッチが多くてとても雑に聞こえる。 えっ何故そこでテンポを崩す?と思ったら、やはり先生にも指摘されているし。 それなりに上手いんだろうけれど、先生のピアノを聴いてしまうと、まだまだ若造である。 そして主人が言うには、 「この先生、凄い。これだよ、色彩感のあるピアノ!」 との事。彼にしては珍しく絶賛だ。 番組の中で、先生が、 「この音はこう。猫のように」 と言って、猫が引っかくように素早いタッチで弾いていた。 若造の音と、全然違う。 「打楽器と同じで、マレットを打つ強さだけじゃなくて、速さで音が変わるんだよ」 と主人が解説を入れてくれた。 あ そういう事か! 記憶が甦った。 部活で先輩が叩いていたティンパニ、何であんなにぼよ〜んとした音しか出せないんだろう、そこはもっと硬くて鋭い音が欲しいのに。 猫。 猫のように。 昔ピアノを習っていた時に、言葉は違うが同じ弾き方で見本を見せられた。 そういう事だったのか、と今やっと理解出来た。 先生はそういう事を私に教えたかったのねー! 気付くの遅いよ私。 ヘレン・ケラーが「ウォーター!」と叫んだ時の気持ちって、こんなだったのだろうなと思った。
番組終わりのセルメット先生の演奏は、圧巻だった。 ただ、室内が熱過ぎたようで、先生汗だく。トルコには冷房も無いのか! 汗を吸った先生のシャツの色が、完全に変わってしまっていた。 おまけに汗で眼鏡がずり落ちるので、先生しょっちゅう眼鏡の位置を直しながら弾いている。 もっと集中出来る環境で弾いて欲しかったと、それだけが残念で、先生が気の毒であった。 だって、30分もかかるんだよ、全曲演奏……。
職場で主人が訊かれたらしい。 「春さんの奥さんって、どんな人なんですか?」 それに対する主人の答え。 「スーパーで騒いでいる見ず知らずの子供に向かって
うるせえ、静かにしろ!
って怒鳴っちゃうような人」
や、やめて……。 幾ら真実でも、他所の人にそんな話しないでー。
体調はどれぐらいまで回復したかと主人に問うと、 「60%」 という答えが返って来た。 まだ普段の6割か〜と思っていたら、普段が70%の体調なのだそうだ。 常にどこかが具合悪いという事か。 100%元気な日は、果たして彼の人生に訪れるのか。
それでも少しは良くなったので、夕食は彼に作って貰った。 極楽極楽♪と御飯を食べて、食後の片付けに台所に立ったら、
あれ? 何だか床がざらざらするよ?
しゃがんでよく見てみると、細かい粒が落ちていた。 掃除したばっかりなのに……あの人に頼むといつもコレだよ! 「一寸! 台所の床に塩が撒かれているんだけれど!」 と居間に怒鳴り込むと、彼はしれっと言った。 「おかしいな。今日は取り組みは無かったと思ったが……」 お相撲さんかよ! さっきまでの怒りはどこへやら、うひゃひゃひゃと腹を抱えて笑ってしまった。 この人はいつもこの調子だ。 「もう怒る気も失せたよ……そんな、自分のお腹が出ているからって自虐ネタで笑わせなくても」 「えっ、自虐って」 と驚き、むう〜と俯く主人。 あれ、違ったのか……すまん。
年末年始は、1月1日以外は全て出勤!と言っていた主人だが、結局大晦日から3日にかけて寝込んでいた。 4日になってやっと仕事に出掛けてくれたので、掃除とシーツの洗濯だ。 嗚呼やっとすっきりする。 これで思う存分ミシンもかけられるぞ。
と言いつつ、わうわうで松本清張を観ている私。 折角なので、「霧の旗」以外は全て観たい。 私が観た「霧の旗」は百恵ちゃん版ではなく、20年近く前の土曜ワイド劇場、安田成美版だった。 あれは逆恨みでしょ……観ていて気分が悪かったので、他のバージョンも観る気がしない。 わうわうに加入したお蔭で、昨年は沢山映画を観た。 意外と面白かったのは「雲南の花嫁」。破天荒な主人公が可愛い。 逆に、名作との呼び声が高いのにちっとも面白くなかったのが「コーラスライン」。 肉体の芸術としては面白いのかも知れないが、ストーリーは糞。 元々は舞台用ミュージカルだからこんなもんなのか? でも同じ舞台用ミュージカルでも、「ウエスト・サイド物語」や「マイ・フェア・レイディ」はストーリーも最高なんだけれど。 同様に、評判倒れだったのが「レッド・クリフ」。とっても冗長。 時代考証を無視した琴の競演シーンと戦闘シーンに、無駄に時間をかけている。 あの時代にあんな服ねーよ。あんな話の繋ぎ方ってあるかよ。 もう録画してあるパート2も観る気がしない。消しちゃおうかな。 同じ三国志なら、横山光輝の方をお薦めする。あっちの方がずっと面白くて、ためになると思うよ。
大晦日から元日にかけて、BSフジで「のだめカンタービレ」を一挙放映していた。 またのだめかー、大好きだけれど何度も観たからなあとスルーしていたが、アニメ版だったとは……迂闊であった。 途中で主人がチャンネルを変えてくれたお蔭で、途中からでも観られたのでよしとしよう。 勿論リアルタイムでぶっつづけは無理なので、録画して少しずつ観ている。 2人で楽しんで見られる数少ない番組の1つなのだ。
そう言えば2人で私の実家に里帰りした数年前の大晦日、実家の定番は紅白なのだが、TVタックル超常現象版が好きな主人のために、 「この人はこの番組が好きなの! だからこっちを見るの!」 と主張して、TVのチャンネルを無理矢理変えた私。 しかし超常現象なんて信じない両親と妹の、「何? この人、こんな番組見るんだ……」という視線が主人には辛く、一寸した針の筵だったようだ。 私が主人のために頑張ったのに、却って彼が辛い立場に置かれてしまったというお話である。 立ち回りの下手な妻でごめんね……。
この正月は自宅で2人きりで過ごしたが、主人が寝ている間は、昨年録り溜めた「獣の奏者エリン」「精霊の守り人」を観て、主人が起きて来ると一緒にのだめを観るという、アニメ三昧の日々だった。 エリンはまあまあ面白いかな。というより泣ける。 守り人はイマイチ……絵は綺麗だが、たいして面白くない。 マ王の世界には着いて行けないし、ここ何年かのNHKアニメでは「電脳コイル」が1番だったなー。 アニメじゃないけれど、「新・三銃士」も観てみた。 脚色が好きじゃないし、台詞回しも美しくなくて、私には駄目だった。 だいたい、「コンスタンス」のアクセント位置がおかしい。 普通は「タ」じゃなくて「コ」にアクセントでしょ。亭主のボナシューだけが正しいなんて。 のりPが主題歌を歌っていたアニメ三銃士だって、「コ」にアクセントだった。あのアニメも好きじゃなかったけれど。人妻じゃないコンスタンスなんて。 子供の頃に児童書を読んだだけなので、いつか原作を(勿論翻訳で)読んでみたいと思う本の1つである。 のだめは原作漫画も大ヒットらしいが、読んだ事が無い。まあ、ドラマとアニメを観れば充分だろう。 多分アニメの方が、原作に近いのだろうな。 アニメ版ファイナルは、2月15日からBSフジで放送されるらしいので、楽しみに待っている。 実写の映画版は既に公開されているらしいが、家でリラックスして見る方が好きなので、これはわうわう待ち。 映画と言えば、今年はテリー・ギリアムの新作が封切りされるとかで、主人がわくわくしているようなので、一緒に行ってやってもいいよ。 幾らなんでも、それまでには体の不調も治るだろ。
副作用こそ出ないものの、一昨日出して貰った薬は余り効いていないらしく、主人は相変わらず1日の殆どを寝床で過ごしている。 喉の薬を貰ったのだが、やられているのは恐らく気管支……まさか肺炎までは行っていないと思うが。 そろそろ布団上げて掃除したいな……。 決して私が綺麗好きなのではなく、布団が黴るのが心配なのだ。
医者でも看護婦でもない私に出来る事は、限られている。 死んでいないかと時々様子を見に行って、薬の時間になったらお粥を作って食べさせた後に薬を飲ませ、喉が渇いたと言えばポカリを持って行くぐらいである。 あとは本人に備わっている筈の、自然治癒力に任せるしかない。頼りないけれど。 基本的に世話焼きではないので、主人は寝室に放置して、私は居間で、昨年録り溜めた映画やドラマを観ていた。
昼過ぎ、外に雪かきに出ようとしたら、どこかから低音が聞こえた。 何、この地の底から聞こえる音は……私の名前? 音の出所は、主人だった。 一応呼び出し用に枕元に携帯電話を置いてはいるが、私がドアの前にいるのを察知して、呼びかけていたらしい。 喉が痛くて大声を上げられないものだから、超低音で呼びかけたのだが、低過ぎてよくわからなかった。 用件は、喉が渇いたからポカリくれ、だった。 謎の低音の正体がわかるまで、一寸怖かったんだけれど。 早く風邪治せよ!
元日に出掛けるのはせいぜい初詣ぐらいで、家族揃ってお家でゆっくりと過ごすのが正月のあるべき姿だと思う。 お家でゆっくりと過ごしているが、主人は寝室、私は居間とばらばらだし、初詣にも行けない、微妙な年明けである。 部屋が離れていても、振動が聞こえると言うのでミシンも踏めない。 元日から掃除をするのは何だか嫌だったが、部屋の片付けなどを煩くならない程度にやっていた。
寝たり起きたりだった主人が、夜には少し良くなったと言って起き出したので、漸く年賀状の準備をすべく、PCの前に座って貰った。 ひとまず頂いた分だけは出す事にして、宛名の打ち込みとレイアウトなど印刷関係は主人に任せている間、私はコンビニに葉書の不足分を買いに行った。 帰って来たらまだ出来ておらず、2人であれこれ考えて意見をすり合わせ、やっと出来たのは深夜になってからだった。 私は途中で面倒になると適当に済ませてしまうが、主人は案外完璧主義者らしく、妥協を許さない。 どうせなら、年賀状作成期限を完璧に守って欲しかったのだが、気分が乗らないと言うのだ。 面倒臭い人だなあもう。
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