夕暮塔...夕暮

 

 

必要と - 2002年07月28日(日)

必要と言えば何もかも赦される そんなまぼろしを信じないでね



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花火の夜 - 2002年07月27日(土)

お酒の席、知人の奥様が私費出版した小説の感想を求められて、どう答えたものかと少し窮する。小説としては正直言ってつまらなかった、二度読む気にはならないし、本当は読んでいる途中から少し苦痛だった。文章そのものは決して悪くない、だけどあまりにテーマが明確に言語化されてしまっていて、説教をされているような気持ちになってしまうのだ。展開もややご都合で、人物描写が足らないから何故そうなるのか読者には理解できないし、何より主人公に魅力がないのが致命的だと思う。

知人達と別れて、薔薇色の雲の浮かぶ中を浅草へ向かう。隅田川の花火大会はブラウン管を通してしか見たことがなかったので、本当に楽しみにしていたのだけど、人の海で待ち合わせ場所に辿り着けず苦戦する。時間も遅すぎた、結局一人きりで、橋の上から最後のスターマインを眺める事になってしまった。携帯が何度目かに鳴り、私は半分やけになって通話ボタンを押す。
「花火、終わっちゃったよ?見た?」 「うん、見た」 「ひとりで?」 「…そう、一人で。橋の上で」 「会ったら、何て言っていじめようかなって思ってるとこ」と笑われて、私は「もう帰る事にする」と応戦してみる。


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白く濃き - 2002年07月26日(金)

白く濃き雲に誘われ炎天下 のびやかな背中思い出している



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しまった、日が完全に落ちるまでには起きようと思っていたのに。
時計は8時を指している。わたしはソファの上で慌てて綿毛布を剥ぎ取る、明日までにやらなければならない作業があるけれど、この状態では深夜にずれ込むのは確実だ。連日の暑さで体力が落ちているのかもしれない、帰宅するとやたらにぐったりしてしまって、仮眠をとる事が増えている。


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こんな夜 - 2002年07月25日(木)

こんな夜 見下ろす数多の明かりには ただひとり吾を知る人ぞなき



夏月夜 数多明かりを見下ろして ここにいる人を誰も知らない



夕空を端から満たす灰の雲 もう少し待って 今日は望月




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目を閉じて - 2002年07月24日(水)

宵待の花もほのかに歌う中 目を閉じて深く潜れ明日の為



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…海に行った後みたいになってしまいましたよね、と私はやや力なく笑い、彼女は優しく「大丈夫?」と言いながら私の髪の砂を払ってくれる。「とうとう来たって感じだね」「そうですね…何というか、来るべき時がって言うか…。向こうの本領発揮かな」
「うん、でも、何だか、もの凄く疲れた……すごく」 伏し目がちに息を吐く彼女に深く同意する、2人顔を見合わせながらスチールの椅子で背を丸め、これからの事を考える。大きな窓の外は薄鼠の雲が広がりつつある、けれど今はまだ明るい、今日の夜本当に雨は降るのだろうか。



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夢の真昼 - 2002年07月22日(月)

にこりともしないあなたのほっぺたをつついて笑った夢の真昼よ



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ゆるりと霞みゆく - 2002年07月21日(日)

硝子戸の向こうゆるりと霞みゆく 今日もただ黙す一人の夕暮れ



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勢いで - 2002年07月20日(土)

勢いで血の濃き人まで傷付けて 未だ乾かずよどむ我が淵



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「…外に出てくる」
私は止めない。どこへ行くのかと問う気にもならない。先程までのゆるやかに幸福な雰囲気は一気に冷めた。一人残されて半ば呆然とテーブルの上に並んだ品々を見下ろす、思い切りひっくり返すくらいの衝動性が私にあったら、こういう時いっそ楽なのかもしれない。そんな風にぼんやり考える。きっと、一瞬はすっとするんだろうに。そして今は、下らなくていいからそういうものが欲しいのだ。…ああでもだめだ、やはり実行できない。残念だけど私はヒスじゃない。かすかに泣きたいような気分で目を細める。


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肩すくめ - 2002年07月17日(水)

肩すくめ 「楽」と「たのしい」は違うねと 呟くあなたに笑い返そう



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恐ろしく暑い、外気に晒されるだけで朦朧としてくる。しかしそんな事には構っていられない、大事なプレゼンを控えて、睡眠の足りていない頭を必死に回転させる。どうにも時間がないものの、今晩は付き合いで飲み会に出る約束をしてしまった。同期が「今晩のこと、無理だったらいいのよ、本当に」と声をかけてくる。義理のある飲み会、彼女だって苦しい時期なのに、負っている責任上どうしても出なければと思っている様子。彼女は私にそこまでの尽力を求めていないのだろうと推測しながら、「大丈夫…多分ね」と笑ってみせる。こんな時の私の顔は、どんな大変な事でも本当に何とかしてしまいそうに見えるのだと、以前誰かに言われた。自分ではよくわからない、用意周到な方ではないから、危ない橋をしょっちゅう渡るのは確かなのだけれど。


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嵐去り - 2002年07月16日(火)

嵐去り 君の家までまっすぐに オレンジに染まる道のりをゆく



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- 2002年07月15日(月)

若過ぎるゆえに傷つきその色も 褪せぬまま君の胸疼かせる



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「旅行の日取り決めてしまおう、9月ならいつがいい? ひとまず日程だけ」
疲労困憊の深夜に携帯へ届いた友人からのメール、読むなり額に掌をあてて嘆息したい気分になる。困った、どう返信したらいいものか。ずっと延ばし延ばしにしてきた私の不誠実がいけないのだと、わかってはいるのだけど。旅行には行きたい、しかしその時期に時間が取れるかどうかはわからない。日取りを決めておいてキャンセルするのは忍びない、彼女たちとの旅行の企画は今年に入って2つ目で、前回もやっぱり私のせいで計画が散ったのだ。約束を結べば、人に喜びと安心を与えられる事は間違いない。だけどそれが叶えられなかった時に、どれだけの落胆を以て彼女達と私自身に報復するだろう。




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篝火を - 2002年07月13日(土)

篝火を揺らす風吹く梅雨間晴れ 鳴き初むる蝉の気の早きかな



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やがて龍となる - 2002年07月12日(金)

君の背の中いっぱいにみなぎりて やがて龍となる熱渦頼もし



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太陽を - 2002年07月10日(水)

太陽を 思い出してはいたずらに 傷ついて苦いきみの笑顔よ


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どんな風に好きなのかと問われれば、太陽のようにと答えるのだろう。ありふれたひどく浅はかでつまらない表現かもしれない、でも多分どんなに美しい言葉を尽くすより、この例え方が一番いい。仰ぐように、当然に、自然に、熱を持って、絶対的なものに惹き付けられるように。時に目には見えなくとも、どこかにある限り。


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あかり溜め息で - 2002年07月08日(月)

蝋燭の あかり溜め息で揺らめかせ 今日という日の熱と別れん




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海外旅行のお土産に貰った小さな円いキャンドル、ふと思い出してお風呂で使ってみる事にした。反復入浴の最後の入浴時間、お風呂の蓋の上にほんのりと炎を灯らせる。…ああなんだ、これって思ったよりずっといい。流行のセルフセラピーという言葉があまり好きになれなくて避けていたけれど、この落ち着いた灯りの色も、光源の頼りなさでバスルームの壁が表情を変えるのも、とてもきれいだと思う。


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忘れ雪 - 2002年07月07日(日)

あんな色をした空に落ちる忘れ雪滲む夕暮れ まだ忘れない



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「あのテレビとオーディオ、買い換えるべきだよ」
やっぱりそうだろうか、と私は何となく半ば納得しないまま思う。何度かそんな風に考えた事もあったけど、何故かいつも長続きしないままここまで使ってきた。それなりの愛着があるのかと問われればよくわからないけれど、確かに物持ちは良い方かもしれない。携帯の機種をしょっちゅう変える人の気持ちは理解できても共感できないし、そういえば今使っているデスクと本棚はもう10年近い付き合いになる。あれもおそらくそろそろ限界。でも明日あたり寝室に置くラタンのリネンチェストが届くし、ソファだって買ったばかりなのに、またそんなに色々買い換えないといけないのか。困ったなあと思いながらタワーレコードへと向かう道、低い建物の向こうは夕闇の雲に紛れて火の色をしている。
「ね、見て、あれ」
私は指差して示し、驚嘆の声を聞いてそっと笑む。嬉しい、この時間に外にいてよかった。


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ひと想ふ孤独 - 2002年07月05日(金)

知らぬ間に そのベクトルの名を忘れ 人想ふ孤独美しきかな



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…話を聞くに明らかに不眠症、本人の自覚は薄いけれどあちこち身体化している様子。どうしたものか、来週まで様子を見て変わりないようなら、何か手を打たないわけにはいかないだろう。







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笹の葉の - 2002年07月04日(木)

笹の葉の舟の上灯るホオズキの赤き光のくゆる薄闇



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久々に白衣を着ると何だか微妙な違和感、でもどこか高揚しているのも確か。「ふふふ、これが僕の本当の姿ですよ」などとうそぶいていた川原先生の言葉もすっと入ってくる気がする。でもあれはあながち冗談とも言えないらしい、白衣を着ている時はとてもいきいきしてらっしゃるし、普段のデスクワークは彼にとって相当負担なんだろう。

ドラマ改変の時期、でも今度のはあまり興味をそそられるものがないようだ。この間まで見ていたのは「天国への階段」、本上まなみ演ずる役どころが好きだった。最後まで追い風の吹かない恋なのに、決して卑屈にならない、芯が強くて綺麗に背筋の伸びた女性。もう一度あの台詞を聞きたいな、いい言葉だった、…カシワギさんが払って下さい、割り勘の関係は、もう終わりにしたいんです。裕福な主人公が何を懸念してわざわざ割り勘という頑固な一線を引いていたのか、見透かした上できっぱり手の内を明かす、あのやり方は爽快だった。



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指先の影 - 2002年07月03日(水)

君の目は 思い出すには痛すぎて 妥協してそっと指先の影



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この夏がある - 2002年07月02日(火)

灰色に街沈ませる台風の渦の底深く この夏がある



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昏々と - 2002年07月01日(月)

昏々と 眠ればあなたに会えるかな 雨音に夢が掻き消されるまで



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