夕暮塔...夕暮

 

 

斬って捨てる - 2002年05月31日(金)

斬って捨てるだけならばいっそ容易いと 苦しげに笑んだ 月を背にして




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曇りなく - 2002年05月29日(水)

曇りなく 偽りもなく 恋もなく あなたに向かい合えたらいいけど



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恋を歌う - 2002年05月28日(火)

恋を歌う きみの横顔美しき 伏せた瞼に花の香ぞ灯る




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夕暮れを過ぎて、切らしたビールを買いに出た最寄りのコンビニエンスストアで、顔馴染みの店員さん達に声をかけられる。1人は店長さん、まだ割と若くて明るい人だ。挨拶しながら、もう2人暮らしではないことをいつ伝えたものかと考える。勿論そんな報告義務はないのだけれど、黙っているのも微妙に不自然だと思う。レジの女性が「ビールはいいですよね、疲れが取れます」と話かけてくるので、私は「あ、ビールお好きなんですね…私はこれ、最近のお気に入りで」と白い缶を指差して笑う。


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恋闇 - 2002年05月27日(月)

かの声の確かに響きし覚えして 振り向けば静か夏の恋闇



かの声が確かに響いた心地して 振り返る夏の哀しき恋闇




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上司の悪い病気が出ている。部下の空いた時間にやたらに新しい仕事を詰めたがる癖、時々空回りして同僚2人の失笑を買っているけれど、私はとりあえず無難に笑って声をかける。「先生、その方は10時からお約束してる方ですよって、さっき言ったじゃないですかー…」 そうだっけ、あれえごめんごめんと上司が笑い、何とか場の空気が緩むのを確認して次の書類を渡す。それでもやや苦しい、今頃2人は顔を見合わせて呆れている事だろう。
この程度ならまだフォローできる、しかしセクハラ言動に至ってはもう無理だ。

「肩、もんであげようか」
「……結構です、凝ってませんから」

フォロー不可能というよりは、する気にもなれずに斬って捨てる。
私の対応はまだ手ぬるいのかもしれない。この無自覚な大人が傷つかないように、そういうのセクハラっていうんですよと笑いをまじえて教えてあげた方が本当は彼の為なのだろうけれど、呆れ返って声も出ない。


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誓約の - 2002年05月26日(日)

誓約の証と差し出すこの傷は 浅くてあまりに陳腐だけれど




風流れ 星紫陽花の葉に光 目を閉じてしばし夏の香を嗅ぐ





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偶然に - 2002年05月25日(土)

偶然に会えたらいいのに わたしたち 臆してメールも送れずにいる




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母が来る筈が急にキャンセルになって、当初予定していた友人との外出について、再びOKの返事を出そうかどうか少し迷う。けれどそう何度もこちらの都合で振り回すのも申し訳ないし、もう今日は家の事をして過ごす事にしよう。今日はマンションの管理会社から水道管の清掃業者が派遣されて来る日だし、ついでにあちこち細々と掃除や整理をしたい。

コーヒーを飲む為のお湯を沸かしている間に、匂い飛ばしの為の扇風機を回しながら、今夏初めてのペディキュアを塗る。パールの入ったワインレッドの上に、半透明のピンクに銀の大小ラメが入ったものを重ね塗りすると、ラメが光の加減できらきらと輝く。
マニキュアの瓶の整理をしていたら、失くしたと思っていたネックレスを引き出しの底で見つけた。本当に嬉しい、お気に入りだったのでずっと気にかかっていたのだ。さんざん探したのに、こんな所に紛れ込んでいたなんて。


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見つめあえど - 2002年05月24日(金)

見つめあえど 別れ間際はいつの時も 必要無いほど潔すぎて




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3人でいるのに、彼は私の目をじっと見つめたままだ。少しあからさま過ぎやしないかと心配になるけれど、これはもしかしたら今更なのだろうか。私も目を逸らさない。
じゃあ、と笑って別れる。次の約束もなく、それでもそう遠くなくまた会う事を確実に予期して。表現し難い不毛さに一瞬の虚脱感が襲う。だけど仕方のない事なのだ、いくつもの機会と分岐点を経て、こういう風になる事を選んで来たのは、間違いなくわたしなのだと思う。


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濁りゆく - 2002年05月22日(水)

濁りゆくさだめにあらむか綺羅星の ひとつも今では映さぬこの目は




水音を 聞きて眠りし夏の夜の 凛と静かな枕懐かしき





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このところ星を見ていない。月なら昨日久しぶりに見た、膨らみ気味の半月、月齢はいくらくらいだろうかと友人と歩きながらぼんやり考えた。それにしてもこんな生活は良くない、目が濁っていくような錯覚を覚える。きれいなものを見て心動かされたい、理屈じゃなく、むしろ理屈なんてひっくり返されるような水準で否応なしに美しいと思えるようなものに出会いたい。夏の夜に、実家で錦鯉用の水の濾過器の音を聞きながら眠った事を思い出す。さらさらと流れる水音、近い虫の声が涼やかに部屋中に広がっていた。新しい畳の香り、硝子の外に美しく濃密な夜が満ちる気配。あらゆる理屈を廃してひとりで眠る幸せを、私は確かに知っているのに。



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約束を - 2002年05月21日(火)

約束を 交わすことさえ恐れてた 揺れながら滲む雨粒の向こう




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時々は - 2002年05月19日(日)

君のこと 時々は思い出している まだ胸に少し痛みもあるけど




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小さなヒビの入ってしまった愛用のマグカップ、諦めきれなくて購入した店で同じデザインを探して貰っていた。在庫が届きましたと電話が入って、そろそろ取りに行かなければと思いながらも、天気や体調が悪かったり帰りが遅かったりで足なかなか足を運べないままでいた。ダヌーンという外国のメーカーの品物で、穏やかなリーフのデザインもそうだけれど、何よりゆるやかに真ん中がくびれて安定のいい形状が気に入っていて、ここにないのが今も淋しい。
「こちらでは無かったでしょうか…?」
取り置きして貰っていた品物を確認すると、残念なことに全く違うデザイン。
「緑の葉っぱと伺っていたので…該当するものがこれしかなくて。違ったんですね…すみませんでした」
店員さんが申し訳なさそうに言うのに対して、購入は随分前の事でしたし、今はもう作っていないデザインかもしれないですね、と添えて手間を掛けた事へのお礼を述べる。しかしあれと違うものだとしても、とりあえず常用のマグカップは必要だ。他のカップはどれも小さめで、お客様が来たときにはいいけれど、1人でコーヒーを飲むのにはもう少し深くて沢山入るのがいい。容量、安定、デザイン。器を選ぶ時の大切な要素。少し考えて、前回来た時に気になっていたものを買う事にした。ウェッジウッドのナイト&デイ、飾り気のないシンプルな白。これで風邪完治後最初のコーヒーを飲もう。体調を崩している間控えていた(というより飲む気になれなかった)から、何だか二重に嬉しい気持ちになる。


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君じゃなきゃだめ - 2002年05月17日(金)

なぜこんな 星の数ほどの声を聴き 触れ合っても尚 君じゃなきゃだめ




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毒も薬も - 2002年05月16日(木)

ただここに 誰かを繋ぎとめる為の 毒も薬もわたしにはなく



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皐月の風汲む - 2002年05月15日(水)

耳澄まし 皐月の風汲む君の名を 囁くごとくになびく青柳



なびなびと そよぐ柳葉いま君を 呼ぶがごとくに みどり風吹く




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風邪をひいてしまった。それでも急ぎで片づけねばならない問題があったりするせいで、睡眠不足が続いてなかなか治らない。これは悪循環だと思う。





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春のさなかに君の背を - 2002年05月14日(火)

尽きてゆく 春のさなかに君の背を 空滲むまで探していた頃



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こんな言葉に傷ついて - 2002年05月13日(月)

いつもなら こんな言葉に傷ついて 泣いたりしない人の筈なのに





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眠れず迎えた初夏の - 2002年05月10日(金)

夜明けまで 眠れず迎えた初夏(はつなつ)の 朝の小径にくちなしの花




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「わかった」と - 2002年05月08日(水)

「わかった」と答えたあなたの内心が 今も本当にわからないと思う



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我はいかにあの時に君を苦しめて 知らぬ素振りで目を背けたか








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なだらかな - 2002年05月07日(火)

なだらかな胸の野原を灼き尽くす おさないあなたの恋は本物




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珍しい人から着信。年末に久方ぶりの恋愛が始まってからは、すっかりかかってこなくなっていたのに。
「幸せなお話があるそうで…」
私は含みを過剰に滲ませて笑ってみせる。もちろん故意に。彼はわざとらしく電話を切りたがるが、いつも通りの建て前だけのやりとりだ。誰から聞いたの、と繰り返し尋ねる、これもいつもと同じ。
「これはまだ仲間内には誰にも言ってないから、絶対に言ったらダメだよ…誰かにばれたら、君が言ったってわかっちゃうからね」



見つけた、と彼は重い言葉で言った。くっきりと発音されたその意味を、私は静かに反芻する。




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加熱した - 2002年05月06日(月)

加熱した日暮れが今更恋しいと 伝える術無く初夏巡り来る





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とうとう、1人で暮らす事になった。
私は引越を免れて、広い部屋でひとりの生活を送る事になる。誰もあちこち汚したり散らかしたりしないのは爽快だけれど、ふとした時に他愛のない話をする相手がいないのは、僅かに寂しい。


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見つめ返せない - 2002年05月04日(土)

なぜと問う きみの目を見つめ返せない この臆病さが距離をあけてゆく




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嘘を許して - 2002年05月03日(金)

ひとつだけ 嘘を許してくれますか あなたのそういう所が嫌い



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黄昏の国は - 2002年05月02日(木)

会ひ見えぬ夜を数えて幾晩目 黄昏の国は遠く霞みぬ




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返却日が迫っていたレンタルCDを返して、ミネラルウォーターのペットボトルをまとめて捨てた後、パン屋とコーヒー豆屋に寄った。豆屋さんで沢山おまけして貰って恐縮する。注文した量より随分多いけれど、いいのだろうか、こんなに。その上、色んな種類のドリップバッグまで貰ってしまった。
それにしてもいい天気。こんな日には公園にでも出掛けて、のんびり散歩と植物観察が出来たらいいのに。そう思いながら化粧を済ませて出掛ける。私と似た研究をしている人の計画案を聞いて、ささやかに意見を述べる。風邪が完治していないのだろうか、思考しているうちにじわりと発熱感。知恵熱だったらどうしよう、と暫しぼんやりする。だとしたら恐ろしくヤワな脳味噌だ。
帰宅途中、駅からの道でサボテンの花が開いているのを見つけた。道路沿いの民家が育てている鉢植えなのだろう。夜道にそこだけ灯りがともったような白い大輪、月下美人の花によく似ている。見事だ。明日カメラを持って撮りに行こうか。


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どうしても欲しい君の声 - 2002年05月01日(水)

こんな時 どうしても欲しい君の声 思うよりずっと 依存していた





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「あなたの事を考えるわたし」を削ぎ落とす事が出来たら、どんなに清々しく身が軽くなる事だろう。


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