【アルファ】再開と言い訳

突然の更新ストップ申し訳ありません。少し考え事をしていたり、少し間をおいてから感想を書きたい本もあったので、間があきましたがぼちぼち本は読み進めています。第二目標としていた70冊も先日無事に達成できました。今年も残るところあと一ヶ月。またがんばっていきたいと思います。更新しなかった日数分、18日以降2日おき更新でUPしたので、もしよろしかったら過去ログをどうぞ。(ただ、今回はいつもよりも少しうまくかけなかった自覚があるので、先に謝っておきます…すみませんTxT)

あ、そろそろ本の感想ストックも切れます。12月は定期更新ではなくなるかもしれませんが、それは単に読み終わって感想を書いた本がないだけなので、今回みたいな状況ではないと思われます。念のため、ご了承くださいませ〜
2008年11月30日(日)

【読書記録】浅倉卓弥「雪の夜話」

ストーリー:テスト勉強のため、深夜まで勉強していた僕はタバコを買いに行くために、ある雪の夜家を抜け出した。一服ついた僕は、ふと公園で少女の姿を目にする。――こんな夜中に、しかもこの大雪の中で何をしてるんだ?近づいていった僕に、少女は驚きと素敵な笑顔を浮かべた。

寒冷地方に住んでいた高校生の僕が、深夜の大雪の中で年端もさほど変わらない少女が雪と戯れているのを見つける。そんなシーンからお話は始まります。浅倉さんのお話は、ゆっくりゆっくり噛んで形がなくなってきた頃に飲み込むようなタイプだと思っているのですが、まさにそんな感じのお話だったと思います。ただ逆に言えば、私は途中で方向性がわからなくなって、何が主軸として語られるべきなのかなと感じたり、人間ドラマのほうが面白いんじゃないかと思ったりも…。しかしながら浅倉さんの描き出す空気感が好きです。文章からはとても丁寧でととのった印象を受けますし、このぴっちりした感じが好きだなぁ。ただ、言い回しで同じ表現が繰り返し使われていたりして、たまにもうちょっと工夫できるんじゃないかなぁなどと感じたりも。空気を壊さずに、言いたいことを伝えるための、雰囲気があるからこその難しさなのだと思います。

僕が高校生のままお話が展開するのかと思いきや、大学生になり、社会人へと成長していろいろな経験をしたというくだりが面白くて、そっちの方面での小説を読んでみたいなと思いました。また、主人公の僕はデザインを職業として扱っているので、そのアイディアの面白さなども光っていたと思います。この依頼にどうこたえてくるのか、それはとても見ていて面白かった。NO.70■p297/中央公論新社/05/01
2008年11月29日(土)

【読書記録】豊島ミホ「ブルースノウ・ワルツ」

ストーリー:都心の豪邸で、かごの中の鳥のように生きる少女がおりました。彼女は来る日も来る日も同じような日々を過ごしていたため、たまに父に同伴して出かけることをとても楽しみにしていました。しかし、今回出かけたのは失敗だったと教会の中で彼女は感じたのです。この臭気と陰気くさい部屋の中でみつけた何かを見て――。

豊島さんの半分ファンタジーな世界観がここに!私はおとぎの国のイメージでしたが、案外寒いヨーロッパ地方をモデルにしただけかもしれません。苦笑 少なくとも現代の日本が舞台ではない作品です。豊島さんの作品では珍しいですね〜!いつもの息遣いが聞こえてくるようなタイプの小説ではなく、今回はわりと淡々とお話は進みます。少女が受ける感情の波がさほど大きくないのですが、その何かを見つけたことで少しずつ彼女は自分を見つめ、それを通して外の世界を感じ取ります。決まった日々、敷かれたレールはこの上なく当たり前に用意されるもので、そして私には自由というものはない。それが彼女のものの見方。感受性が広まった時の彼女の行動が、興味深かったです。そしてエンディングの迎え方も。NO.69■p188/講談社/04/05
2008年11月27日(木)

【読書記録】橋本紡「九つの、物語」

ストーリー紹介も出来なければ、感想も「すごく好きでした」程度しか言えないのがもどかしいですが、うまい言葉が思いつきませんでした…。こんな感想でも興味を持っていただけたなら、amazonのこちら

ttp://www.amazon.co.jp/%E4%B9%9D%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%80%81%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E6%A9%8B%E6%9C%AC-%E7%B4%A1/dp/4087712168/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1228034162&sr=1-1

を参照してくださいませ。みなさんの評価もすばらしいので、ぜひ。
NO.68■p313/集英社/08/03
2008年11月24日(月)

【読書記録】島本理生「大きな熊が来る前に、おやすみ。」

ストーリー:まだ小さいころ、故郷の北海道で、なかなか寝付かない私に父が繰り返していた言葉。「早く寝ないと大きなくまがきて、お前を食べちゃうぞ」。大人になって、彼と同棲している今、私は不意にその言葉を思い出した。

表題作の長編なのだと思っていたのですが、短編三つが収録されています。表題作を読み終わって、あとがきをちらっと見たところ、意図があっての短編集なのだなとあって、それを考慮しつつ読みました。よって、この本はあとがきかを読んでからの読み方と読む前の読み方は若干ですが違うような気がします。
内容についてですが、これは『あなたの呼吸が止まるまで』と似ている雰囲気を感じました。綱をぐらぐらしながら渡る息苦しさと、いつまでもぼんやりと漂う閉塞感。駆け出したような恋愛小説を描くかと思うと、こんなにぐらぐらした小説も書くのだなぁと言うのが私の感想でしょうか。NO.67■p201/新潮社/07/03
2008年11月21日(金)

【読書記録】「甘い記憶」

井上荒野、絵国香織、川上弘美、小手毬るい、野中柊、吉川トリコ
――読み終わってまず執筆人の落ち着いた様子にほっこりしました。今回一番好きだったのは、野中さんの『二度目の満月』。読んでいて「幸せのかけら」がテーマタイトルじゃないかと思うような暖かさがありました。

井上さんは、だらだら続けてしまう関係性にそろそろ区切りをつけようとする男の子の煮え切らない様子が、まさにそれだなぁと。
川上さんは、うわさどおり食べ物がおいしそうでした。てんぷらにごはんに、だいこんおろしとすりおろし生姜〜♪
小手毬さんは、今回のアンソロジーではドラマチックな展開が印象的。
吉川さんは、女R-18の第三回受賞者さんなのですねーと思いながら。

それぞれになんとなくほっとする。NO.66■p185/新潮社/08/08
2008年11月18日(火)

【読書記録】「恋のかけら」

かけら…こういう意味か〜!と思うような作品たちでした。書き手によって解釈はちょっとずつ違いものの、ひっそりきらきらと輝いていて、素敵でした。好きだったものをかいつまんでご紹介。(掲載順)

・山崎ナオコーラ「電車を乗り継いで大人になりました」
お名前は存じていたのですが、こんな文章を書く方なのだなぁと知りました。条件で人を好きになるわけじゃないからこそだろうなと思うと同時に、だけど何から何まで無意識に気に障ってしまう相手を選べるかというと微妙。(作中では無意識ではないようですが…)最後、「好きになれたかもしれない」という言葉のあいまいな感じで終わるのがよかったなと思いました。ただ、その意味は「最初から枠にはめた見方だけではなく、もっとちゃんとその人を見たら、その人のいいところがみつかるかもしれない」という趣旨だったと解釈しました。これがもし直球で、異性としていつか好きになれるかもという意図ならば、話は変わってきてしまうのですが…。

・南綾子「雪女のブレス」
さばさばしているようで、ほんの少しの執着(ほんの少しでも、執着というものの存在感は大きいのです)が入り混じった感じが絶妙だなぁとほぅっとため息。主人公は、異性への欲求がまったく感じられない女性だが、彼氏はいる。友達のような付き合い方をして五年目の彼氏が。手玉に取られたような展開が心地よく、自分の欲求について考えて、そして実際に話をして、ちょっとずつ変化していく主人公の気持ちを追うのがとても楽しかったです。この展開は、どこかで――と思っていたら、この方、女による女のR18〜の第四回大賞受賞者ということで、けたけた笑ってしまいました。(ここ一年でずぼっとはまった豊島さんも、この文学賞出身なのです)思わず、こうなったらR18文学賞受賞者を追っかけてみようかと思った作品でした。

・豊島ミホ「銀縁めがねと鳥の涙」
そして豊島さん。この本も彼女目当てで読んで、そしてしっかり着地してくださった!拍手を送りたいと思います!豊島さんの近年の作品は、空気感・言葉にならない気持ちという、漂うものの描写が抜群にうまくなったと思います。この作品も、その空気があるからこそ成り立つもので、ぐっとつまったり、呼吸も出来ないほどの衝撃を受けたり、そして最終的にはそれをステップに羽ばたくであろう様子がとても魅力的。写真についての描写もとてもしっかりしていて、重みがありました。「これ、スナップでしょ――」
NO.65■p202/幻冬社/08/08
2008年11月15日(土)

【読書記録】豊島ミホ「リリイの籠」

東北のとある女子高が共通点のさまざまな女の日常を切り抜いた短編集。女の子もいれば、女性もいるので、あえて女と表記しました。
短編なのに、それぞれがすごく個性がありその色を感じる存在感のある作品たち。みんな好きだな〜。
・銀杏泥棒 退屈で淡々とした毎日。部活で出展するための作品を先生に見せたところ、雷に打たれたような一言が胸に残る。「好きで描くのと好きなものを描くのは違う」。じゃあ、私はいったいなにが好きなんだろう…。>空回りする主人公がいい。うまくつかみ取れないけど、私なりにがんばってる、そうやってでもやっぱりつかめないことに大きく落ち込む姿が成長を感じる。
・ポニーテール・ドリーム タメ口で話しかけてくる、かわいいけどいかにもギャルっぽい生徒が苦手だった。だけど、スカートの丈を注意したあの日、私はふと自分の学生時代を思い出す。地味で勉強だけしてたあのときの自分の姿を――。>夢、だったんだなぁとしみじみ。先生の、自分にはないけど、だけどすごくすごくあこがれていて、でも自分には合わないからと避けてしまうような様子がじわじわ伝わってくる。最後まで読んだときの爽快感が印象的。
・忘れないでね 転校生を長い間続けていた私は、今回もまた別の場所へ流れていくことが出来ると思った――。>思ったんだよね。だけど、そう、その涙の意味があるわけで。調子に乗ってると帰ってくるんだなぁと、やられたなぁと言う感情が渦巻く。
・いちごとくま かわいいものが似合うかわいい私と、くまみたいな女の子くまっちは親友。だけど、私は思ってた…三枝、あんた空気読まなさ過ぎでしょう?それで本当に言いわけ?>上の忘れないでねと同類の感じ。だけど、三枝、最後の最後にそんな鋭い事いうかなぁという気も。
・やさしい人 当時仲がよかった友達よりも、彼女に会ったときのほうが「懐かしい」と感じたんだ。>
・ゆうちゃんはレズ ここは女子高。私はゆうちゃんに告白された。>銀杏泥棒と似ているところがあると思う。誰かを本当に好きでいることは、執着してしまうほどに相手をしっかりと見つめることなのか!と感嘆。だから、この作品がすきだった。一生懸命にならざるを得ないほど、人を好きでいる事自体は、性別関係なくあるものだと思う。この点では、私はゆうちゃんと違うのだけど…。

どれも30pで展開してるんだなぁと、改めて感嘆しました。ぎゅっとまとまっていて読後もよく、素敵な作品集でした。後半になるにつれて、紹介文が短くなるのは、それが一番的確だと思ったからなのです…。NO.64■p216/光文社/07/12
2008年11月12日(水)

【読書記録】朝倉祐弥「救済の彼岸」

デビュー作と、デビュー後一作目(出版二作目)のこの本を手に取ったのですが、デビュー作はあまりにも文体が硬くて、わかりあえそうになかったので、数ページであきらめました……。(たまに最初からわかりあえなさそうな本はあきらめるという手段にでます)
そこで、二作目ならばどうにかなるかなぁと思って読み始めたのですが、ストーリー紹介はなんとか書けるけど、その後の展開がなさすぎて、紹介はできないなと判断いたしました。最後の数ページに意味があるわけですが、それすらもうーん納得出来ないなぁ。お話は、部屋にこもって暮らす三十路過ぎの男(貯金を切り崩して生活しているので、パラサイトなどではない)が、ある日突然代理人と名乗る女の訪問により、自分が近い将来殺されることを宣言されて始まります。しかし、彼は何をするでもなく、ただ今までのように部屋の中でたゆたう日々。何をしようという意思も様子もほとんどなく、劇的な展開などはありません。この展開を、どう租借すればいいものでしょうか――。NO.63■p186/集英社/07/03

と放置してしまうのも無責任かと思って、調べました。結果としてうっすらみえてきた情報を提示すると、
・そもそもデビュー作から独特の世界観がある方で、文芸誌から2chに及んで話題になったようだ(amazonより)
・このお話は、やはりすべてを放置して突き進んでいくスタイルで、結論は出ていない。よって、この空気を楽しむべし。
・…正直、これが感じられるのはそれぞれの感性によるものなのか、年齢によるものなのかは判然としない。しかしながら、少なくてもこの最後までどうなるのかわからないという前提でも読み続けられる方じゃないと耐えられないと思う。
――というところでしょうか。総じていろいろ難しい本だったと思います。
2008年11月09日(日)

【読書記録】金城一紀「映画篇」

長編を楽しくテンポ良く読ませる金城さんというイメージのほうが強いですが、短編も秀逸。映画を絡ませながら展開する映画篇では、近隣地域でのちょっとした人々が織り成す日常と非日常の物語。最終的にローマの休日に終着する映画のお話たちは、とても心地よく読めました。

>太陽がいっぱい:自分の作品が映画化する――その現場に赴いた先で、偶然会ったのは中学時代の――民族学校時代の同級生・ヨンファだった。彼女に会ったとたん、あいつどうしてる?という言葉が飛び出しそうになったのを抑えて、僕はその場を立ち去った。中学時代、一番楽しかったあのひと時をともにした友人に思いをはせながら、僕は筆を取る。
金城さんだーと、素直にずぼりとはまった作品でした。あまりに内容がないようだったので、ずっとノンフィクション?と思いながら読んでいたくらいどきどきしました。作風は『GO』です。最後のエピローグもすごくほっとするような展開で、これだけでもこの本は読んだ価値があったなぁと思えると思います!

>ドラゴン怒りの鉄拳:何が起こったのだろう、あの二つの赤い点は何だろう。…ある日を境にぱったりと家から出なくなってしまった主婦。夫が借りていたビデオを返しに、久しぶりに外出したビデオ屋さんで人懐こい笑顔に出会った。
したのペイルライダーの予兆のような作品です。すっからかんになって、時間だけが流れていく生活がの表現が好きでした。異空間のような空気で。淡くゆっくり、けれど若々しくてそんなおっとりした恋愛の様子もほほえましく、本当にぽっと温かくなる笑顔が浮かんできました。

>ペイルライダー:僕が自分の部屋で眠った後、お父さんとお母さんが小さい声で話をしているのが聞こえてきた――。いつも仕事で家にいない両親、夏休みだというのに家で一人でビデオを見る毎日。ぼんやりとした寂しさを抱える小学生の勇は、ある日かっこいいバイクにまたがったおばちゃんと出会う。
暖かなイメージ漂う今回の短編集ではちょっとだけ異色に感じられましたが、こんなお話も魅力的だと思います。ただ、現場を見てしまった彼の記憶という点においては、ちょっと苦々しいかなぁと思わずにはいられない…。私は見たくないなぁ。でも、第三者からの視点が必要だったのは理解できるので、苦しいところでしょうか。ちょっと気になってしまって。

>愛の泉:この小説の大団円。それ以上説明はいらないはず。NO.62■p363/集英社/07/07
2008年11月06日(木)

【読書記録】魚住直子「ピンクの神様」

魚住さんといえば児童書なのですが、一般書籍コーナーにおいてあったのでどうしてかなと思い、読んでみてわかりました。もっと広く、いろいろな人に読んでもらいたいという意図なのでしょう。

主人公は小学生から50代のおばさんまでいろいろな人が登場します。そんな中、どのお話でも心の動き方、そしてなによりもその表現がストレートで、最初はこの感覚に驚きと戸惑いを感じたのですが、読み終わる頃には気持ちを鷲づかみにされました。…感情をオブラートに包むことや説明文を提示する小説は案外多くて、そこから状況把握をして理解することは出来ても、感覚での共感は得られない。その点この小説では、「この感じ知っているな」と体感して、読み終わったときに「つかまえられたな…」と苦笑してしまうような感覚は久しく、とてもすばらしいと思いました。児童書作家を油断してはいけないのです。笑

さて具体的な内容に触れると、一番感情移入して読めたのが冒頭の『卒業』:高校を出て消防士としての仕事に勤しむ寿々。しかし、職場は女性が圧倒的に少なく、高校時代の友人は進学したためその環境で忙しく、孤独感が募る日々。さびしいと言葉に出さず、しょうがないんだと自分を言い聞かせがんばるものの、ある日かかってきた友達からの電話で寿々は状況を思い知る。
言いようのない孤独感。そのわりにそれを見せずにがんばろうと思う主人公の見えない焦りと焦燥感が痛いくらいにリアルでした。この主人公はどうやってここを打破するのだろう、そう思って読み進めてほっとしました。
他にも母親の世界での身の置き場、職場・学級での自分の立ち位置など、第三者から見れば些細なことかもしれないけど当事者にとってはこの上ない複雑な心境が、やわらかく的確にしっかりとつづられています。NO.61■p212/講談社/08/06
2008年11月03日(月)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン