【読書記録】島本理生「CHICAライフ」

non・noで掌編小説がシリーズ化しているかと思えば、ViViで島本さんがエッセイを書いている。そんな時代なのですねー。活字離れが進んでいるという記事を、新聞などで見て数年。最近では本という間接的なものではなく、教育について取りざたされていますね。
ViViというと、それこそきらびやかな女の子たちというのが読者イメージですが、島本さんのエッセイは素朴で、それこそ身近にいる女の子のような手触りのいいものでした。読んでいて意外だったのは、案外恋愛に対して積極的な人だったんだなぁというのと、写真写りについて。確かに島本さんの本ではあまり顔写真は見ないれど、一度だけ見た記憶があり、裏ではいろいろ思ってらっしゃったんだなぁと。恋人とのエピソードもたくさんあって、ビリーをやりきる女性は〜とか、同居人にめちゃくちゃストレートにいわれて傷ついたとか、実際にその事柄があった時はすごく思うところがある内容なのに、こうしてエッセイとして扱われることで、あははっと笑いに転換できる楽しさがありましたv
というか、ばらしたのは乙一さんだったのですね・・・!笑 小生物語で読んでいたので、作家合コンの話については乙一さん目線で見ていた話ですが、島本さん目線で見てなるほど納得。でも最後は丸く収まったことですし、振り返ってみると面白いエピソードだなあ。NO.76■p189/講談社/08/06
2008年12月21日(日)

【読書記録】「恋のトビラ」

まず最初に著者のリストを見て、それぞれ違うジャンルで活躍してる作家さんを引っ張ってきたような印象を受けて奥付けを見て、初出がnon・noということで納得した本でした。
そんなわけで、若干の先入観を持ちながら読んだのですが、予想外の拾い物をした感じ。以下感想です。
・嶽本野ばら
近年では、深田恭子さん主演で映画化された、あの作品のような作風が一部の女性の絶大な支持を持つ作家さんという認識だったのですが、読んでみると大正ロマンスのような雰囲気だった今回の掲載作品。思ったよりも読みづらさはなく、むしろ女性の心理にどきりとしました。
・島本理生
鋭い痛みや切なさの表現がとてもきれいな島本さん。ナラタージュのヒットもあって、ここでのご登場ということでしょうか。相変わらずの作風なので、これ以上書くこともありません。
・森絵都
児童小説の枠を飛び出した森絵都さんはどこに着地するのか。そう思いつつ最近はあまり読んでいなかったのですが、異色の着地地点と本の最後に収録されている意味に納得でした。ふふふと笑ってしまえる、そんな恋のトビラでした。

どの作家さんも短い中でもテーマに押されず、自分らしさを発揮しているので、一冊もよんだことないんだけど…!という方にも、ぜひお勧めしたいと思います。この本に載っている方は著作もそれなりにありますし、きっときっかけになるのではないでしょうか。NO.75■p132/集英社/08/05
2008年12月20日(土)

【読書記録】上大岡トメ「キッパリ!」 

はやった当時からこの本の存在は知っていましたが、手に取るのは初めて。とにかく「ちょっとがんばってみれば、いいことあるよ♪」みたいな本だと思っていて、まさにそんな感じですね!(^^)疲れたとか、気力がとかいいそうになったときに、ほんのちょっとだけ振り絞ってがんばるとがんばった自分によしよし!とにんまりできそうv下でいくつか内容をご紹介。

・メモ帳を持ち歩く
これは私も実際に実践してるのですが、いいと思います。やりたいこと、やらなきゃいけないこと、締め切りがあるもの、あるならばいつまでにやらなきゃいけないこと。それらがすっきりまとまるし、書いておけば後で見直したときにも気づくことができる。終わった!と思ったときに斜線をひく(私の場合ですが)のも楽しみですし、やっぱり何よりも頭の中をクリアに保てるので、お勧めです。メモ帳じゃなくても、手帳でもいいし、そこは自分の使いやすいものでうまく活用できればと思います。
・おひさまとともにおきる。
これもすごく気持ちはわかる!たしかにすがすがしい朝の空気と、早起きしたお得感ってすごく魅力的ですし、体にもいいし、三文どころかもっとお得なことだと思います…!私もがんばろーと思ったコラム。
・いつも車や電車で通り過ぎてしまう道を歩いてみる
私自身、散歩して知らない町を知ることが好きなので、これは大いに賛成!体にもいいし、歩いていいるうちに素敵なお店を見つけたり楽しいですv
・レジの人に「お願いします」という
ほんのちょっとの気遣い心遣いが人間関係を円滑に、快適に送るコツだと思うのです。たとえまったく面識のないレジの人でも、お願いしますの一言で変わるというのはわかるような気がしました。実際に私も図書館で本を借りるときは、お願いしますと一声かけています。合図の意味もあるけど、そういう一言があるとなんとなく雰囲気がよくなる気がしますv
・チェックリスト!
三段階のチェックリストが、項目ごとに設定されているのですが、見開きのコラムを読んだだけでは見えなかった応用の仕方がのっています。なるほど!と思うものも多々あると思いますし、まとめの意味以上に面白いリストなので、ぜひ見てほしいなーと思います♪

…と内容について書いてきましたが、一番書きたかったのは実は著者のプロフィール。素敵な経歴だと思います。というか、あまりに私がいろいろ聞いた覚えのあるものばかりが出てくるので、こんな人がいるものなのか…!とそれはもう心底驚きました。よくある、他人とは思えない!みたいな心境です。笑
NO.74■p173/幻冬社/04/07
2008年12月19日(金)

【読書記録】「怪談集 花月夜綺譚」

普段、時代物の小説をあまり読まないので、言葉の言い回しや独特の名詞に改めて日本文化素敵だなと思いました。
・・・すみません、読んでメモする前に本を返してしまって残しておいたのがこの一文だけでした。(--;)また機会があったら書きたいと思います。
NO.73■p250/集英社/04/08
2008年12月10日(水)

【読書記録】初野晴「退出ゲーム」

ストーリー:演劇部にいるマレン少年にぜひとも我が吹奏楽部へ入部してもらおうと努力するハルタ。しかし、マレンは楽器にまつわる思い出したくない思い出でもあるのか、高校生になってから楽器を手にしなくなっていた。演劇部部長の名越はマレンと仲がよく、彼をひきづられるように入れたものの、マレン自身は居場所が見つけられずにいた。そこで勃発した演劇部と吹奏楽部のマレン争奪戦。「マレンにまともな舞台のひとつもふませずに、演劇部をやめさせるわけにはいかない」という演劇部部長の名越と、「もともと彼が活躍できるのは吹奏楽無難だ」と言い張るハルタの間であたふたする千穂。そこで提案されたのが舞台上での勝負だった。内容は至極単純。「時間内に舞台から退出できればいい」だが、相手の退出を阻止すべく演劇部チームは奮闘。マレンは結局どうなるのか、そして彼の心にある思い出とは――。

図書館で背表紙を眺めていて、「あ!新刊が出したんだな〜」と気がついた初野さんの新刊。いつの間にか講談社ノベルスでも出していたのですね。
装丁について少し書くと、とても作り手の意気込みを感じるデザインになっていると思います。表紙の写真とフォントでイメージがある程度でき、裏表紙においても作者名とタイトルが真っ白な面に記載されています。バーコードの処理などにも気を配っている様子が感じられ、表裏で違った印象ながらも”2つの表紙”を作るという試みに強く感心しました。製作者側は違う意図だったのかもしれませんが、そのような装丁にも遊びを作って本を生かそうとする気持ちがすばらしいと思います。

さて短編連作で初の青春ミステリ、表題作は日本推理作家協会賞の候補作ということですが、私としては初野さんの作品は重くてねっとりした雰囲気が独特でよかっただけに、今回は雰囲気もキャラクターにも物足りなさを感じました。強気だけど頭の回転が速いわけでもない普通の女主人公と、美形なことを認識しつつも嫌味のない頭が切れる少年の組み合わせは、ミステリではだいぶ使い古されたコンビではないでしょうか。よって、これらキャラクターで「これは違うぞ!」という小説にさせるためには、それなりの工夫が必要だと思うのですが、毎回主に一人の新登場人物とそれに絡ませた謎解き、舞台は現代の高校、さらには”青春”と銘打っているだけあって、さらっとした雰囲気。・・・あのどろどろした重さはどこに…?とあっけにとられるのも仕方ないと思います。謎解きの際に出てくるバックグランドにおいて、それが入って暗く重いシーンもありましたが、ちょっと違うような感じを受けました。逆に言えば、「退出ゲーム」は、トリックも誰にでもわかる、知識が必要なものではない類のもので、わかったときには「一本とられたー!」と思えるようなスカッとした内容だったのが、協会にも認められたのではないかと推測できる内容でした。うーん…辛口に書くと、このままの雰囲気で続けえられるならば埋まってしまいそう。今後、どうするのかなぁ。NO.72■p261/角川書店/08/10

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ストックのメモは終了です!今後不定期になります。三日に一回更新で三ヶ月ほど。お付き合いありがとうございました〜♪
2008年12月06日(土)

【読書記録】豊島ミホ「エバーグリーン」

ストーリー:俺の歌は、この大空のむこうにいる誰かには届く。そう思って今日もあぜ道を緑の自転車で、歌いながら走った。こんな田舎で一生いきるなんてありえない!そう思って文化祭のために組んだバンドはついさっき消滅した。煮え切らない仲間にいらいらしていた俺の前に、その直後、一人の地味な少女が部屋に入ってきた――(シンサイド)教室で、きらきらしてる男の子を見つけた。彼は教室の隅で、ひっそり「何かして」いて、そんな彼を私もひっそり見つめていた。…見つめるだけだった。しかし、ある日偶然話すチャンスが舞い込む。目の前を急ぎ足で去る男子生徒と、なんとなく聞き覚えのある声に、私は緊張しながら扉を開けた――(アヤコサイド)

生々しさと、少女漫画のような夢の世界が入り混じって存在するのが豊島さんの作品なのかなと思いました。絵に描いたような少女漫画的な内容紹介となりましたが、このあとに待ち構えているのは”両思いでハッピー”という二人ではありません。シンという男子は、自己主張こそ強いけれども、どこか自信がもてなくていつも誰かに認めてほしいと思っている少年。アヤコは控えめで、クラスでも目立った存在ではなく、小さな地味な夢見る少女。こんな二人がお互いに抱く感情は恋心とは少し違っていて、そしてそこから時代が経過したとき彼らに残ったものというのも実にシビアだなと思わざるを得ない展開が待ち構えています。
夢見る少女が、現実を彼女なりに捉え、そして現在の自分を意識し、周りを意識した時出てきた感情と、その後の変化がとても印象的でした。豊島さんの作風だから成り立っているお話、と言えるかもしれません。シン君もシン君でなかなかにクセのあるキャラクター。美男子かといえば、そういうわけでもなく、特に目立つ何かがあるわけでもないけれど、アヤコとは違った意味での夢見る少年です。読んでいるときは、見ていてうざったくなってくるほどの「俺ね俺ね!」というキャラクターを感じましたが、同じテーマでまったく違う角度からみた少年少女を描いた作品だったのかもしれませんね。……豊島さんの最近の作品は、裏読みしはじめるときりがない気がする今日この頃でございます。NO.71■p267/双葉社/06/07
2008年12月03日(水)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン