【読書記録】浅倉卓弥「北緯四十三度の神話」

浅倉さんの新しい本が出版されたのを知って借りてきたのですが、1/3読み進めてもどういう方向に展開したいのか、ジャンルは何なのかなどの基本的なところがまったく見えてこなくて、序盤では姉妹での愛憎劇なのかとか、それとも実は家族愛のお話なのかなど推理しながら読み解くことになりました。結局のところ、姉妹の間の愛情とそれに伴う気持ちについてがテーマだったように感じましたが、すっきりしないなぁ…。NO.50■p227/文芸春秋/07/12


今年の目標冊数達成ー!とりあえず70冊を目指してみたいと思います。
2008年09月28日(日)

【読書記録】木下綾子「文房具さんぽ」

文房具の本を個人的にちょこちょこ借りてきて読んでいるのですが、とにかくとてもかわいい本だったので、メモにも取り上げたくなりました!
著者の本業は、イラストレーターということでそのイラストもさることながらオールカラーで100ページのとてもやわらかい内容は、次のページで何が扱われているのだろうとめくる手も楽しみで仕方がありませんでした。まるで小物雑貨のお店を巡っているようなわくわく感があり、タイトルにあるように文房具の紹介だけではなくて、たとえばこんなアイディアでこんなものができちゃうよ!っていう紹介とか、こんなエピソードがありましたとか、素敵なお店や絵本のようなお話までついていて、写真を見ているだけでもとても楽しめる一冊だと思いますvとにかくデザインがモダンで優しくてかわいいので、お好きな方はぜひ!アイディアもこれはいい!と思えるものがたくさんで、素敵でしたvNO.49■p95/世界文化社/07/10
2008年09月25日(木)

【読書記録】渡辺真由子「ネットいじめの真実」

普段は新着図書を見ないので、最近は新書などのまじめな本から離れ気味なのですが、手にとってうーむと思うところがあったのでご紹介。
私の年代は、ネット普及の余波を10代のころからじわじわと受けてきたティーンエイジャーの先駆けでした。高校生のときの携帯所持率もそれこそ全国平均を超えていたと思われますし、携帯の時代なんだなと感じずにはいられない時代でした。先ほど先駆けと書いたのは、このことも関係していて、ポケベルが落ち着いて携帯に移行した時期がちょうど私たちの時代です。だから、ネットいじめというのは私たちのもうちょっと後の世代の子達が受けた新種のいじめで、あとがきで著者も言うように、私もこんな面倒な時代に青春時代を送らずにすんでほっとしているとともに、じゃあこれって具体的にどんなものなの、と興味があったのでした。
構成がとてもしっかりしていて、まずはネットとはどんなものかの説明から始まり、それにかかわる子供たちの今、そして実例や被害者の声を交えつつ、現在の不調やメディア・教育などの立場からも考え、そして最後にまとめ。この本で感心したのは、情報の新鮮度。なんといっても出版が2008年7月で、読んでいるのが翌月の8月。一ヶ月たたずに読んでいるため、中であげられた事件は「ああ、あの事件…!」と思い出すことができ、現代の捕らえ方がとてもリアリティのあるものとしてみることができる一冊でした。
携帯メールの返信が5分遅れたら仲間はずれ…、本当にそんなバカな!と思うような子供のルールがあって、私とあまり年齢も違わない同じような世代の子供なのに、なんと稚拙なのだろうと嘆かわしい…。そんなことをする加害者、つまりいじめる側の心の問題などにも触れられていて、そしてそれを律することができない大人の像も描かれていて、日本という国は大人の水準が本当に下がったのだなと感じました。
ネットいじめとは、結局のところ”いじめ”の一種であり、携帯電話があろうがなかろうが存在する、という一説にああなるほど、と思い(携帯電話を介するいじめは、私の捉え方ではとても特殊なものというくくり方だったので、根本的ないじめという形を想起させる内容にはっとしたり。)、後半でしっかりととりあげられている性的な被害については本当になんともいえないいやな気持ちにさせられました。確かに今の世間いついては、少し考え直す必要があると思います。もっと知的な笑いがあってもいいと思うし、むしろそれを引っ張りあげてあげられるだけの大衆も必要だと思う。
と、基本テーマはネット、特に携帯電話を用いたインターネットによるいじめなのですが、いろいろな面でさまざまなことを考えさせられました。ぜひ多くの人に現代を読み解く上で、考えてほしいと思います。NO.48■p223/ミネルヴァ書房/08/07
2008年09月22日(月)

【読書記録】島本理生「クローバー」

ストーリー:男女の双子で顔がそっくりな冬治と華子。わがままで男性の存在は常にある華子に振り回されつつすごす大学生ライフ。あるときは華子が連れてきたイケメン、また熊のような男性が冬治の前に現れ、彼は彼で同じ学科のちょっと苦手な女の子と知り合うようになる。大学生活が終わるころ、冬治はどんな道を歩んでいるのだろうか。

読んでいて、とても楽しかった一冊でした。個人的な話ではありますが、最近は読書がひとつの作業と化していたので面白いことには面白いのですが、こころからほぉっと思うことがなくなっていたのも確かで、この短編連作形式で進むお話は適度な余裕を持たせながらも体にフィットした洋服のように心地よく読めました。
さて、内容ですが基本的にいっぺんにつき一人の新登場人物が出てきます。新たにではなくても、サブキャラクターとして扱われていたキャラにスポットを当てて進んでいたりして、人脈の広がり方に感心しました。とても自然に(…華子の場合、この言い方は少し当てはまらないけれど)いろいろな、今まで赤の他人だった人が面識を持ち双子の家で食卓を囲んでいたりする、そんなシーンが好きでした。他にも、大学生ってこんな感じだよねと深くうなずいたり、考えたり、なるほどと思ったり…とても楽しかったです。あまりにも似たような境遇の人が回りにいたりして、この等身大さと冬治君の生真面目さがすごく素敵な一冊です。学生生活を思い出したくなったら読み返したい本。NO.47■p259/角川書店/07/11
2008年09月19日(金)

【読書記録】森博嗣「クレィドゥ・ザ・スカイ」

混乱。今までのスカイクロラの終着点がこの一冊、という捕らえ方なのでしょうか。どこまで読み進めても自分が誰なのか認識しない主人公となんとなく今まで見知ってきた登場人物たち。そんな中で、主人公の僕が考えるのは、やっぱり空のことだけで、戦争の意味やキルドレの存在、大人については考えてはみても無関心。本当は、読み手である私たちがこういうことについて考えるべきなのかもしれませんが、私はただ純粋にキルドレの僕の感覚を味わってきて、そしてこの巻もそれで終わらせようと思います。不思議な世界観をありがとうございました。あとは番外編を残すのみかな。NO.46■p313/中央公論新社/07/06
2008年09月16日(火)

【読書記録】恩田陸「木洩れ日に泳ぐ魚」

ストーリー:これはある男女の話しでもあり、ある一枚の写真についての話でもある、そして別離の話でも――。キッチンで向かい合う一組の男女が、お互いに今夜けりをつけようと決意して望んだ一夜。しかし、話を進めてみると、意外な事がわかる。記憶の相違と事実、そして推察から生まれたその話の結論とは。

さくっと読もうと思って借りてきた一冊でしたが、恩田さんはストーリーの起点から作っていくタイプなんだろうなぁというのを感じる一冊でした。背景事情が必要なのはわかりますが、半ばでどこまで話が脱線するのかなぁとぼんやり感じる場面もあり、構成としてはいまいちなんじゃ…と思わずにはいられませんでした。展開も定着してない感があるし、もっとしっかり練ればこれは!という一冊になるような気もするだけに、やや残念。ただ、最後の最後で見せた黒い落ちはなーるほどなぁと思いました。みんないい人だなんていうのは知らないから思えること。NO.45■p263/中央公論新社/0707

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22222hitまであとちょっと・・・!(*^▽^*)
2008年09月13日(土)

【読書記録】豊島ミホ「青空チェリー」

豊島ミホのデビュー作含む3編が収録――。女による女のためのR-18小説の読者賞でデビューした著者。すでに既刊を読んでいるのですが、原点はこんな感じだったんだなぁと思うところが強かったです。表題作の青空チェリーは、神田川デイズのピンク映画を撮ろうというお話を彷彿と。冒頭に出した、『ハニィ、空がけてるよ』を私はお勧めしたく、このメモを書いてます。
ストーリー:大学教授と付き合っている主人公は、ある日突然彼から帰郷するように半ば強制的に言い渡される。それが戦時下にある国家で彼にできる唯一で、彼女は従って自分の田舎で夏をすごす。何もない地元でふいに出会った元同級生の男子となんとなく日々を送りながらも、教授のことが心配で日々はがきを送るのだが――。
私が読んだのは単行本の方で、巻末のあとがきにはこの作品には(特に)加筆・修正を行ったとありました。それだけずっしりと重みのある言葉になっているし、現代の戦時中という親近感のない設定にもかかわらずぞくりとするところがところどころありました。かなづちをもったシーン、はがきを買いにいったシーン、カードに気がついたシーン…。その一方で、ダーリンの気が抜けるほどの優しさと間の抜けた脱力感がとても心地よくて、そしてやはり本気で恋愛をしていた教授に対する気持ちなどの描写も丁寧で、とてもずきずきしながら読めた作品でした。うん、豊島さんの作品だと断トツで『檸檬のころ』がお勧めでしたが、今度からは一緒にお勧めしたいと思います。NO.44■p232/新潮文庫/05/08
2008年09月10日(水)

【読書記録】森博嗣「ダウン・ツ・ヘブン」

時系列からすると、前作の後です。水素が「生きるって何だろう、大人って…」とぼんやり思いながらも、飛行機に乗ることが最優先事項の日々。いつの間にかトップエースになった草薙には、世の中や時の流れがいやおうなく身に降りかかる。
エピソード的には前かもしれませんが、「可哀相じゃない!」のセリフが印象的でした。映画でもこのシーンは起用されているのですが、ここまで読むとキルドレの心理が少しずつ見えてくるので、尊い何かを持った彼らの姿が好きでした。NO.43■p317/中央公論社/0506
2008年09月07日(日)

【読書記録】重松清「きよしこ」

これは重松さん自身のお話でもあり、吃音というしゃべるのにつえてしまう子供が主人公のお話。
表題作のきよしこ。本当にほんとうに、クリスマスにほしかったのは、ね。発音をつまらせてしまうのが怖くて口に出せないもどかしさ、わかってほしいと願う気持ち。私は体感できなくても、そこから見える気持ちはとてもはっきり伝わってきて、読めてよかったなぁと思います。

こんなとき、こんな風に感じているのだなと思うようなシーンではとても考えさせられるものがあったりして、一度考えてみてほしい。そんな一冊でした。NO.42■p253/新潮社/02/11
2008年09月04日(木)

【読書記録】吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

ストーリー:仕事をうしなって、新しい町で映画を見に行く毎日の大里君。そんな時、町のみんなが持っている「3」というマークの入った袋を目にする。気になって大家さんのマダムにたずねると、それはおいしいサンドウィッチ屋さんだということ。気になってそのサンドウィッチ屋さんへいってみたオーリィ君のお話。

装丁や中身のデザインが素敵なのはいつものことなのですが、おしゃれな雑貨のような吉田さんの本。中身もすごくふわんとしていて、まるで絵本を読んでいるような暖かい心地がします。この点は、私が最初に読んだ著者の本「つむじ風食堂の夜」と似ているのですが、あちらが夜verならば、こちらは昼verといったイメージ。いっぺんにひとつ出てくるページ隅のイラストもすごく愛らしくて、素敵です。だけど、そんなふわふわしたお話の中にも、家庭の事情だったりが含まれていて、甘いだけの小説ではなくて。サンドウィッチにスープに、とにかく読んでいて食指を動かされる小説です。おいしそう…!笑 NO.41■暮らしの手帳社
2008年09月01日(月)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン