【読書記録】乙一「失はれる物語」 |
映画化された「傷」がどうしても思い出せなかったので再読。改めてタイトルを見ると、かなりの数が映像化されているのがわかります。 作品はとてもやわらかい感じのものが多く読みやすくていいのですが、たった数ページのあとがきに詰まったライトノベルに対する思いがとても印象的でした。 個人的に好きなのは、『しあわせは子猫のかたち』と『失はれる物語』。『Calling You』と『しあわせ〜』は流れからするととても似ていると思うのですが、子猫の描写とエピローグのよさでは『しあわせ〜』が活力や希望を与えてくれていて好きでした。『失はれる物語』は、以前読んだときの私の脳内イメージは真っ暗で、最後があのような展開なのでどこか悲しくて哀愁がある印象が残っていたのですが、今回は感覚だけになった主人公に残されたものはもっと色鮮やかな世界だったのではないかなぁという風に受け取れて、興味深く読めました。『手を握る〜』はまさに乙一さんのシュールな感じが出ているのが楽しく、ただ書き下ろしの『マリアの指』は個人的にはなんともいえない感じ。「人は変われない」それって重いテーマじゃないかなぁと個人的には思うのです。結局あの人はその後どうやって生きていくのかを考えると、とても重たい気持ちになる。世の中って不公平で、生まれてくる環境は選べないけれど、もう少し…。だけどあとがきからもわかるように、楽しく読めることがこれらの作品の最大の目的なのだろう、と思う。NO.011■p301/角川書店/03/11
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2008年04月27日(日)
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