【読書記録】橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」

ストーリー:まだ二十代なのに将来に不安を抱えつつも、突然教主さまと呼ばれる10歳の少女を預かることになってしまった智佳子。新しい同居人の彩乃ちゃんとは仲良く生活するようになるが、恋人との関係が倦怠的だったことを自覚して愕然となった矢先、智佳子は不思議な偶然に出会うことになる。(『夜散歩』より)

要は彩乃ちゃんはそういう人物なのですが、彼女の存在が『夜散歩』ではとても小さく暖かくぽっとともった蝋燭の光のような感じで、心地よく読めました。普通の日常なのになんだかわくわくしてくるような、そんな魅力がある作品をかけるのが橋本さんなのだと思います。3つの短編からなるお話ですが、どれもとても読みやすく特に『夏花火』では、小学生の大人への憧れ、そして子供だからこそのつながり方をよく捉えてらっしゃるなぁと感心しました。橋本さんの著書は中高生主人公が多いようなイメージですが、小学校高学年の子たちの恋愛とは違った物語りを書かれたら面白そうだなと思いました。NO.008■p195/講談社07/10
2008年03月30日(日)

【読書記録】「LOVEorLIKE」

石田衣良/中田永一/中村航/本多孝好/真伏修三/山本幸久、以上6人によるアンソロジー。私自身アンソロジーはとても好きなので、とにかく手にとっていますが、今回ばかりは中田さんの作品が掲載されているという事で大いに期待しながら借りてきました。それでは、それぞれの感想を。
・石田さんは、彼らしい軽いテイストで乗せてぐさりと刺す、そんなイメージの作品。それにしてもマダム…何者だったのやら。(汗)
・中田さんはやはり『百瀬〜』で評価されての再登場らしく、期待して読んだところ、期待以上の作品になっていて、私としてはこのアンソロジーの中で一番好きなお話でした。中田さんの小説はとにかく間の取り方が絶妙で、じわじわとやってくるイメージ。シリアスかと思えば、ふっと肩の力を抜いた文章に転換しているのも特徴的だと思います。
・中村さん。実はこの作品、読んだ事がありましてあれ?と思いつつ読むことになりました。あまりこの方の著作は読んでいないのですが、偶然の一致ということでしょうね。遊び心と楽しんで書かれている感じが伝わってくるまさに「ハミング」のような作品。作品名:ハミングライフ
・本多さんは、過去と現在のいり混ぜ方がよくて、あとで「ああ、この人物はこうだから…えっとどうなっていたんだっけ?」とページを戻る楽しみがある作品でした。
・真伏さんは、本作からエンターテイメント小説界にデビューらしく、唯一著書を読んだことのない作家さんでした。わりと淡々とした流れの中に小さな心の動きがあって、作風はもう出来ているのだなぁと感じました。今後どのように展開されるのか気になるところです。
・山本さん。中盤までかなりさわやかな恋愛小説なのかな〜と思いつつ読んでいたのですが、インパクトという面ではこの作品が一番印象的でした。なんというか…青春時代のどうしても自分ではどうにも出来ない感情と関係と環境と…そういう事が香水のようにほんのり空気中に漂っていて、このような作風はわりと好きなのでした。

以上からも察していただけるかと思いますが、とても満足度の高い内容になっておりました。全体的にテーマである『LOVE or LIKE』が強烈に効いていて!とても凝った使われ方をしていて、どの作品もそれぞれにすごくいいなと思いました。NO.007■p327/祥伝社/06/07
2008年03月23日(日)

【読書記録】吉田篤弘「空ばかり見ていた」

ストーリー:近所の床屋の店主・ホクトさんは、普通の大人とはちょっと違っていて、無口なのに何かとても面白い人だった。僕が小さいころの思い出と、理髪師・ホクトのお話。(『七つの鋏』より)

ホクトさんでつながる12のお話。個人的には「ローストチキン・ダイアリー」や「草原の向こうの神様」「リトルファンファーレ」がお気に入り。ファンタジックでまるで異次元でのお話のような作風がとても気に入っているのですが、草原の向こう〜はまさにファンタジーでこの本の中でも異色・違う風が吹いておりました。笑 でも、ローストチキン〜はとても地に足が着いたお父さんと娘のお話で、ほんわか暖かくなるような作風にとても癒され、リトルファンファーレでのホクトさんについては人間味のあるお話が提示されていて、嬉しかったですv次はどんなテーマなのかも気になります。NO.006■p317/文芸春秋/06/01
2008年03月16日(日)

【読書記録】「極上掌編小説」

NO.005■p304/角川書店/06/10
どの角度から見ても赤い珍しい装丁が目を引く、30人の作家による掌編小説。現代小説を読むようになって5年はたつけれど、まだ半分程度の方しかお名前を知らなかったのはジャンル的な問題もあると思う。著者たちは何かしらの賞を受賞するなどしており、おお!っと思うようなバラエティ豊かな顔ぶれと作風。短いものは見開き2p、長くても10p程度だろうか。とても読みやすく、作家の作風を感じるには面白い一冊になっていると思う。
今まで読んできてまさにらしい作風だと思ったのが石田、歌野、大崎、重松。(敬称略)石田氏は現代の捉え方、歌野氏は起床転結の運び、大崎氏はほんわか穏やかなのにどこかわくわくする雰囲気、重松氏は人間の情のよさを、それぞれ発揮しているなと感じた。

>作風が気になって、ほかの著書も読みたくなった著者は以下。
佐伯一麦さんは、とても目の前の情景描写がありありと浮かぶ文章が
佐野洋さんは、落とし方がわりと好みで
高橋源一郎さんのシュールな落ちから興味がわき
橋本治さんはリズムがよくて、普段からこういう作風なのか気になり
古川日出男さんは、ベルカ〜の作者で発想が面白い!
吉田篤弘さんも発想と世界観・空気がきれいだなぁと。

佐伯さんは今になってじわじわと世界観が理解できるようになってきたよう感じたので、今後また読んでみたいと思います。
もともとは吉田さんの著書を探していてたどり着いたこの一冊でしたが、吉田さんの著作はもとより、全体的にきゅっとまとまっていて、ちょこちょこ読むのが苦ではない方にはお勧めです。

--------以下アルファ事項
チャット終了しました!文字チャットのレンタルルームは、重かったり動作があやしいところが多く、絵チャを引っ張り出してきたので、もしかしたら少しどっきりされた方(もしくはいやな思い?)もいらっしゃるかなぁと後になって気がつきまして、お詫び申し上げます。とりあえず、季節のお休みごとにチャットをしたいなぁという思いはあるので、また夏ごろにでもお話できればと思います。…そういえば、お勧めの本とかもよかったら教えてください。最近本当にあまり開拓していなくて、この本をよんであららららと思いまして;拍手おいておくので、ご利用くださいませ。
2008年03月09日(日)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン