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2008年11月08日(土) |
Factroy73 tell me how does it feel(樺地/跡部) |
二人で抱き合ってそのままじっとしている。布越しの体温が掌に伝わる。跡部さんの身体に下敷きにされた腕が重い。熱さと重みでしびれる寸前に、跡部さんがなぁ樺地と囁く。 あのな 跡部さんの眉根にしわが寄る。 俺たち 言葉を区切る。跡部さんがすうすうとすったりはいたりする息が俺の口に吹きつける。 とりあえず脱ぐべきじゃないか ちょっと間俺はぽかんとして、それが跡部さんにも伝わり、あの人の顔は赤くなり、もごもごと口の中で何か呟く。ますます眉と眉の間のしわが深くなり、俺は一度やってみたかったこと、指の腹で眉と眉の間をなでてしわを伸ばす。 な・・・んだよ、バカ そんなとこ触んな、と跡部さんが腕の中から転がり出た。 おまえなぁ 身体を起こした跡部さんと、ベッドの上で向かい合う。跡部さんはむすっとした顔で俺をにらみつけていたが、そのうちため息を吐き、やっぱりだめだ、と呟く。 なにがだめなの? だから・・・ 跡部さんは目を伏せる。 樺地、お前本当に分かってるのか? なにを、と目で語りかけると、だからさぁ、と跡部さんは声を荒げる。 これからやること おれたちはあいしあうんだ 俺が言うと、跡部さんはうっと声をつまらせ、そうだな、うんとどうしてか気まずそうな顔をする。 わかってるなら・・・いいんだ 俺は跡部さんににじり寄る。跡部さんはいったん後ろに身を引き、でも思い直したようにその場に留まる。 おまえさ 頬に触れるとびっくりするぐらい大きな声で跡部さんが言った。 こういうこと、全然慣れてないだろう 俺がうなづくと、だろうな、と跡部さんは言う。 別にお前が慣れてなくても、なんか失敗しても、俺は全然気にしないからな、樺地 ウス 笑ったりしねぇから ウス だから、お前も笑ったりするなよ 跡部さんはまだ何か言い足りなそうだったが、俺は言うべき答えををそのまま唇に返したので、何も言わなくなった。 毎朝、素早く着替えられる制服も、人のものとなると脱がせるのはとても難しい。ボタンを一つはずすたび、跡部さんの喉仏が上下する。口づけすると跡部さんは甘い息を吐く。裸の胸に手を滑らせるとくすくすと笑い声を上げる。ごつごつしてでこぼこしているはずの身体がぴったりと貝のように合うのが不思議だ。暗い中、跡部さんの瞳は遠い岬に立つ灯台の光のように輝き、俺は迷うことなくこの人を求めることができる。 跡部さんの息遣いが浅く早くなるので、くるしくないですか、と聞いた。 そんなこと聞くな 眉間のしわが深くなる。 聞かなくても・・・分かれよ、樺地 俺は返事をして、跡部さんの眉間の結び目がほどけるようにそこにキスをした。くすぐったい、と跡部さんは不満げに呟く。それがこの夜、俺たちが言葉で交わした最後の会話になる。目と目、腕と腕、触れる肌で跡部さんを感じる。跡部さんも同じことをする。目に見えず、かたちもない、あたたかくておおきな想いを、そうやって感じ取るんだ。 だからこれは、とても必要。
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