「何故?」
ひどく難しい事を聞かれたような気がして黙り込む。
何故?そう何故なんだろう。 あなたの言葉を認めたくなく、 あなたの主張を否定したく、 あなたの優しさに吐きげがし、
時々、 あなたのそのすました顔が 崩れてしまえばいいと思うのは。
「多分」
そう、多分だ。自分の気持ちは何より分からないから。
「あなたが嫌いなんだと思います」
そう、とあなたは言った。
「でもそれは理論的ではないね」
自分の中をまた時々過ぎる感情で支配される。 それを理論的に話すには、私は無学だ。
「すべての理論は感情で駆逐できます」 「情熱的な事だけど、その感情につける名前位は理解しておきたいね」
私はこの人を『嫌い』と言った。 私はその気持ちととても似た感情がもう1つある事を知っている。 知っていると、認めて言っているんだから赦されると思う。
あぁ、 こんな風に感情が理論を追いやって行く。
「私はあなたが嫌いですよ」
言葉は口に出した瞬間に、私の所有権から離れる。 どこか遠くで同じ言葉が返されるのを、 私は待って、 泣くのだろう。
誰かから守ってもらおうとする前に 命懸けで守れる誰かを作れればいい
あんまり澄んでいたものだから 底が分からなくて 気が付いたら沈んでいた
見上げると澄んだ水は 全てを透して 地上の全てを僕に美しく見せた
けれど このまま空を見上げるだけで 生きて行くには まだ重さが足りないようで 宙ぶらりんな身体を いつしか水はまた押し上げて行く
美しい世界を垣間見せて その中へ
自分がこの世にいるのは 父と母がこの世にいたからで その父と母がこの世にいるのは 父の父と母が 母の父と母がいたからで
そんな風に辿って行くと 自分が今ここにいるのは 何百何千というヒトがいた事の証明なんだと分かる
会った事のないそのヒト達は 私と同じ歳の時 何を考え 何を夢見たのだろう その果てに 私がいる事など思わなかっただろう彼らに
何だかとても 今 会いたくなった
私はあなたを見る
あなたから見た私を 私は知らないけど 私から見たあなたを
いつも怒っているような顔をしていることや ちょっとした事で瞳が揺れること 傷つかないように結ばれた唇 だけど伸ばされる手 その冷たい指先 全てをどれだけ愛していたかを あなたに伝える為に
私はあなたを見つめ続ける
※今年も年が明けました。一夜明けて何かが変わる訳では ありませんが、区切りとして一年はちょうどいい長さかもしれません。 今年もご挨拶できて嬉しいです。よい一年をお過ごし下さい。
翠
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