気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
今週の一言:近藤さんって、未だ未知数なんだよなー。
これで『愛でる会』編終了です。一週間くらいでケリがつく話、いいなー。こんくらいが楽。来週一週間くらいなんもやらんでもいいかもなー。 田中学院 大学部2年 岡崎秀介。 春季が気づいたのはベッドの上だった。 「おー、気づいたな。おい、大丈夫か? 自分のこと分かるか?」 そう声を掛けるのは上田明。ここが高等部の保健室ということがわかる。 「なんで?上田先生?」 「体育館裏からならここの方が近いから」 秀介もカーテンから顔をのぞかせた。 「ええーと、何だっけ? どうして俺寝てたんだっけ?」 「それより、ごめんな、春季」 「はあ? なんで秀介が謝るんだ?」 「いや、待ち合わせしていることすっかり忘れていたから」 「そういえば秀介、お前......大丈夫だな。それどころか......」 「うん、だから今日は屯田軒で好きなの食べろ。一杯分だけおごってやる。いいですよね? 上田先生」 「まあ中野くんなら大丈夫だね。それよりも、君に麻酔薬が効くなんて驚きだよ」 「ああ、なんかゾウに使うやつらしいです」 「なるほどねー」 『愛でる会』の気配はウソのように消えていた。あの腕を折ってしまったメンバーの一人に伝えたのは、東可奈の封印を解くことのみだ。彼女のことだから何らかの方法で自力で封印を解いたかもしれないが。それ以外はやってもらうことが出来ない。せいぜいもう付きまとうのはやめろとしか言えなかった。それも目的を果たしたのだから必要なくなった。 『今まで甘えた分のツケが俺にきたわけだ』 「どした?」 「なんでもなーい」 屯田軒へ向かい、愛想のいい店主に「秀ちゃん、今日は顔色いいね!」などと言われる。この店主は田学のほとんどの生徒を把握しているんじゃないかと時々思うが詮索しない事にしている。 「おやじ、チャーシュー麺味噌大盛りで替え玉大盛り3つ用意してくれ」 「おやじ、その大盛りのみ俺の勘定に入れて、替え玉3つは春季の勘定にしてくれ。ちなみに俺はチャーシュー麺醤油で」 「はいよー」 その夜は良介と兄にケーキを買って行った。さすがに部屋で養生しているかと思ったが、じいさんの稽古を見ていたという。なので夕飯後に部屋へ持って行った。 「あれ? 秀兄」 察しの良い良介はすぐに気づいた。だから、いつも助けられている。 「これ可奈ちゃんオススメカフェ店のケーキ」 「ありがとう。へえー今度綾名と行ってみようかな」 「おう、女の子が好きそうなかわいい店だった」 「そう。可奈ちゃんと一緒に行って来たんだ」 「まあ、中学生が一人で入れるような店じゃないから......。ほら、兄妹ってことなら」 「そうだよね。それにしても秀兄、どうするの?」 そうだ、この弟は気づいている。 「もちろん、尻拭いは自分でやるよ」 そして兄にも顔を見せる。その夜夜遅く帰ってきたので、待っていた。この兄は自分で気づかない振りをして、ちゃんとわかっているクセ者だった。 「お帰り、兄貴」 「おう、秀、珍しい。どうした?」 「ケーキ買って来た」 「ますます、なんかあったのか?」 「うん、まあ、お祝い。お裾分けみたいなもん」 「お前、かわいい店とか好きだよなぁ」 「明日、理事長と話すよ」 「......そうか」 「じゃ、お休み」 部屋を出る前に、優介は『今度兄弟三人で久しぶりにバカやりに行くか』と誘った。 翌朝、理事長に会った。 「すみません、朝早くに」 「岡崎秀介くん、上田先生から聞いたよ」 「はい、実はお願いがありまして」 「なんだね?」 「まずは、野田晴仁が受けている依頼『“愛でる会”メンバーの割り出す』というのを取り消してください。捜査費料等は俺が立て替えます。そして俺が引き継ぎます」 「つまり、シンクタンクに復帰するということかな?」 「ええ、それを許してくれるなら」 「そうか。なら野田くんから直接引き継いでくれ。野田くんもしっぽを掴んでいるらしいが確証できないって言って教えてくれないんだよ」 『真面目過ぎだよね、彼』と理事長は苦笑いをする。しかし彼が窓口となっているのはその慎重さゆえである。 「わかりました、理事長。ありがとうございます」 「ところで、どうやって戻れたの?」 「みんなのお陰です。特に『愛でる会』のお陰なので、お礼をしないと。自分が撒いているタネなので、自分が摘み取ります」 秀介はそう言って、笑顔を見せた。それはさわやかにも見える。 「そうかい。お帰り、岡崎くん」 「はい、また、お願いします」
今日は一日お出かけしていたのですが、帰ってニュースつけたら山が噴火していた。なんだろう、これだけで世の中が浦島太郎状態。 ??? ??? ???? 岡崎秀介を愛でる会の一人である。ある目的のために動いていた。そのために、あまり干渉したくないのだが、中野春季を麻酔吹き矢で見事命中させ倒した。秀介が春季に駆け寄った。 「おい、春季、しっかりしろ」 意識のない春季を抱き起し、頬を叩いたりしていたが春季は起きない。 『当たり前だ。いろいろ実験してやっと象でも効くレベルの麻酔が必要ってわかったんだ』と思う。続けて『人間じゃねー』とも。ちょっとやそっとではまず起きない昏倒状態であることを把握した秀介は枕代わりに鞄を春季の頭の下に入れた。 「そこにいることはわかってんだ」 間違いなく自分に向かって秀介は言っているんだと理解した。それを嬉しく思うのはやはり岡崎秀介に並みならぬ執着があるからだ。 「人の弟を階段から突き落として、いたいけな女の子の魔力を封じ込めて、努力しているの男の子に風邪をひかせて、あげくの果てにほぼ動物並みの友人を行動不能にするなんて、シンクタンクよりもすごいじゃないか」 『いや、野田晴仁は偶然』いいタイミング過ぎて他メンバーがそうさせたのではないか、と思ったくらいだった。一応確認したが、たまたま風邪を引いたらしい。 「いいかげん姿を現して目的を教えろ。出なきゃこっちから引きずりだしてやる!」 うまく気配を消して隠れているつもりだが、秀介は正確にこちらに向かっていた。思わず逃げようとしたところで腕を捕まえられ、そして天地がひっくり返った。 「アンタ、何者だ?」 「名乗るほどのものじゃありません」 顔は目出し帽で隠している。その体型もわかりづらくしている。声もボイスチェンジャーを使用している。あまりの装備で秀介はやや呆れたように見つめた。 「愛でる会のメンバーか?」 「……はい」 「目的はなんだ? 答えなきゃもう一回ひっくり返るか腕が折れるか」 『ぜひとも、そうしてもらいたい』と言いそうになるが、目的が果たせそうなのでこらえた。 「我々の目的はアナタ様復帰です」 そう答えると秀介はぽかんとした。 「アナタ様が気力を無くして心配だったのです。我々は影からしか見守ることができませんでした。でもあまりにも長引くのでとうとう、アナタ様の弟様、ご友人様かたがたに手を下してしまったのです。野田晴仁は偶然です。我々は何もしてません」 「ふうん」 「どうしても我々は元気なアナタ様を取り戻したかった。メンバーの中にはアンニュイなアナタ様も素敵だという方もいましたが……」 急に視界が回った。天地がひっくり返った。そして腕が嫌な音を発した。 「だからって、やっていいことと悪いことがあるだろうがっ!」 後に他メンバーから羨望のまなざしを受けることになった。『岡崎秀介を愛でる会』は一応目的を果たすことになった。
ありのまま、心向くままに書いているのが、田中学院です。 田中学院 大学部2年 中野春季。 その日、春季は昼休みに野田晴仁が早退したと冬季から聞いた。なんでも風邪らしい。急に体調を崩し、午前中には学校を出たという。その他にも珍しく魔女が体調不良で休みとなった。 「ふうん」 今朝、秀介からは弟が昨日階段から落ちたと聞いた。「足滑らしたって、馬鹿だよなー」とか言っていたが秀介も春季もそんなこと信じてはいない。お互いなんとなく承知していた。 こうも次々周りが、秀介の周りが欠席となるのはやはり『愛でる会』なのだと思う。『愛でる会』がこうも干渉してきたのは2年前くらいからだった。そして、絶対姿を見せない。 そもそも姿を見せない『愛でる会』がなぜ岡崎秀介を狙うのを知っているのか、誰が発端で言い始めたのかも不明だった。そこは野田晴仁が押さえているだろう。しかしメンバーは一人もつかめていない。晴仁も、確証がない限り伝えることはできないと伝えている。 春季は警戒していた。もはや彼を守れる者は自分しかいないだろう、という時点に到達している。この日の下校時刻、玄関先で待っていると、声をかけられた。 「ちょっと春季?」 呼んだのは田中玲子である。この学院の理事長の娘にして大学部2年である。彼女はとても惚れっぽいことで有名で、今のお目当ては年下らしいと噂が広まっている。 「呼んだ?」 「はあ?」 「はあ、じゃない、呼んだ?」 「呼んでない」 「やっぱり。おかしいと思った。秀介もだけどアンタら最近おかしいわよ」 「おかしな連中に付きまとわれているからな」 「おかしな連中って、アレ? なんかキモい集団のこと?」 「なんでお前が知ってんだ?」 「これでも理事長の娘だもの。それにあれなら放っておいてもいいかも」 「なんでだよ?」 「まあ、恋する女の気持ちが理解できないアンタにはわかんないかもね」 じゃあねぇ、と玲子は立ち去った。 しばらくその場に立ち尽くす。しかし待ち合わせている秀介は現れない。玲子を使い、時間稼ぎされたのだと思った。ついに『愛でる会』が動いたのだと思った。急いで外に出て秀介を探したがどこにもいない。日も落ちる頃に体育館裏で一人たたずむ秀介を見つけた。 「秀介!」 「春季……」 「どうしてこんなところに?」 「うん、やっぱりというか騙された」 「騙されたって……」 「よけろっ! 春季!」 何か首筋に刺さった。それから春季の意識が遠のく。秀介が何か言っているが耳に届かなかった。
まだそこにいたっていない。 田中学院 中等部2年 高山貴乃。オカルト研究部所属である。その日、可奈から今日の活動が中止となったことを知らされた。もともと休んでばかりいる部活だったので今更だが、可奈の機嫌が悪いので理由を聞いた。 「部長が怪我をしたの。階段から突き落とされて」 風が吹けば桶屋がもうかるという諺があるが、それは貴乃にも言えることだった。 「それってもしかしてっ……!」 可奈が人差し指を貴乃の口元に押し当てた。 「そうよ。部長を亡きものにしてガードを削っているのよ」 「いや、部長、生きてるでしょ」 「冗談よ。でも、敵も侮れないわ」 「じゃあ、もしかして野田くんも?」 「狙われるかもね。てか、また式神使っているの?」 「ちょ、ちょっとだけ。ほんと、ちょっとだけ」 「野田くんだって……そのうちバレるわよ」 野田晴仁がシンクタンクということは知っている。シンクタンクの活動内容は極秘扱いだが、彼女は式神を用いて少しだけ知っていた。部長、岡崎良介の兄、秀介がよくわからない『愛でる会』に付け回されていることを。 「それに野田くんには中野くんがいるから大丈夫よ、多分」 「それはそれで妬ける」 「男子に嫉妬してどうするのよ。あと式神使ってストーカー行為も禁止」 「自分だって使い魔いるくせに」 「あれは使い魔が勝手にやってることだもの。今日はとにかく帰りましょ」 貴乃も感じている。彼女が秀介のことが好きなことと中野春季に妬いていること。似たもの同士である。 そして可奈は貴乃の良き理解者だった。神社の家に生まれ、たまたま式神を操ることが出来たために幼いころから家業で夜な夜なゴーストバスター的なことをやらされていた。ある夜、ピンチの時に助けてくれたのは可奈だった。それ以来、彼女とは良き友として一緒に行動することになった。中等部に入った時に必ず何かの部活に入らなければならない時、どの部にも可奈が馴染めないでいたところに、岡崎良介と当時の部長、浜西紀夫が現れた。オカルト研究部という怪しげな部活があるんだと当初は思ったが、可奈はそれを初見で気に入り、その部に入部、仕方がなく貴乃も一緒に入部した。どう見てもちゃらんぽらんな部活だったが、入部一ヶ月後に良介から、オカルト研究部の真の目的を聞き、現在に至る。まだ解決出来そうもないが、普段は居心地がいいため用事のない時に部室へ行っている。 校門前までさしかかったところで、可奈は貴乃を突然突き飛ばした。 「なっ! 可奈!?」 「ぎゃああーー!」 可奈の悲鳴。彼女のどこからそんな声が出せるのかわからない。貴乃には何か淡い光が可奈の全身を覆っているように見えた。それも一瞬、可奈がその場に座り込んだので駆け寄った。 「どうしたの? 可奈」 「やられた。屈辱」 「へ?」 「封じられた」 「封じられたって、まさか!?」 貴乃は芯から震えた。彼女の並みならぬ魔力が封じられたのだ。きっとこの間に何かするのだ。そして、その報復の方が恐ろしい。 「必ず、仕返しするから。覚えてなさい」 この下校時間から少し外れた時間、他に誰もいなかったことだけは幸いかもしれない。弱った可奈を支えながら貴乃は思った。
円山動物園のアメリカクロクマの風子さんがお亡くなりになりました。冬の雪が積もった時期に見に行ったら、いなくてさがしたけれど実は雪穴掘ってそこに冬眠しようとしていたというなんともマイペースな風子さん。その穏やかさで恋人にしたいクマベスト3に入る風子さん。次に行ってもいないなんて寂しいな。 田中学院 高等部養護教諭 上田 明。 彼はオカルト研究部の顧問でもある。彼の所属は高等部だが、たまに他の部にも現れる。いつもだいたい平和な田中学院だが、高等部はそれなりに忙しい。忙しいと言っても、相手は『怪我した』『具合が悪い』『眠たい』といった類だが。しかし、この日は事故が起こった。 昼休みに高等部2年の倉内綾名が泣きながら明を呼びに来た。岡崎良介が階段から落ちた、らしい。見に行くと本人は元気なく笑っていた。意識はあるし、頭を打たないように受け身をとったという。骨折はしていないようだが、足が動かないようだ。打撲か何かだろう。 「あいたたたっ!」 「しばらく安静だな」 肩を貸して立たせた。 「保健室まで行けそうか?」 良介は無言でうなずいた。綾名には心配しないようにと笑いかけている。 「良介ぇー」 「痛いだけだから平気だよ。先生に伝えといて」 「本当に大丈夫?」 「大丈夫、大丈夫。このくらい、じいちゃんよりマシだから」 岡崎家は古武術道場を開いていて、良介の祖父が今後継ぎとして良介を鍛えていることは知っている。彼の兄である優介とは同窓生だった。 「ああ、一応ここで応急処置、そして一応医者に行かないとダメだと思うから早退だと言ってくれるかい。連絡はこっちでしておくから」 「はい」 倉内綾名は心配そうだったが、職員室へ向かっていった。 保健室まで男子生徒、鈴木千太朗が手を貸してくれた。千太朗は不良ぶっていたがこの田学の変人変態の中でそれをしても意味がないことに気づき、すっかりなりをひそめてしまった生徒である。良介は彼に礼を言ったが、そそくさと行ってしまう。 「鈴木ってシャイなんだよ」 明は心の中で『それは、去年お前が喧嘩売られた時に受け流しだけで鈴木を負かしたからだ』とつっこんだ。 手当をしながら話をする。これも仕事の内だ。 「誰に押された?」 「……わからない」 まず、自分でドジを踏んで階段から落ちるようなことはない。足の打撲で済んだのは幼い頃から古武術を叩きこまれ、受け身がうまく出来たからだ。だが、気の緩んでいる学校生活の中で、生徒の行き来が多い昼休み中、誰にどう押されてしまったのか見当もつかないという。 「誰かに狙われる心当たりは?」 「……愛でる会、かな?」 やっぱりそうか、と明は思った。この弟も勘づいている。中等部の東可奈、大学部の中野春季、シンクタンク窓口の野田晴仁、この辺りは狙われている。 「とりあえず自宅に電話するから、今日はちゃんと病院行くこと」 「わかりました。あの秀兄には黙っておいてください」 「うん、まあ黙って置くけれど。秀くんってそんなにか弱かったか?」 「まあ今はちょっと」 「そうかなあ」 良介の迎えが来た後、明は優介にメールを送っておいた。その夜、優介と適当な居酒屋で落ちあった。 「よう、久しぶり」 「うまくやってるか、明?」 岡崎優介はほとんど時間に遅れることなく居酒屋に現れる。彼とはたまに会うようにしている。 「まあな」 「良が世話になったね。お袋から連絡来ていたけど」 「良くんは黙っていてくれって言っていたんだけどね」 「うん、自分でコケたなんて秀にはまず通じないね」 「そうだよなぁー。そうなると秀くんは気づくかな?」 「まあ、もうとっくに気づいているだけど、本人は今ちょっとね」 「なあ、ほんとそこんところ、何があったわけ? 元シンクタンクさん」 「あんまり過去のこと、個人のプライバシーにかかわることを根ほり葉ほり聞いちゃだめだよ。現シンクタンクさん」 「……ちっ」 「それにもう、学院から離れているからお前たち、学院が解決しなきゃダメなんだよ。愛でる会なんて馬鹿げた会のこと」 「やっぱり知ってんじゃねーか!」 「愛でる会は学院内外である噂だからね」 一体どこでその噂を仕入れてくるのか、学生の時から謎だった。どこかで危ないことをしているのだろうかと、明は心配する。 「ほんと、お前怖いよ」 優介は優しげな顔で「そう?」と言った。
今週の一言:最近『読切』→『連載』っていう→の間が短いな。そういう形態なの? 田中学院 中等部2年 中野冬季。彼は自宅で兄の帰りを待っていた。なかなか帰って来ない兄を待ちながらおやつを食べる。中野家の食欲は半端なく三食ではもちろん足りない。インスタントラーメン二つを平らげた頃に兄、春季が帰って来た。 「兄貴っ! 話があるんだ!」 「なんだ? 帰って来るなり」 「ハルに何依頼したのかわかんねーけど、ハルが狙われてるんだよ」 「ハルくんが? ふーん、なるほどなー」 「もう依頼取り下げた方がいいと思うんだ。ハルに何かあったらどうすんだ?」 「それは、絶対ない」 春季がきっぱり答えた。 「田学のシンクタンクがそうさせないから。よくわかんねーけど」 「へ?」 「ハルくん、野田晴仁はシンクタンクの窓口なんだ。シンクタンクの存在は、学院の半分が知っているかくらいだし、そもそも誰なのかわからきゃ依頼のしようがないから、公式的にハルくんが窓口で堂々と活動出来る立場におかれているだけであって、シンクタンクは他にもいるんだ。ほら、シンクタンクって頭脳集団という意味だろ。一人だけじゃそう呼ばない。ハルくんがシンクタンクである以上、他のメンバーにも守られているんだよ。もっとも他のメンバーは極秘扱いで誰なのかはわからんけど。家族にも言えないって聞いたことがある」 春季は得意そうに言う。冬季が不思議なまなざしで見る。 「兄貴がそうなんじゃないか?」 「まっさかー。んなわけないだろっ!」 「そうなんだ」 冬季はなおも複雑だった。兄が何故そんなことを知っているのか、晴仁は何故そういうことを黙っているのか。 「ハルくんを責めるなよ。シンクタンクの窓口ってだけで結構やっかいなんだからな」 「責めるつもりない」 心を見透かされたようで面白くない。晴仁を責めるつもりはないが文句は言いそうだ。腹が立つと腹が空く。冷蔵庫を開ければシュークリームがあった。 「お、シュークリーム一つ貰い」 二つあったシュークリームを春季と食べた。シュークリームを食べる兄の顔は能天気だ。ムカつくので食べてしまうと部屋に戻った。その後、夏季と秋季が帰って来たらしく春季を責めていた。どうやらシュークリームのことらしい。知らない振りする事にした。
記憶と現在知識を融合させて作った何かです。 田中学院 中等部2年 野田晴仁(はるひと)。 彼は東可奈と別のクラスだが幼馴染だった。彼女からの依頼と親友である中野冬季の兄、春季からの依頼はまったく同じものだった。 最初は軽い気持ちだったが、それがとんでもなく難儀な依頼だった。本来なら通報としてもおかしくないと思われるのだが、田中学院理事長からストップが入った。理由は簡単。警察沙汰にするな、ということ。そして理事長からも依頼として申し込まれた。 「って、知るかぁー! 何が『愛でる会』だっ! ただの変態の集まり? ふっざけんなっ!」 ひとしきり怒鳴ってから、ため息をつく。心にもないことを怒鳴ったが、たまにこうでもしないとイライラがたまるばかりだった。そして普段の彼しかしらない連中なら驚くだろうが、特別許可を受けて使用している中等部のコンピュータ室の中には彼一人しかいない。 こんな依頼、東可奈からでなければ、冬季の頼みでなければ、理事長からでなければ受けなかった。そして、この変態会の被害者が岡崎秀介でなければ受けなかった。 晴仁にとって秀介は恩人でもあるのだ。彼のおかげで今こうして能力を活かすことができる。 だからなんとしてもこの変態らのメンバーを突き止めたい。 【『岡崎秀介を愛でる会』のメンバーを割り出せ。報酬はメンバー一人に付き……】 もちろん、彼は学生ということで報酬はそれほど高額のものではない。 簡単な仕事だと思った。しかし、どうにも進まない。怪しい人物はピックアップ出来たのに確証が得られない。 「ハルー、いたー!」 コンピュータ室に入ってきたのは中野冬季だ。入ってもいいか、という顔をしていたので手招きした。 「部活終わったってことは、もうそんな時間なんだな」 「うん、そろそろ下校だぜ。さっさと帰らないと、異空間に迷い込むぞ」 田学には七不思議がある。その一つ、下校時刻を過ぎても学校にいると高崎麻代のようになる、と。高崎麻代は昔この学校にて行方知れずとなった女の子である。 「そんなの迷信。でももう帰るよ」 まだ調べたいことはあるが下校となればこの部屋も使えない。規則に従ってこそ、このコンピュータ室が使えると思えば、従うのみだった。コンピュータの電源を落とす操作をする。 「……仕事、進んでいるか?」 冬季の質問に首を振る。 「そっかぁー。兄貴も無理しなくてい言っていった。奴らは兄貴の野生の勘でもひっかからないんだ」 その野生の勘とやらがどの程度のものであるかわからないが、春季のものであれば当てになるものなんじゃないかと晴仁は勝手に思った。 コンピュータ室を出て、職員室へ鍵を返して二人は下校することにした。校門近くにさしかかると、高等部方面から二人の女学生が現れた。二人とも同じ姿をしている。 「あ、冬季じゃん」 「お疲れ―晴仁くん」 高等部2年 中野夏季と中野秋季(あき)。中野四兄弟の双子の姉妹であるがその見分けは親にすら困難らしい。 「姉ちゃんズ」 「……こんにちは」 「ちょっと冬季、その呼び方やめて」 「晴仁くん、うちの馬鹿弟がいつもいつもお世話になって、ごめんねー」 「そんな、こっちが世話になってるから」 「またまたーそんなこと言っちゃって」 「うちのが、絶対世話になってるってー」 「あ、冬季、うちら、屯田軒で夕方サービスタイムセット食べて帰るから」 「お母さんに言っといてね。じゃあ、またねー。さっさと帰るんだよー」 双子が去っていく。二人はちょっとため息をついた。情報屋の異名を持つ双子、そしてその双子をうまく使い、いち早く新聞として提供する高等部三年新聞部部長、浅野美也子。依頼の秘密を抱える晴仁にとっては脅威だった。冬季にとってもこの姉双子に振り回されている節がある。 ふと、忘れ物をしたのを思い出した。傘だ。降るか降らないかあいまいな予報だったから一応持ってきたのはいいが、すっかり忘れていた。持って帰るか置いていくか少し迷っていたところで冬季が袖を引っ張った。 「早く帰るぞ」 「えっ?」 「いいから。姉ちゃんズが、さっさと帰れって言ったろ」 「……うん」 急ぎ足で学校から離れ、自宅近くまで冬季は付いて来た。こんなに心強い親友は他にいない。 「ハル、何調べてるか、誰にも言ってないよな?」 玄関先で冬季は小声で尋ねた。晴仁は冬季にも依頼内容は言ってない。知っているのは彼と依頼人、そして理事長のみだ。 「誰かいたの?」 「なんかよくわかんないのがいた。姉ちゃんズも気づいた。兄貴にも言っておくから。もうやめた方がいいんじゃないか?」 「でも、やんないと」 「そんなに大事なことなのか?」 「うん、これ春季さんだけの問題じゃないんだよ」 「そっかぁ、ならしょうがないな。とりあえず今日は帰るよ。お前はなるべく一人で行動するなよ。人通りの多い道通るんだぞ」 「うん。冬季、ありがと」 「……あ、ああ、別に大したことじゃないからさ。とにかく気をつけろ」 中野四兄弟がそろってそう言うのだからそうなのだろう。春季の勘も双子の助言、そして冬季の心配もなんらかの危険を察知しているということだ。 「じゃあ、また明日」 「おう」 晴仁は玄関のドアを開ける前に、冬季の後ろ姿を見送った。
自作二大話の登場人物を書き出したら、恥ずかしくなった。 田中学院 中等部 2年 東 可奈。 おおよそ同じ年代のキャピキャピという謎の形容詞が似合わない女子である。学校での生活は大人しく、休み時間はいつも座って本を読んでいるという具合だが、同じクラスの高山貴乃と一緒に昼食を摂ったりと一緒に行動していることも多い。 そんな彼女が貴乃とともに入部しているのが、オカルト研究部通称オカ研だった。そして、彼女のそばに蝙蝠が飛んでいた、クロネコが付いて歩いていた、カラスがいつも見守っているなどの噂などで、魔女ではないかなどの噂が絶えない。実際彼女が得体のしれないオブジェを持っていたのを見かけた生徒がいる。そんな生徒たちの言葉に彼女は公定も否定もしなかったゆえに、噂は噂を呼び一層謎めいている。 当の本人は全く気にせず今日もオカルト研究部の扉を開いた。 「やあ、可奈ちゃん」 「部長、こんにちは」 空き教室の半分のスペースであるこの部室にはいつも三人しか集まらない。部長である岡崎良介は校内でも数多い中の変人の一人であるが、基本、人が良い。 「今日は貴乃ちゃんはお休みです。おうちのお手伝いがあるからって」 「そう」 気にせずに彼は何か調べ物をしている。基本的にこの部活は毎月一度降霊会を開き、あとは夏場お化け屋敷を開業する、年に一度大規模な肝試し大会を行うくらいだった。毎月一度の降霊会も良介に原初の魔「エゴイズム」が取り憑いてからというもの、可奈が禁止命令を出した。 この「エゴイズム」は結局自分が一番かわいいとかいうものであり、世界の人々が某救世主並みに自己を犠牲にし人のために善行を行わない限り消えないという、絶対に消えることのないすごい魔なのだが、取り憑いたからといって特に何もしない。 「部長、最近魔はどうですか?」 可奈の問いに良介は「特に何も変わらないよ」と首をあげた。 「そうですか」 彼女は特に心配もしていなかったが、彼女もこんな魔に会うのは初めてなので今後どうなるかわからない。今も今後何があってもきっと何もできないだろうと思っている。 「あのう、部長、秀介さん、元気ですか?」 「うん、相変わらずかなー……えーと、今日はそろそろ授業終わるころだと思うよ」 良介は彼女の心を知ってか知らずか、否、知っているからゆえ知らないふりで答えた。恋する乙女の心を触れずに支える術をこの変人はなぜか会得している。 「部長、急に用事を思い出しました」 「はーい、俺はもう少し残るからいいよー」 「はい、さようならー」 田中学院 大学部2年 岡崎秀介。いつもぼんやり大学へ行き授業を受け帰宅する。そんな毎日の繰り返しだった。今の彼に気力というものがやや抜け落ちていた。高等部時の事件でなんらかの心に深い傷を負った(失恋という可能性が大)ゆえに、無気力な大学生となっている。本人もこのままではダメだと思っているが、なかなかそれから抜け出せずにいる(ため、失恋ではないのではという見解もある)。そんな秀介を良介は勘を利かせて厳しい祖父から守り、さらに家族でも鈍感な兄優介にそっと伝え、名の通り優しき兄によって秀介を守らせるという二重防衛を行っている。そのことはとっくに秀介は気づいているが、そこに甘えているので兄弟に感謝している。 「おーい、秀介」 帰ろうと校門へ向かう途中、春季に会った。中野春季。学校でも様々な理由で有名な中野兄弟長男。彼とは長い友人関係にある。高等部時代に気力を失った彼を見守ったのは他人で春季くらいだった。今でもあまり人付き合いしなくなった秀介に声をかけるのも春季くらいである。 「帰るのか? なあ、屯田軒寄ってこーぜ」 「いいけど、お前、食いすぎなんだよ」 中野兄弟の特徴、その一、大食い。春季はその中でも小食の方だった。あくまで妹弟に比べての話だが。中野家の特徴で、大人になるにつれ、食欲は治まっていくらしい。ただし、中野家の常識は世間の非常識である。ちなみに屯田軒はこの近所のラーメン屋。安くおいしいため田学生たちも多くが通う。店主も生徒たちに愛想がいい。 「秀介さん、こんにちは」 可奈が駆け付けた。 「あ、可奈ちゃん。こんにちは。どうしたの?」 魔女だなんだという噂は大学部にも届いているが、弟の後輩ということで何かと顔を合わせる機会があるためこの少女に対しては警戒も何もなかった。気力落ちしている彼にとって噂などよほど信憑性がない限り入ってこない。 「あの、実は秀介さんが好きそうなかわいいお店を見つけたんです」 「かわいい……」 春季が「うわあ」という顔をする。可奈は秀介の好みを心得ている。 「じゃあ、そういうことで。春季は一人で屯田軒な」 「へいへい、俺は一人さびしくラーメンすするから」 そう言いつつも校門まで三人で向かう。 「あ、可奈ちゃん。髪に糸くずが付いてる」 春季が可奈の肩にそっと手を乗せる。 「あら、さすが元プレイボーイ」 「まあね。あ、俺、ちょっと忘れ物」 春季は校門前で止まった。 「ああ、じゃあな」 秀介を手を挙げた。そして可奈はちょっとだけ頭を下げた。二人が見えなくなると、春季は振り返った。 「なんか用だったか? うちの秀介に」 『ちっ』 『また中野春季かっ!』 『とてもじゃないけど、かないっこないわ』 『あの魔女も変な術使ったのね、急に見失った』 そんな声が聞こえる。春季も良く知らないが、どういうわけか秀介はよくわからないもの(変態ともいう)を惹きつける。『岡崎秀介を愛でる会』なるものがある。あの東可奈や田学のシンクタンクである野田晴仁ですら把握できない謎の集団。他校にも及んでいるのかもしれない。 可奈の肩に触れたのは彼らがいる合図。可奈はそれに応じて呪い(まじない)を使ったのだ。 「秀介が元に戻ったら、捻りつぶされるぞ」 そんな捨て台詞を吐いて春季は一人さびしく屯田軒に向かった。
今夜はお楽しみ会。
通院している歯医者からはがきがきた。
夕方のニュースはイチオシを見ている私です。
3DSでドラクエ10やってます。
意外に史実通りな『花子とアン』を見ていて、連様が一夜にして白髪となったのを見て「フィクション!?」とのたまってしまいました。いや、本当にフィクションなんだけど。
連休とはいうけど、土曜日休みじゃなかったら二日連休なのよね。
敗北したのは、はい僕です。
いい天気すぎて、首と背中が焼けそうでした。UVカットのパーカー着ていたのですが、暑い。太陽が熱い。
おとといから、雷ばかり。昨夜も鳴っていたというのにやっぱりぐっすり寝ていたようです。
夏休みに怠けた分が来ているだけです。
というか、ほとんど独り相撲。
予定を立てていよいよ某温泉地へ行こうと思ってます。
ついつい寝不足になってしまうので、はよ寝ます。
3DSのドラクエ買いました。
はい、バル街楽しかったです。
いい感じ復活してます。
出勤しました。昨日からだけど。
一昨日朝から今までにないくらい胃が痛くなり、上から下から悲惨な状態でしたよ。
草うららか
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