気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
一週間ぶりにどうぶつの森をやったら、酷い言われようでした。 人魚は人を騙し、海に贄を与える。 「そして、海の神に愛でられるんだ」 牛はそう続けた。 「さ、君たちは明日の朝この村を出るといいよ。人魚はよそ者が来るとそれを贄にしたがるから」 牛の言う通り、次の朝、彼女と虎はその漁村を出た。 「後味は悪いけど、後、二匹ね」 「うん」 「羊と兎だっけ?」 「うん」 「どうしたの? 元気ないわね」 「葬儀と言うものは、あんなに寂しいものなのか?」 「まあ、本来、亡くなった人を忍ぶものだからね、寂しいものかもしれない」 「そうか」 「でも、楽しかった頃を思い出して、涙を流して、気分をすっきりさせるのもいいのかもしれない」 「私にはよく分からない。チャーミグが死んでからもう何年も過ぎている」 「なら、楽しくしましょう。皆で思い出を話し合って笑い合うのもいいかもしれない」 「それなら」 「それに、マレモンひとりが考えたってどうしようもないわ。あの王様なら何か他にいい事を考えているかもしれないし」 「うん」 虎と彼女の旅はまだ続く。
なんか一週間のうちにいろいろあったので、短いようで長かった感じがします。 その朝、漁に出る船はなかった。海の贄とされたあの漁師の魂を送るために海に花を流して、鐘をならした。 ごーん、ごーん 何度も何度も鐘が鳴る。鐘の方を見ると、なんと牛が鳴らしていた。 「牛!?」 彼女と虎は近寄ってみた。牛が頭突きをして鐘を鳴らしていたのだ。 「ん? ああ、もしかしてマレモンか?」 こちらに気づいた牛は頭突きを止めてふたりに近づいた。 「おいらはジフだ。同じチャーミグの弟子だ。そして、お嬢さんは旅仲間」 「どうしてわかったの?」 「だいたい想像がつくんだ。それにおいら、少しだけ考えていることがわかる。たとえば、お嬢さんは、また出発し損ねたって思っている」 「うん、その通りよ。じゃあ、私たちがここに来た理由も分かるわね」 「ああ、チャーミグが亡くなったんだな。チャーミグは少しばかり長生きした人だよ」 彼女の考えている事が少し読まれた。 「それで、マレモンはおいらたちで盛大な葬儀を行いたんだね」 と、虎の考えている事も少し読んだ。 「話はわかったよ。ドラゴン、フラワキンの合図がくるんだね。待っているよ」 と牛は言い、また鐘を突いた。 「まったく、人魚なんかに騙されるなよ」 「何か、知っているの?」 「おいらには人魚の心も読める。あいつら、人を誘って、興味あるそぶりを見せて、最終的に海に食わせるんだ」 牛はつまらなそうに言った。
と、言われました。 「人魚に......そんな、馬鹿な」 人魚は人に恨みを持つ。それがどんな恨みなのかは知られていない。ともかく人を誘い出し、海の贄とするくらいなのだから、すくなくとも人は嫌われた存在、馬鹿な存在とされているはずだった。 そんな人魚にこの男は惚れられたのだ。彼女は驚いた。 「だから俺は海の贄とはならないんだ」 「へえ」 魚をごちそうになり、彼女と虎は満足して宿に戻った。 その夜も心地よいさざ波を聞きながらよく眠った。 次の日、海岸はざわめいていた。 「馬鹿だよな」 「ああ、全くだ」 「夜は海に出るなと言ったのに」 昨日の男が海の贄となったらしい。 「どうしてだろ?」 彼女はつぶやく。人魚に惚れられた男だと言うのに。 「まんまと騙されたんだよな。人魚は最初からヤツを贄にしたかったんだ」 誰かが言った。
負けません。 昼過ぎに村を歩く。何もないに等しい村だった。漁業で細々とかつ、穏やかに暮らしているとでかでかと書かれているような村だった。朝、日の出とともに船を出し夕刻には必ず戻って来るという。 一件しかない店は旅をする者が寄って行く程度の村なので、携帯食料、保存食はある程度そろっていたが、めぼしいものはなかった。 彼女は必要な分だけの食料を買って行った。虎と海岸を歩いていると香ばしい匂いがして来た。 「お嬢さん、一つどうだね? その猫も」 声の主に虎がギロッとにらむ。 「マレモンは虎よ、おじさん」 「そりゃ、失礼。でもおじさんは失礼だ」 彼女よりはだいぶ年上に見える。 「でも、魚はおいしそう」 枝に刺した魚が網の上で焼かれていた。油が溢れたまに火がぼっと上がる。 「そうだろ? 虎さんもどうだい?」 「いただく」 魚をごちそうになりながら、たわいのない話をする。 「そうか、昨夜この村についたのか。昨夜はよく眠れただろ」 「ええ。ここは海の子守唄って呼ばれるほどよく眠れるって聞いたけど」 「ああ、海の子守唄ってか? そんなかわいらしいもんじゃねーよ。ありゃ、人魚が歌ってんだい」 「人魚ですって!」 「ああ、あいつらは日が沈むと歌い始める。夜に船を出しているヤツを眠らせてその身体を海の贄にするんだ」 「人魚はそう言う事をするのか」 「だから、夜には船をださねー。俺以外はな」 「あなた以外?」 漁師は笑って照れながら答えた。 「人魚に惚れられちまったんだ、俺」
やられたぜ。すっごいやられたぜ! 目が覚めた。 「え? .....きゃーっ!」 彼女は窓を開けて確認した。日はすでに高い位置にあった。 「寝過ごした?」 今日一日はここに滞在する予定だったので、それほど困る事はないのだが、こんなことは初めてだと、軽いショックを受けていた。 「マレモンは?」 虎の姿はない。少なくとも視界に入る中では。 「どうした? クレン?」 「マレモンも寝坊?」 「久しぶりに心地良く眠った」 「そうね、私も良く眠れた」 彼女は着替えて宿の食堂に降りた。 「宿とは、ほとんど同じように出来ているんだな」 と、虎が言う。 「そうだよ。宿泊宿連合協会で定められているんだから。例外もあるけど」 食堂には人がまばらにいた。 「お嬢さんも寝坊かい?」 「すいません、朝ごはん終わっちゃいましたよね」 「大丈夫だよ。ここで初めて泊まる人たちはみんな寝坊するんだ」 この村は、『海の子守唄』と呼ばれるらしい。 「この宿で泊まった人たちは皆子守唄を聞いてよく眠るんだよ」 おかみが、自慢げに言った。
かたくなで物事の道理に暗いこと。(広辞苑)
私信です。 「ごめんください」 彼女はそっと宿屋のドアを開けた。 「こんな遅くにお客さん?」 「お部屋、空いてますか?」 「ええ、空いているけど。ただ、もう食事はだせないの」 彼女は一瞬残念そうな顔をした。 「あの、虎もいいですか?」 前の港町とは違い、この漁村は静かな夜を過ごしていた。あの時は嵐だったせいもあるが、怖いほどの静けさだった。ただ、さざ波の音が絶えず聞こえた。 宿には馬小屋や納屋などなく、虎は部屋で泊まる事になった。言葉を話す虎に驚きもせず、部屋を貸した。 彼女はその夜、さざ波を聞きながら眠った。最初は耳についたが、次第に慣れてきた。
なにか口元がにやけます。(キモイ) 蛇と別れて、翌日港町を出た。いい天気だった。 「ねえ、マレモン。皆を集めて何やる?」 「うーん」 虎は何も考えていなかった。ぼんやりとは考えていたがそれはすぐに消えてしまう。とにかく、師であるチャーミグの死を伝えないとならないという使命感に駆られていたのだった。 「人なら何をやる?」 本来なら動物に弔うというものはない。 「そうね、葬儀......早い話お別れ会ね。皆で亡くなった人のことを悔やんだり思い出話をしたりするの」 「そうか。それもいいかもしれない」 動物たちの接点はチャーミグだけだった。この老人が動物たちを繋ぐものだった。 「やることは決まったよ、クレン」 「よかったね。あとは、残りを見つけるだけね」 「うん」 虎と彼女はその夜、小さな漁村についた。
なんと、バッハのゴルトベルク変奏曲なんだそうです。 「ねえ、チャーミグさんって、いくつで亡くなったの?」 虎と蛇は彼女を見た。 「二百十ニ歳だったと思う」 と、虎は言った。 「いや、三百二十五歳って聞いたことあるぜ」 と、蛇は言う。彼女はあぜんとした。 「どちらにしろ、人として長生きだよな」 「かなり長生きだわ。って、それって本当にそうなの?」 「どちらにしろ、百歳は超えているはずだ」 蛇は言った。 「チャーミグって何者なの?」 よく考えれば、いや、考えなくともおかしな話だった。動物たちに言葉を教え話させる。ただの人ではないのは確かだった。 「人だ」 「人だね」 それでも、チャーミグを人と称する。ならば、人なのだろう。 「そうなの?」 「そうだよ」 「そうだ」 「で、マレモン。皆に伝えているんだよな?」 「ああ。あと、三匹だ」 「皆を集めて何をやるんだ?」 「何をやろうかな」 「なんだ、決まってのか。だったら、それも考えるといいだろう」 蛇はそう言ってとぐろを巻いた。
いや、今日の日記を。
どうしょうもうない。 その朝も嵐で外は荒れていた。 「これじゃ外に出られないな」 「うん、あなたは部屋からでない方がいいわね」 彼女は蛇を部屋に置いて出て、食堂に向かう。この嵐で連泊を余儀なくされているのは彼女だけではない。宿には蓄えがあるのか、三食きちんと食事を出してくれる。今朝はパンケーキとコーヒーだった。少しずつメニューも違う。 「昨夜、変な音しなかったか?」 「いや、ねーよ」 「聞こえたんだけどな。おい、そこのきれいな姉ちゃん、聞こえなかったか?」 そう尋ねられて彼女は答える。 「いいえ、何も」 そして、ほくほくのパンケーキを食べた。 「俺だ、トップだ。久しぶりだなマレモン」 嵐が落ち着き、彼女は蛇を連れて馬小屋にいるマレモンに会いに行った。虎は退屈そうにしていた。食事も一緒に持って来た。虎は食いだめが出来るので一日くらい食べなくとも平気だった。逆に十としているときは食べないと言う。 「クレン、トップは私とともに言葉を学んだんだ」 「俺の方が優秀でよ、先に卒業したんだぜ」 「トップは兄弟子なんだ」 「ところでよ、マレモン、お前ここまで何しに来たんだ?」 「チャーミグが亡くなった」 「じじいがか。人にしては長い人生だったな。長過ぎる」 彼女に疑問が出来た。チャーミグはいくつだったのだろうと。
ゲルマンさんします。(注*自分用語/しかも今作った) その夜から雨と風が強くなった。虎の言う通り、嵐はまたこの港町に現れた。彼女が眠っていると、再びその音が廊下に響く。 ひたり、ひたり......。 彼女は起き上がった。この宿に、幽霊などいない。宿屋の息子がそう言うのだから、そうなのだろう。だから彼女は起きる事が出来た。 ひたり、ひたり......。 彼女はドアノブに手をかけ、開ける。 そこには、雨に濡れた蛇が一匹這いずっていた。 「ヘビ......」 「よう、姉ちゃん。ここに虎がいなかったかい?」 「あ、あなた、チャーミグさんの?」 「もしかして、マレモンを知っているのか?」 体長五十センチほどのその白ヘビは彼女の部屋に入り込んだ。 「いやー、助かったよ。俺、トップってんだ」 「そ、そう」 「いやー、マレモンをこの家で見かけてさ、この中にいると思って昨日の夜も探したんだけどよ、見つからなくてね。俺の姿見ると人が、きゃーきゃー言うからよ、夜にしか動けないしな」 「そ、そう」 どんどん近づいて来る蛇を彼女は避けるように移動する。 「いや、ホント助かったよ。で、マレモンはどこだ?」 「この宿の隣にある馬小屋よ」 「そうか、外か。でもな、外嵐だからな。ここに泊めてくれ」 「いいけど、近寄らないでね」 彼女は、蛇は苦手だった。
なんか、本買っちゃったです。
今、悩んでいます。 彼女はカウンターに座って、飲み物を頼んだ。寒かったのでカフェラテ。一人、それを飲み、客たちの話に耳を傾けた。 「いや、ありゃ、本物だよ」 「んなわけないだろ? あってたまるか」 「なんだ、お前、怖いのか?」 という、会話。他のテーブルでは、 「海ってヤツは出やすいんだよ。よくあるだろ、ずぶぬれの幽霊の話。海難事故で死んだ奴らが出るんだよ」 「ああ、俺、昨夜聞いちゃったんだよ。濡れたような足で廊下歩く音」 彼女は更に寒気を感じた。 「あの、お聞きしたいのですが......」 カウンターの店員に声をかける。 「なんだい、お嬢さん」 「ここって、出るの?」 「まあ、皆そんな噂してるけどさ、俺は長年ここの息子やってるけど、幽霊なんてたぐい、一度も見てないぞ」 「そう。そうよね」 その晩には嵐も弱まり、彼女は一度虎のもとに言った。 「明日には出発できそうね」 「いや、嵐はまだ去らない。もう一度来る」 と、虎は言う。虎の天気予報はよく当たる。だから、彼女は明日の朝は来ない事を告げ、宿に戻った。
まあ、私の場合、大したネタではないんですが......。 そんなわけで、今日はちょっと思いついた話を残しておきます。(書かないと忘れる。続きは後日また) ベグゼッドは古い日記を見つけた。フォ−ランズ城にはビアソーイダ城のような図書館jはないが、歴史を残しておくという国民性のためか(その残した歴史も記録も怪しいのだが)、歴史書が多く保存されている。その中で、隠されるようにその日記はあった。 積もり積もったほこりをはたいて彼はそれを書庫から持ち出した。暇つぶしにはなるかもしれない、と。 「何を持ち出して来た?」 部屋に戻ろうとした彼をグオンが呼び止めた。いつも軍服(それとなくデザイン違いがあるのだが、ベグゼッドには同じに見える)で、酷く美男の軍術家だが、彼の家庭教師のようなことがグオンの仕事である。 「日記帳。こんなの初めて見た」 「ずいぶん、古い物じゃないか?」 「でも、そうでもないかも」 紙の質などは昔のそれではなかった。しかし、ぱらぱらとめくると文字はぎっしりと書かれており、彼の読力を唸らせた。本が好きだと断言できる彼は何でも読む。それこそ、専門書だろうが絵本だろうが、目につく文字を読まずにいられない質である。 「夜に読もうと思って」 「ほどほどにしておけよ」 「うん」 放っておけば、夜も寝ず食事もせずに読む。だからグオンはそれを止めるブレーキ役であった。ベグゼッドも彼には逆らわない。 その夜、彼はそれを開いた。やっと自由に本が読める時間が就寝前の自由時間だった。今回は本ではなく、日記なのだが。 『××年○月△日 その日はまさに絶好の出航日だった......』 字を見てはっとした。 (これ、父上の字!) それは、現フォーランズ王、ベグゼッドの父の若き日の日記だった。 後日、続く
ゲームをと、思うんですが。 その日の夜、いつものように宿の部屋で彼女は眠った。虎は馬小屋を借りて、そこで休んでいる。 ひたり、ひたり...... そんな音が廊下に響いた。 ひたり、ひたり...... うつら、うつらとして彼女は目覚める。 「なんの音?」 その音が部屋の前で止まる。そして、また ひたり、ひたり...... と、音が遠ざかった。 その翌日、外は嵐だった。 「これじゃ、出立は無理ね」 旅の途中なら仕方がないが、嵐の中の出発は避けたい。わざわざ服を濡らす事はない。風に吹かれることもない。他の泊まり客もそうだった。 離れの馬小屋にいる虎に会いに彼女は嵐の中出た。それだけで彼女はびしょぬれになる。 「やっぱりそうか」 「だからマレモン、今日はゆっくり休んで」 「私もわざわざこんな嵐に出たくない」 「そうよね」 また宿に戻り、彼女は着替えて食堂に出る。食堂では暇を持て余した旅人が話に花を咲かせていた。
が流行っているよう。 彼女と虎は、港町にいた。 「マレモン、海だよ」 「海か。いつ見ても不思議だな。どこまで広いのかわからない」 「そうね、魚はおいしいけどね」 「魚か。私は苦手だな」 しかし彼女はあえて魚介料理店に入り、注文をする。 「マレモンは何がいい?」 「いや、だから魚は得意じゃない」 「サーモンのカルパッチョなんかいいんじゃない?」 彼女はそう言って注文する。 虎は諦めて彼女が皿に分けたカルパッチョを食べた。 「うまい」 「でしょ?」 「今まで焼いたものしか食べた事がなかった」 「やっぱりねー。新鮮なものは生でも食べられるんだよ」 今まで虎は海や港町に行く事はなかった。遠くから海を見て、ただただ広いとしか思っていなかった。 港町に来たからと言って、船に乗ったりするわけではない。そうすると虎の目的から外れてしまう。チャーミグはあくまでこの大陸に住んでいて、そこから言葉を教えた動物たちを世に送り出したからだ。 「でもさ、中には大陸からでちゃった動物もいるんじゃない?」 「いるかもしれないが、あまり考えられない」 と、虎は思う。あの人の王となったドラゴンであれば大陸など出るに容易いだろうが。 「チャーミグは船というものが嫌いで、それを本当に恐ろしいものと教えた。だから、私は船というものが怖い」 「そうなの?」 虎にそう教え込んだのなら、他の動物たちにも同じように教えただろう。
すいません、こんなタイトルで。
なんかね、もう、ブリザード!ってなカンジです。 虎は、アクロと名乗る馬に会った。 「マレモンか、久しぶりー!」 「いや、お前とは初めて会った」 「いやー、元気にしていたかい?」 「だから初めてだって」 「僕は会ってるよ。君がまだねこじゃらしにじゃれていた頃から」 「覚えてない」 「おっと、そちらの麗しいまどもあーぜるは?」 彼女は思った。この馬は一番軽いだろう。 「クレンだ。一緒に旅をしている」 「こんにちは」 「羨ましい! 羨ましい! で、何用かな?」 「実は、チャーミグが亡くなった」 「あのじーさんがか? 殺しても死ななそうな。そうか、とうとう死んでしまったのか」 「お前で七匹目だ」 逃げた兎は入れなかった。 「あと、四匹に同じ事を伝えたらドラゴンのフラワキンが呼んでくれる。皆、一度集まろう」 「おーけーおーけー、じゃあ、そん時な。あ、そん時はクレンちゃんも一緒な。おっといけねー、俺、これからご主人乗っけて出かけなきゃならんのよ。じゃっ」 馬はそう言って、去った。 結局、アイスクリームにはありつけなかった。 「あーあ、作ってないなんて」 「でも、チーズもらった」 「うん、これはこれで楽しみ」 それでも、彼女は「アイスクリーム」とつぶやいた。
やばい粉ではありませんよ。 しばらく柵にそって歩くと家が見える。大きな牛小屋と小さな家。彼女と虎はそこを尋ねた。 「こんにちは」 彼女はドアを叩く。すると、中年の女性が顔を出した。 「どちら様でしょうか?」 「旅の者ですが、この牧場の方ですか?」 「え? ええ、何か御用ですか?」 「あの、ちょっとお尋ねしますが、話をする牛なんて......いないですよね?」 「あ、ええ、いませんけど」 「そうですよね、やっぱりいないよね」 「でも、しゃべる馬ならいます」 「はい?」 「アクロといいます。お会いになりますか?」 「はい......。よかったわね、マレモン。また見つかったわ」 「アイスクリームはいいの?」 「このきっかけはアイスクリームに繋がる道よ」 彼女はうれしそうに笑った。
またまた生野女史から承りました。 いろいろふざけた内容(にゃいよう)の時は、やはり、田中学院と言う事にゃ。 「おかしいにゃ」 オカルト研究部部長、岡崎良介はそう思ったにゃ。 「会話文以外までおかしいにゃ」 うるせー主人公にゃ。オカ研部長だったらこの謎(にゃぞ)を解明してみろにゃん。 「かわいくねーにゃ」 お前もにゃ。 「まさか、綾名も可奈ちゃんも貴乃ちゃんもか!」 そうにゃ。これが猫バトンの呪い(?)にゃ。まぁ、今日だけのことにゃ、我慢するにゃ。 「皆(みんにゃ)そうにゃらいいにゃ。でもさ、にゃんかウザイにゃ」 だから、今日だけだから我慢しろっつーのにゃ。 「語尾が明らかに変にゃ」 言う通り、他の先生も生徒も皆(みんにゃ)語尾にゃどににゃんやら、にゃやらにゃーがついているのにゃ。良介はそのうち慣(にゃ)れてしまったにゃ。放課後ににゃって彼は帰宅するにゃ......って、お前、オカ研部長だろ? 部活動はどうしたにゃ? 「今日はお休みにゃ。可奈ちゃんも貴乃ちゃんも用事があるんだってにゃ」 同じく帰宅しようと、良介の兄、岡崎秀介と中野春季が通りかかったにゃ。知らにゃい人には説明しとくにゃ。春季は四人兄弟の長男で、ぷれいぼーい(?)だったけどどういうわけか男色に走ったんだにゃ。秀介は昔いろいろあって、今でもいろいろある魔性にゃ男だが自分で気づかにゃい始末に終えにゃい男にゃ。 「お前さ、今日はずいぶんかわいいにゃ」 「お前は今日かにゃり気持ち悪いにゃ、去ね」 そんにゃ風に言葉以外は普段と同じ(おにゃじ)にゃ。結局この二人は秀介が友情というボーダーラインで無理矢理止めているから続いているようにゃん。 「部長、お話があります」 「あれ、可奈ちゃん?」 「どうやら、猫バトンの呪いのようですね」 「どうして可奈ちゃんはにゃらにゃいにゃ?」 「部長とは格が違いますから」 どういうことにゃ、東可奈には効かにゃいのか! 「今日は用事があるんじゃにゃいの?」 「ええ。今日はアレを始末しないとならないから」 「ああ、アレか。大変だにゃ」 「それじゃ、部長。さようなら」 「さよにゃらって、用事は? もしかして、この会話だけに出て来たのにゃ!?」 さすが、東可奈......呪いすら効かにゃい魔女にゃ。しかも出たがりにゃ。 「良介ー!」 「綾名」 「今日はね、皆(みんにゃ)語尾が変だから部活お休みにゃの。だから、今日は一緒に帰るにゃ。たまにゃあ、ゆっくりお買い物して美味しい物でも食べるにゃ」 「美味しい物はいつもの事にゃ」 結局、あんまり変わらにゃいにゃ。皆(みんにゃ)語尾が気持ち悪くにゃっただけにゃん。 つーか、こんにゃの、意味も何(にゃに)もにゃいにゃん。 猫と言えば一龍さまにゃ、お願いするにゃん。
あれこれと悩むより、その時の気持ちで動いてしまう。 あの黒い塊と死神、それが彼女が神殺し、悪魔殺しが出来る所以だと、虎は思った。 「あなたは、死神を使役できるほどの方なんですか......」 と、神父。人には神を使役する事は不可能なはずだと彼は思っている。 「いえ。私は女神様の力を借りているだけ。精霊様たちも同じ。使役なんて、身の程知らずもいいところよ」 彼女は剣を鞘に戻す。そして、教会を出て行った。そのあとを黙って虎が付いて行く。 宿に戻ると、彼女は再びベッドに潜り込む。 「クレン、ご飯は?」 「いらない」 彼女は毛布を腕で持ち上げた。 「ねえ、マレモン、一緒に寝てくれる? ベッドはあまり得意じゃないけど、ちょっとだけでも」 虎は黙ってベッドの上に乗り、彼女の横に寝そべった。 「やっぱり、あったかいわ」 今度こそ、この街を出る事になった。食料や飲料、その他もろもろの旅の準備をして彼女と虎は出発した。 昨日とは打って変わって彼女は元気だった。 「いい出発日和ね、マレモン」 「そうだな」 「あなたの仲間、見つかるといいね」 街を出て、しばらく歩くと牧場があった。広い柵があり、その中に牛が何頭かいる。 「乳牛ね。もしかしたら、アイスクリームなんかあるかも」 彼女は少し興味を持った。むろん、彼女が言う、アイスがあるかどうかだけなのだが。 「クレン、ほんと元気になったね」 「私はいつでも元気よ」 昨日のことなどなかったように振る舞う。 「それにこの中に、話す牛がいるかもしれないじゃない?」
いままであたたかったつけがかえってきた!(ドラクエ風) 金属が床に落ちる。ゴーンゴーンと鈍い音が響く。 「女の子!?」 少女は泣いていた。 「ここ、どこ? お母さん、どこにいるの?」 虎が近寄ろうとするのを彼女は止めた。 「駄目、あれは幻」 「幻?」 「そう、幻。あの女の子の思念と言うべきかしら? いずれ消えるわ」 彼女の言う通り、泣く少女は消え失せた。 『誰? あなた誰? わたし誰? ここは?』 幻がいたところに光の塊がその場に出来て、そう言った。子供のような声、女の人の声、男の人の声、いろいろな声が混じり合っている。 『わたしは何? わたし? 人なの神なの? 何者? わかんない?』 「どうやら、いろんなものが混ざってしまっているようね」 「クレン、どういうこと?」 「ここに封じられた魂は一つじゃなかったみたい。あまりに長く束縛されていたせいで一つの魂となったの。もう、元にも戻らない。人の魂にもなれないし虎の魂にもなれない」 『消える? 混ざる? 戻る? 一つ? 四つ三つ? 誰? 何? 何処?』 「さよなら。死女神様、お願いします」 彼女は左手を軽く上げた。その手を白い手が掴む。 『こんにちは、クレン』 「どうか、この魂が苦痛無く消えますように」 『わかりました』 死女神は、すべて白い。透けるような肌に白い服、髪も白い。 『さあ、もう考える事はないわ。安心なさい』 光の塊も白い姿に包まれる。女神も魂の塊もそこからなくなった。 『ありがとう、死女神様』
今日は寒いです。 翌朝、彼女は剣を持って教会に出向いた。 「クレンさん!」 神父が驚くが、彼女には聞こえない。まっすぐ少女の前に立った。 「神を殺すのか? クレン?」 「人の魂を百年以上束縛したものを神と呼べるものじゃないわ。そして、百年以上地上に束縛された人の魂はもう人の魂じゃないかもしれない。だけど、放っておけない」 彼女は陣を書いて剣を床に差した。 「出て来なさい」 『我を殺すというのか? 人の女よ』 そんな声が鎖から響いた。 「いいえ、私は殺さない。でも、封じる事はできる」 『我々は神だ』 「人の魂を束縛し、百年以上も地上にいた神を、もう神と呼べるかしら? こっちのほうがよっぽど神よね」 彼女は、それを呼びだした。 『なんだと』 「すべて、あなた様のために」 彼女はそれに呼びかけた。 「クレンさん、あなたは一体......」 神父がへなへなと座り込む。 「あれはなんだ?」 「あれは、神も悪魔も関係ない。すべて食らうものだ。しかし、どこからそれを? まさか、あの剣からか?」 クレンの横に、黒い塊がある。その塊は鎖のみを飲み込む。金属で出来た少女は鎖から解放された。 「ありがとう、もういいよ」 黒い塊は消える。 ぴき 金属にヒビが入る。 「狂がでるか、吉がでるか」 彼女は床に差した剣を抜く。それを構えた。 「凶じゃないのか?」 「どちらにしろ同じよ。まともなはずはないの」
いや、何でもないです。 「さあ、神を殺しその娘を解放してください」 しかし、彼女は戸惑っているように見える。 「どうしたんです。早くなさい」 「......」 なにか言いたげに彼女は神父を見る。 「もう、いいです」 ふっと彼女から力が抜け、床に倒れる。 「クレン」 虎は彼女を前足でゆすり起こす。まもなくして彼女は目覚めた。 「あれ? ここは?」 「教会。クレン、操られていた」 「操られて?」 神父を見る。 「あれを解放させようとしていた」 「あれ......」 彼女はそれを見た。彼女の目には禍々しい物と痛々しい物が混ざり合った物に見えた。 「何、これっ!」 「少女の魂を束縛しているらしい」 「こんなものが......こんなものがあるなんて!」 彼女は涙を流した。 「クレン、泣いてるのか?」 「わかんない。自然に流れて来た。でも、分かるの」 彼女は一度宿に戻る。そのままベッドにもぐって寝てしまった。戻る際、神父の事などもう頭に無かったようで、彼を咎めたり蔑んだりする事はなかった。
生野女史から受けてました。『すきなものバトン』だそうです。
本出るよー。 ともかく、どこか入れる場所を探す。どこもかしこも閉じられていた。 「窓を破るか」 窓ガラスに向かい、目をつぶって頭から体当たりした。 暗い教会の中、散乱したガラスに気をつけながら歩く。 「おやおや、やはり虎ですね」 と、神父。その側には彼女が眠っている。 「どうしてクレンを」 「彼女は悪魔殺しの能力がある。だから、彼女に憑く悪魔を殺してもらう」 金属で出来ていて鎖につながれた少女。その昔大罪を犯し魂すら束縛されていると虎は聞いた。 「この娘がどんな罪を犯してこのような姿になったと思いますか?」 神父は続けて言う。虎の答えを待たずに。 「神を殺したんです。それも大神です。この娘は他の神々によってこんな姿になったのです。でももう許されてもいいでしょう? だからクレンさんに彼女の束縛を解いてもらおうと思いまして」 「これを解いたら、どうなるんだ?」 「さあ、わかりません」 「そんなこと、クレンがやったらどうなるんだ?」 「さあ、わかりません」 虎は不安になる。もし、彼女がこの娘の束縛を解いたら、彼女が神に罰せられるのではないかと。 「さあ、クレンさん、お願いします」 彼女はゆっくりと起き上がった。そして、少女の前に立った。
今の人、半ドンって言葉しらないだろーなーと思いつつ。 「さすがに神父さんね、人が出来ているっていうか、嫌な感じがしないだもの」 「ふうん」 虎は興味無さげにうなった。 「しっぽ、踏んでごめんね」 「気にしてない」 「あなたは、良く出来た虎ね」 虎はそう言う彼女に頭をなぜられながら別な事を思っていた。あの神父は何かが信じられない。 その夜、彼女はのっそりと起きだした。 ひたひたと裸足のまま、部屋を出て外に出る。それに気づかない虎ではない。 「クレン? クレン!」 彼女には聞こえず、そのまま歩く。 「どこに行くんだ?」 虎は彼女のあとをついて行く。西のエリアに向かった。街はまだ祭りの最中であったが、疲れが生じて半分ほど眠りながら酒を飲んでいるという状況だった。彼女には気づいていない。 彼女はふらりふらりと教会にたどり着く。 「クレンさん、よく来ていただきました」 神父が彼女を招き入れる。あと付けてきた虎は閉め出される。 「あの神父、どうして......」 考えている間はなかった。
何も考えてないわけじゃないけど、ほとんど考えてないとの同じって、何? 「どうして旅を続けていらっしゃるんですか?」 神父が尋ねて来た。 「いろいろありまして......」 「男は信じられないと言ってい......」 彼女は虎のしっぽを踏んだ。 「世界を知りたいからです」 「そうですか。その剣は?」 「これは父の形見です」 「お父さんの? そうですか。あなたもそれを使うんですか?」 「私は剣は使えません」 「それじゃ、一人旅は大変でしょう?」 「一人じゃないです。マレモンも一緒ですから」 虎は少し顔を上げた。 「だから平気です」 「そうですか」 食事を終える。 「いやあ、クレンさん、今日は久しぶりに楽しかったです。明日にはご出立されるとは残念ですが、よい旅を」 「いえ、今日はすっかりごちそうになっちゃって......ありがとうございます」 「いえ、本当に美人さんとお食事ができてよかった。では、おやすみなさい」 「おやすみなさい」 「クレン、あの人には......」 「あんなにいい男の人、初めて」 「そうか」 虎にはよく分からなかった。しかし、彼女の照れくさそうな仕草はわかった。
草うららか
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