気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
サボりたい気持ちになりました。
昨日今日の田中学院の話はクリスマスに続きます。 クラス委員長山川清太、副委員長熊田けい子、書記相原あゆ、船橋浩介。以上の四名は掃除されたばかりの教室で机を合わせ向かい合っていた。 「さっさと終わらせて帰ろうぜ」 清太は言った。 「ともかく、サンタだ」 「サンタクロース、懐かしい名前ね」 と、熊田けい子。彼女は超クールで通っている。 「けい子ちゃん、それ、まだ言う年じゃないよ」 「とりあえず、一、二年ならまだ信じている年だからな。夢壊すなよ」 「わかっているわ」 そして、いくつかのゲームを提案しては消され、増やされ、また消され。ゲームや内容はだいたい決まって、今度はサンタ役を決める。 「誰がいい?」 「そうね、中等部の東さんのおじい様なんかそれらしい雰囲気が出てるわよ」 「誰、それ?」 「でも、それ面白いかもしれない」 「やってみー」 そんなこんなでサンタ役は決まった。 十二月二十五日、クリスマス会へ。
書こうか? 田中学院(忘れた頃にやってくる) 少等部六学年 この学院の六年生は毎年、一、ニ年生のためにクリスマスパーティを行う。それが、最後の少等部六年生の仕事である。そう、仕事なのだ。つまり、一、二年生に楽しいんでもらわなければならないのだ。 「ああ、そんなのあったな」 山川京一郎は言った。『ミステリー研究会』の部室(教室の半分をロッカーや棚で仕切り、半分は物置になっている)にて、山川清太は従兄弟に相談していた。 「懐かしいな。俺の頃は倉本が張り切っていたなぁ」 「それよか、どんなことをやるんだよ? ゲームとか?」 「まあ、そんなところだろう。だけどな、一番はサンタ登場でプレゼントを配るんだ。それがメインであり、締めだ。ミステリーで言えば探偵が犯人のトリックを暴くところだな」 「いや、そんなの聞いてないから。そうか、とにかく最後にサンタが登場したらそれでまるく収まるんだな」 「まあ、田学の伝統だ。お前、一、二年の時参加しただろ」 「ああ、覚えてねー」 「......」 翌日の学級会の時間、クラス委員長である清太は教壇に上がり、チョークで『クリスマス会を盛り上げるにはどうしたらいいか?』と書く。 「意見、提案があればどうぞ」 が、誰からも意見はない。 「ちなみに最後にサンタ登場はかかせないそうだ」 やっぱり誰からも意見はない。時間が来て、結局何も決まらずに学級会は終わった。仕方がないので、クラス委員長、副委員長、書記二名が残り、クリスマス会の内容を考える事になった。
何をやるか決まっていないので、どうしようかと悩む。 「あなたの願いを叶えて差し上げましょう」 街頭でそんな言葉をかけられた。 「はあ?」 スーツをびしっと着た、それなりにいい年齢の男性だった。ルックスもそれなりに良い。 「ああ、なんか昔あったわね。『あなたの幸せを三分祈らせてください』とか」 怪しい新興宗教団体なのかなんなのか? それで自分の利益になるのだろうか? ともかく私は笑って断った。 「いいわよ、いらないわ」 しかし、男性は真剣そうな顔で私を見る。それでも、顔は笑顔だ。 「本当に叶うのですよ」 「いや、いらないから」 「何も代償はいりません」 「いや、いらないから」 「試しに何か言ってください」 「余計怪しい」 「頼みますから」 「じゃあ、あなたが離れてください」 「僕が離れては意味がないんです」 しまいには男性は泣きそうな顔をした。こんな街頭で男の人に泣かれたら私はどんな女だろうと思われるに違いない。 「じゃあ、たい焼き。たい焼きが食べたい」 「たい焼きですか。わかりました。ちょっと待ってください」 男性は近くのビルに入って行った。そして、一分ほどで出てくる。 「はい、たい焼き」 その手には熱々としたたい焼きが紙に包まれていた。 「ほ、ほんとに来た。しかも、早っ!」 試しにビルに入った。いくつかテナントや事務所の入ったビルだが、当然こんなところにたい焼き屋はない。 「ね、願いが叶ったでしょ」 「そうね......」 これは本当かもしれない。が、何かトリックがあるのかもしれない。 「さ、では、あなたの願いを言ってください」 「じゃあさ、剣と魔法の世界へ連れて行って」 うん、これならさすがに出来ないでしょ。 「お安い御用です!」 男性は何故かうれしそうに、そう言った。 私は「しまった!」と思った。そして、普段の空想癖を悔やんだ。この男は、正真正銘、剣と魔法の住人なのだ。そして、なんらかの理由で現実世界に迷い込み、誰かの願いじゃないと帰れないというベタな理由で帰れなかったのだ。 「ここが、剣と魔法の世界でーす。それでは、ありがとう、さよーならー」 「待てや」 私は彼の襟首を掴んだ。スーツ姿だった彼は今やピエロのようなかっこをしている。 「まさか、本当に連れてこられるとは思わなかったわ。アンタ、責任取んなさいよ」 「いや、これ、あなたが望んだことであって、僕の責任では......」 「なんでも願いを叶えるって言ったわね」 「ああ、はあ」 「でも、いくつまでとは言ってなかったわ」 「......と、申しますとあなたにはまだ願いがあると?」 「ええ、たくさんあるわ。ともかく、この世界での生き方を教えて。私が一人で暮らせるようになるまでね」
今日はですね、前半よかったんですけど、後半「ぎょっ」とすることが多かったですよ。
あれ、一週間もかかってしまったですね。書かなかった日もありますが、長くなったという感があります。
先日、あのDSで犬を飼うゲームを購入しました。 数日後、本も読み終わり(スタウトは意外にも読むのが早かった)再びビアソーイダ城の図書館に向かった。マーテルに本を渡すと満足そうにそれを収めた。 「また、どうぞ」 その後、大浴場に向かう。 「この間は入りそびれたからな」 「泳げるか?」 「それくらいはあるが、やるなよ」 大浴場に向かうと、この間の男たちがいた。 「へっ、なんだ簡単に入れるじゃねーか」 「あんなの脅しだろ? わけねーな」 と、軽口を叩いている。ああ、こいつらビアソーイダ王族の恐ろしさを知らないな。 「おい、お前ら」 そら、来た。 「お前ら、三日前に出入り禁止と言ったはずだ」 「そんな証拠、どこにあるんだよ」 「ベア=クマイス、バルド=ドゥーリ、ホッグ=クレッジ。図書館でマーテルに出入り禁止を言い渡された」 名前を挙げて行く。それが、彼の特技だ。顔だけでどこの誰かを把握しようとする。男たちはすごすごと去って行く。 「親父に聞いた。ヒーガルの孫だって? 俺らとは一応血縁関係だったんだな」 「ああ?」 そうスタウトに言ってブリュットは去って行った。 「俺、名前教えたっけ?」 と、後に風呂につかりながら奴は聞いた。 「図書カードに名前書いただろ」 「あ、そうか」 「しかし、名前はともかく血縁者と知れたからには......」 翌日、逗留している宿屋に手紙が来た。 「スタウト、ほれ、来た」 「ああ?」 その手紙には、練習試合の参加の旨が書かれていた。 「これって、出ていいのか?」 「そうなんじゃないか?」 そして、奴は試合をめちゃくちゃにするだろう。俺の見る限り、今のところスタウトに敵う奴はいない。
ちょっと津軽海峡を渡っただけで都会のような感じがする。道路が多少狭いだけで青森は都会なんですよ。うん。
なんかね、大荒れなんですよ。今もびゅーびゅー風吹いてます。とうとう、雪がフロントガラス(車)につもりました。そんな季節なんだなぁ、と思います。寒いです。 ブリュットは確か、次男だったか。年はスタウトより上だ。 「マーテル」 「兄さま、この人たちは出入り禁止ですぅ」 「ふーん。わかった」 それだけ言って、また奥へ戻ろうとする。 「お前、マーテルの剣を受けたんだな?」 スタウトに向かってそれだけポソリと言い、本をまた顔に乗せる。 「おい、出入り禁止ってなんだ?」 と、男の一人。そのまんまの意味だ。 「あなた方は、当城の一般開放施設すべてを使う事が出来なくなりました。兄さまに顔を見られたからにはあなた方はもう出て行かなくてはなりません」 「はあ? じゃあ、何か? 風呂も使えないのか?」 「使えません」 男たちは笑った。笑いながらも図書館を出て行った。静かになるとマーテルは俺たちのそばでぺこりとお辞儀した。 「ご迷惑をおかけしました。どうぞごゆっくり本を探してください」 そう言って、男たちが散らかした本を片付け始めた。 「お、これなんか面白そう」 スタウトが手にしたのは『世界珍生活紀行』という本だった。俺も適当に読みたい本を手にする。 「あ、あの、お名前をここに。旅行者なら出来れば出身地もお願いします」 マーテルはカードを差し出した。 「俺は、ロセウ=マスディス。カードなら以前作った」 「はい。今探してみます」 その間にスタウトは名前を書いた。 「では、期限は一週間。本は旅には持って行けないのでその前にお返し願います」
なんかちょっと昔に戻ったみたいなタイトルです。 図書館に入ると軽くカビ臭い匂いがした。ここは昔からそうだ。俺はアニムほど本は読まないが、旅の途中によっては何か本を一冊読んで行く。ここの本は国外持ち出し禁止だから読むとしたら図書館内か宿の部屋ぐらいだ。 スタウトは面白そうに本を眺めている。本人の言う通り本は読むらしい。 「来館の方ですかぁ」 カウンターからひょこっと頭が飛び出た。二本のおさげの少女だった。見た事がある。確か、この城の王女の一人、マーテルだ。彼女は先ほどの練習試合に参加していない。 「貸し出しの際には私に声を掛けてくださぁい」 また、頭が引っ込む。 しばらく本を選んでいると、数人のウォンテッダーが入って来た。本を手にしてどさりと床に落とした。 「すいませーん。本は乱暴にしないでくさぁい。古いので壊れやすいですからぁ」 マーテルが間延びした声で注意した。 「ああ? 嬢ちゃん。文句あんのか?」 もう一人の男もまた本を乱暴に床に叩き付けた。 「ああ! そんな乱暴にしないで。この本はオリオ王の代からある古い古い本なんですから」 「天下のビアソーイダがそんなみみっちいこと言うなよ」 ああ、やばい。こういうことをしていると......。 「おい」 スタウトが男の腕を掴む。 「本は大事にしねーと駄目だぜ。でないと......あの子が黙ってないぜ」 マーテルがカウンターから出て来ている。小柄だがその両の腰には剣が差してあった。その両の剣を抜き、男に構える。やはり、ビアソーイダ王族だ。 「あなたも邪魔するんですか? なら容赦しません」 彼女が動く。二本の剣がスタウトに向かった。スタウトはそれを剣で受けた。 ヒュー、という軽い口笛。スタウトが発したものだ。それが彼女への感嘆だ。 「誤解するなよ、俺は本を借りに来たんだ」 「あっ」 「それよりも、この野郎たちを出入り禁止にしろよ」 マーテルの剣に驚いたのか、男どもはあぜんと突っ立ている。 「あ、はい。兄さま、兄さまぁ」 彼女が剣を収めて、誰かを呼んだ。彼女の兄は最低でも三人はいる。奥から返事があった。 「なんだ? マーテル」 開いた本を顔に乗せていた男だった。やや、ぼんやりとした風貌だった。ブリュットだ。彼も先ほどの練習試合に参加していない。
いや、初めてな勤め先っていつもそうだし。自己紹介ってホント苦手だわ。長くていいのか、短くていいのか。もう「○○(名前だけ)です。よろしくお願いします」で終わっちゃったよ。いいのか? でもなんか忙しそうだし、なんかすぐに違う話題になっちゃったし。ま、いっか。 「せいぜい見るだけにしとくんだな」 「へーい」 わかったのか、わかってないのかよくわからない返事をする。大方わかってないだろう。あー、やだやだ。試合中は目を離さないようにした。何事もなく終わる。 「どうだ? 風呂でも入って行くか?」 「旅の疲れを癒すってか」 「そうだ。この城の連中は何を考えてそう作ったのかわからんがな」 ある程度の本がそろっているという図書館と大浴場。代々王がそれを管理している。この城の王子や王女は誰かまわず剣を握り腕を磨き、放浪癖を持っている。それは、スタウトも変わらない。 大浴場は男女別で試合後の為か込み合っていた。あまりにも人が多い為、あきらめた。 「本でも読んで行くか」 スタウトが言う。まさか、奴がそんなことをいうとは思いもしなかった。 「お前、本を読むのか?」 「ああ」 「漫画とかじゃないだろうな」 「ノンフィクションの冒険物とかは活字でも読むけど」 「......」 活字を読むという高度な頭を持っていたのか。 「どうした? ロセウ? 俺が本を読むのがそんなに変か?」 「ああ、変だ」 「あのな......、まあ、俺が本を読むようになったのはじいちゃんのおかげだからな。ウォンテッダー引退したじいちゃん、よく本を読んでくれたんだ。それで親父や兄ちゃんや姉ちゃんが旅に出てる時、土産にもらった本を何度も読んだんだよ」 「......悪かったな。馬鹿にして」 「やっぱ馬鹿にしていたのか」 「しばらくここに滞在するか?」 「面白い本があったらな」
今度のところは日曜日はお休みというところなんですよ。(その他に一日休める。週休二日だけど土曜日は休みじゃない)
なんでか、ものすごっく眠いです。あ、もう十二時になるところだわ。当たり前か。 スタウトと旅をしてから、一ヶ月たった。 ひどく後悔している。このスタウトという男は何事にも首を突っ込みたがる性格だった。それでも、あのバルクの孫なのだ。世の中、間違っている。 「ここがビアソーイダか?」 「そうだ。お前の祖父の生まれた国だ」 「ふーん」 奴は目を細める。何か企んでいる時などはそういう目をする。油断ならない。 「そっから入れるんだな」 「ああ、ビアソーイダ城は一部一般に開放されているからな」 それは、図書館と大浴場。むろん、無料である。 「普通、城ってそう一般の奴は入れないだろ」 「普通じゃないのだ」 「そうか。でも、行ってみようか」 スタウトはにやっと笑うと城に向かって行く。ビアソーイダ城はいつも人でにぎわっているが、今日は更に人が多い。何事かと思えば、王族の余興があった。 「なんだ、なんだ?」 「公開練習試合だ」 「公開練習試合?」 「王子どもの余興だの」 この城の王子たちは、ここにいるスタウトと年が変わりない。 「一般参加とかねーの?」 「出るつもりか?」 「うん」 「やめとけ」 お前が出たら、大混乱だろうな。
リースリーズはとりあえず終わりだしな。うん。 起きたら秋だった。 我ながら、感動がない。葉が落ちきって裸の木を見る。「ああ、秋も終わる頃か」という気になるが、それ以上の事は思い浮かばない。 「マスター、おはようございます」 おかっぱ頭の少女が顔を出した。イプルだ。 「おはよ、イプル」 彼女は実りの妖精と言う。彼女は秋の妖精だった。まさに今が活動期である。付いてくるとはいえ自分が寝ている間は彼女らに自由行動してもらっている。 「エーデルもそろそろ活動期に入りますよ」 「ああ、そうだね。俺、どんくらい寝ていたんだ?」 「そう、長くはないですよ。半年くらい」 今回は短いな。いつもならニ、三年くらいあっと言う間にすぎるのに。 「目が覚めたのは、いいにおいがするからですか?」 「うん、確かにする」 ああ、そうか。この匂いだ。懐かしい匂い。 「この近くに村があるんです。収穫祭のようですよ」 せっかくだからと彼女は俺をそこまで引っ張った。村は祭り騒ぎで俺なんか入って来ても気に留めなかった。 「あら、ウォンテッダーの方? 楽しんで行ってね」 少女がそう声をかけて、また離れる。つまり、自由参加だ。テーブルにはたくさんの料理が並んでいる。その中のたくさんの匂いの中から、甘酸っぱい匂いと香ばしい匂いを放つアレがあった。 「ああ、やっぱこの匂いか」 アップルパイだ。 「兄ちゃん、何食うんだ?」 中年のオヤジが声をかけた。 「そのアップルパイをくれ」 「ほらよ」 「ありがと」 できたてらしく湯気が立っていた。口に入れる。 「マスター。おいしい?」 イプルが聞いてくる。 「ああ、うまい」 「当たり前です。私たち、実りの妖精はそれが仕事なんですから」 「そうだったな」 でも、母さんのアップルパイはもっとうまかった。 「兄ちゃん、なんか面白い話ねーか?」 先ほどアップルパイを渡したオヤジだった。 「ああ、じゃあ、このアップルパイについて話してやろうか? 俺のおふくろな、夫婦喧嘩の後に必ずアップルパイを焼くんだ、なんでかっていうとな......」
滑ってる私です。給食関係は面倒なんですよ。(検便結果がまだ出ないので、働けない) 『ねえ、レイム。シルバーって知ってる?』 「ああ、その昔、フォーランズを騒がせた怪盗だろ。かなり昔の話だ。伝説に近い」 食事を終え、宿のベッドの上で食休みをしているところだった。寒いので毛布を掛けている。 『私、今度はそれ名乗ろうと思っているの』 「いいんじゃないか?」 リースリーズと一緒になってからでも彼はウォンテッダーを続けている。ただし、勘当の身を解かれた彼は冬になったら実家に戻って家の手伝いをするつもりでいる。また旅をしている間、嵐などに遭うと身動きできないので宿で裁縫をしている。 『私にもなにか作ってよ』 「あんたも? でもよ、結局俺が着るみたいなもんじゃないか?」 『そうだけどさ、私も人間の女の子に近い物があるのよね。だから、かわいい服とか着たいのよ』 「そうか。どんなのがいいんだ?」 『そうねぇ』 リースリーズが黙っていると、レイムはちょっと思いついた。 『本物のリースリーズのことを考えているの? 止めな。盗族に会うなんてしない方がいい』 「俺の頭、読んだな」 『盗族は人間ながら魔族に近いものだよ。殺しはしないけれど、その代わり生きる為なら何でもする。仲間を見捨ててでも自分を生かすんだ』 「そんなに酷いのか?」 『リースリーズはその中で暮らしていた。あの子は人間に近いけど、やっぱり盗族だったわ。死ぬときはほんと、間抜けだったけどね。まず、盗族なんかに会ってみなさい。すぐに餌食にされるわ。あいつら、自分たちは盗む事しか知らないから奴隷をほしがっているのよ』 「リースリーズが、とっくに死んでいる事を教えたいんだけど」 『私は今、お腹いっぱい。だからリースリーズは休業中。表に出なければそのうち死んだとかっていう噂が流れるわ。それに、リースリーズは私なのよ』 「わかった。ごめん」 『わかればよろし』 「でも、なんかシルバーって名乗るんじゃないのか?」 『やっぱやめた。リースリーズがいい。あ、そうそう。シルバーはね、一度現れなくなって、何十年もして再び現れたのよ』 「うん。なんかそれは初代の孫だとかなんとか」 『私もそれをやろうかと思って』 「そん時は、お前、俺から離れて別の誰かに憑いているだろうな」 『そうね......。あ、そうだ。こんなのが欲しいな』 数ヶ月して、レイムは一着のドレスを仕上げた。 それを今、遠く離れたジョウロフェンツァのイザリアが手にしている。 「お、すごいじゃないか」 イザリアの父がそれを見て言った。彼女には少々大きいが、彼女がもう少し大きくなれば問題ない。 「リースリーズから、体を勝手に使ったお詫びだって。レイム君って、やっぱり上手ね」 レイム=トグスマン。ウォンテッダー引退後は、実家があった場所に戻り、そこで仕立て屋として余生を送った。センスの良さとシンプルで着やすく、値段も手頃な服を作るという事でウォンテッダー御用達となり街は小さいながらも活気に満ちた。少々、余生としては忙しいものだったが。 それはリースリーズにとっては退屈だったが、最期まで彼と一緒にいた。 おわり
HPを手直したんだけど、携帯で見れないなと思っていたら、登録していたアドレスが間違っていた。確認したのに......。ともかく、これでトップページには行けるようになりました。あとは大きすぎて一画面に入りきれないのを半分にするだけだわ。 「だが、リースリーズ。お主は優しい奴のようだ」 「何言うんだ? アニム」 「小生が一番嫌な奴に変身しないからだ」 それが、ゼム=ワーケードということをバルクは知っている。表向きは商人だったが、裏では人身販売もする。エルフのような珍しいものも入る。アニムはその男に買われた。 「そうね。そんなのに変身すると逆上されると怖いから。それより効果的なのは、こっちよね」 彼女はまた姿を変えた。栗色の髪の少女。二人がよく知る顔だった。 「ルイ」 「悪魔の女の子ね。この子の特技は......」 恐ろしく強力な睡魔が彼らを襲う。 「この姿には攻撃できないでしょ? このやり方の方が好きなのよ」 彼女の姿が元に戻る。倒れ眠り込んだ二人に笑みをこぼした。 「大丈夫ですか? お二方?」 ウェズマーカーの執事が二人を揺すり起こす。 「......やられたのう」 「ああ、全くだ」 リースリーズはその後盗む物を盗んで屋敷から去った。 「大丈夫だったのか?」 「ええ、わたくしは地下で眠らされていただけですから」 執事も怪我らしいものはない。 「ウォンテッダーのお二方、申し訳ございません。わたくしがもっとしっかりしていたら......」 執事もあまり期待していなかった。先日ですでにウォンテッダーのほとんどはやられていたのだ。 「これは旦那様から、少しですが」 ウェズマーカーは奮闘してくれたウォンテッダーに少しばかりの労い金を用意していた。後にこの事は新聞に載り「妻との思い出はまだまだ作る」と言った。 宿に戻る。酒屋はまだ開いていた。深夜をすぎているので人は数えるほどだった。 「親父、ウィスキーのストレートで」 「果実酒のストレート、甘いので頼む」 カウンターに座るなり注文。 「珍しいな、お前が」 「お主こそ、ウィスキーなんか飲むとは思わんかった」 カウンターにグラスが置かれる。それを手に取るなり一気に飲み干した。ウィスキーにしても果実酒にしても喉が焼けるような気がした。 「親父、つまみ。サラミとクラッカー、チーズ付きで」 「ローストビーフサンド」 「あと、ビール」 「すまん、小生はジュースで」 注文の物が目の前に並ぶとアニムはずずっとジュースをすすった。 「まさか、記憶や経験がアダになるとはのう」 「ああ。そうだな」 バルクが一口、ビールを流し込む。 「だけど、あれはなんとかしねえとなんねえ。どうしたらいいんだ?」 「ど素人だ」 「は?」 「相手が人間ならいつかそれを乗り越えることは可能だ。お主のところの奴ら以外ならのう」 バルクが少し引きつる。しかし言い返さなかった。 「だが、ドラゴンの長だの妖精主だの魔王だの。到底乗り越える事は不可能だ。人間が足元におよぶものではない。だから、そんなものはもちろん、魔族も目にしたことがないウォンテッダーに託すしかないだろ」 「なるほどな。だけどよ、そんなんじゃリースリーズにも相手になんねえんじゃねえか?」 「ビギナーズラック、そういったものに掛けるしかないだろ」 「そんな奴、いるか?」 アニムはローストビーフサンドを口に入れるのを止めた。 「さあてのう」 ちょっと考えてから続ける。 「ともかく、そうでもせんとリースリーズを捕まえるはできんだろ」 そして、今度こそローストビーフサンドをほおばった。 リースリーズ序章、おわり
昨夜、寝ていたらお腹が急にキリキリ痛みました。 「そうだのう。まさか本当にリースリーズだとは、思わなかった」 「お前、当てずっぽかよ」 「そういうお前こそそうだろ、バルク」 「あら、二人とも。勘はいいのね」 「リースリーズ。お主の眼、嫌だのう。何か見透かされているような気がする」 アニムが懐からカードを取り出す。 「そのカード、あなたの精神で出来ているの? エルフの割に出来るじゃない。でも、私にはあなたたちの事は全部お見通しなのよ」 彼女の姿が変わる。その姿は人間の青年の姿だった。二人が知る顔。 「あなたたちって、偶然の塊のようね。普通のウォンテッダーって魔族に遭遇するのが普通よ」 「セルヴェス......」 かと思うと、二人は吹き飛ばされ壁に激突する。 「がっ!」 「......無事か、アニム?」 「ドラゴンの長。こんな人間の姿をしているの。意外ね。ウィングドラゴンの名はだてじゃないのね。すごい風だわ」 ドラゴンの長、セルヴェス。人間の姿で人間並の力でドラゴンを束ねていた。バルクたちはその最期に立ち会った。 「いっつー......お主、記憶を読んでおるのか?」 「ええ。そして、あなたたちの記憶を利用できる。妖精主にも会っているわね」 青年の姿が変わる。今度も青年の姿だが、だいぶ雰囲気は違う。妖精主は、元は人間だった。それを思わせるような事件に巻き込まれたことがある。 「こんな姿だった?」 「げっ」 「へえ、男なんだ。知らなかった」 まだ壁ぎわに座り込んでいた二人を冷気が襲う。 「ま、まずい」 アニムが手にしているカードに魔力を込める。暖かい風が二人を包む。 「バルク、体、動くか?」 「ああ、助かったぜ」 バルクが立ち上がり彼女に向かっていった。 「で、魔王に会っている」 銀髪の少年の姿。アインマルト島に住む、少年の姿をした魔王。そしてこの世界の管理人。彼らはこの魔王にも関わってしまった。 「でぃやっ!」 彼女の姿が一瞬二つに裂けた。すぐに戻る。 「ドラゴンの剣でも魔王は斬れない。残念ね」 ドラゴンの魂は物質で、死す時に何かの形をなす。バルクが持つ剣はセルヴェスの魂が変えた姿だった。バルクはセルヴェスに気に入られ、その剣を手にする資格を持っている。 「駄目だな、バルク。小生らに勝ち目がない」 アニムがため息をつく。
その一 えーと、仕事をする日が決まりました。 そうと決まると後は料理を堪能するだけだった。この二人は意外に単純に出来ている。 次の日の晩、二人はウェズマーカーの別荘(もとい、支店)を訪れた。妙な事にウォンテッダーは二人だけだった。 「おかしくねえか?」 「確かに妙だのう」 「しかし、お二方でも来てくださるのはありがたいことです」 この別荘に住み込みで働く初老の執事が二人を出迎え、中に通す。 「二日前、リースリーズが下見に来るという事で、多くのウォンテッダーたちが詰めかけましたが、いとも簡単にやられてしまいまして......」 「二日前に?」 「ええ」 執事の話によると、二日前リースリーズは下見に現れた。ご丁寧にこの時にも予告状は出している。彼女は大勢のウォンテッダーをいともあっさりと倒し、余裕で下見して出て行った。 「なので今夜はウォンテッダーが来てくれるかどうか、不安でした。大切な旦那様の思い出の品、奥方様とのラブラブな肖像画を盗まれたとしたら、わたくしめは旦那様に会わせる顔が」 「ラブラブか......」 「ラブラブ......」 二人は顔を見合わせる。笑うよりも眉をひそめた。 「夫婦仲は円満な方がよい。今月に入ってからというもの、副業の占いが、夫の浮気に悩む主婦の悩み相談室になりつつある。どうやら今月は夫婦仲が悪くなる何かがあるようだ」 「ほう、では、わたくしめも気をつけなければ」 「しかしよ、それにしても俺たち二人はねえよな?」 「案外もうすでにリースリーズは忍び込んで、先発のウォンテッダーを片付けてしまったのかもしれぬのう」 「じいさん、そこんとこどうなんだ?」 「隠しても小生らの目はごまかせられん、リースリーズ」 二人は執事に向かって言う。 「ああ、やっぱバレちゃったか」 執事の声が少女の声に変わる。そして、姿も黒い服の少女に変わった。 「主婦の悩み相談室、私も聞いてみたいわ」 「小生の代わりに聞いて欲しいくらいだが、そうもいかん」 アニムが身構える。 「アニム、やっぱ嫌な予感がするわ」 剣を抜きつつも、バルクはやや情けない言葉を発した。
行きは大雨、帰りは雪。
なんか妹の寮の近くにお好み焼き屋があるの。店員さんが注文うけると「ぽんぽこりーん」て語尾付けるのよ。呼んでるのに来ない時とかも、それやられると怒るに怒れないですね。
HP作り直しているんですが、やっとこさ公開っ! って、公開ささんないですけど。なんか、どっか悪いんですね。いつものことです。そのどっかが分かりません。 『リースリーズ・序章』(没案) とある街に二人はやってきた。 「のう、バルク。リースリーズを知っておるか?」 フードを目深にかぶった少年が隣の男に声をかけた。 「いや、知らねえな」 中肉中背のがっしりとした体の中年の男が答える。バルクと呼ばれた男は少年の方を見た。 「そうだろうな。未だウォンテッドされてないからのう」 「そいつがなんだってんだ? アニム」 少年はにやりと笑う。(フードに隠れているが少なくともバルクにはそう見えた)少年......アニムはポケットからメモを取り出す。バルクは受け取ってそれを読んだ。知っている限りだけだが、資産家、商人、富豪の名前が並んでいる。小国の王族の名前もあった。 「なんじゃこりゃ?」 「リースリーズを個人的にウォンテッドしている者たちの名前だ」 「どおりで」 知らない名もあるが、金を持っている者に変わりないだろう。 「リースリーズって何者なんだ?」 「噂でしか聞いた事がないが、盗族の娘だ」 「盗賊......あ、盗族か。奴らの盗みは生活のためだろ」 「それが、リースリーズという娘は奇妙なものばかり盗むらしい。輝く真珠よりも輝きを失った古い真珠を盗み、良く映る鏡よりも錆びて曇った鏡を盗む。個人には宝と言えど、他人にとってはガラクタに近い物を盗むそうだ。そのため今では一族を抜けて一人で行動しているそうだ」 「ふーん。で、なんでウォンテッドされないんだ」 「盗む物が、価値のない物だからのう。ウォンテッドにするには罪が軽すぎるのだ。しかし、こうやってお偉いさん方がウォンテッドしてくれておる」 「それで、そのリースリーズって奴がこの近くにいるというわけか」 「ま、情報だがのう」 アニムが言うにはこの街の金持ちの家にリースリーズの予告状が来た、という。 「もちろん、その家もリースリーズに賞金を掛けたのだ」 「しかしよう、個人手当をあてにすんのか?」 「その家が、ウェズマーカーだったら、魅力的だろう?」 「なっ! あの、ウェズマーカーなのか!」 ウェズマーカーの名前はバルクも知っている。王族よりも貴族よりも金回りがいいとされる商人の長と言っても過言ではない、とされる世界的にも有名な富豪だった。そのウェズマーカーが賞金を出すとなれば、公的よりも期待できる。 「しかし、こんなところに......」 ウェズマーカーの家は世界の中心とされるビアソーイダ島にある。 「ここには別荘があるのだ。別荘というよりは支店と言うべきかのう」 「ほー......。で、リースリーズはいつ来るんだ?」 「明日の夜だ」 「そりゃまた、いい時期にこの街に入ったな」 「そうだろ?」 「だがよ、俺、なんだか嫌な予感がすんだよ」 バルクは声を潜めて言う。彼の勘はよくあたる。 「小生も占ってみたが、あまり良い卦が出てない」 しかし、賞金はいいはずだ。あのウェズマーカーが出すとなればこんなおいしい話はない。しばらく二人は考えていた。考えているうちに安宿に着き、食堂に入って適当に注文して、更に考える。 アニムは鳥足のフライを手に取りかぶりついた。バルクは小魚のフライを手に取り頭からかぶりついた。 「いっちょやるか、アニム。良い卦じゃないけど悪い卦でもねーんだろ?」 「そうだのう。虎穴に入らずばなんとやらだ」
えー、午後から健診に行ってきます。今日はなんか調べる事があってネット使っているので、ついでにもう日記書いちゃえ的な気持ちです。
不肖、草、就職できそうです。 「おう、兄ちゃん、ウォンテッダーかい?」 「一人かい? さびしーねえ」 「おじさんたちが遊んでやるから有り金、金目のもの全部だしな」 突然の強盗団にレイムはため息をついた。でも、一人でかなう相手じゃないのは見て分かる。 「レイム、任せてよ」 「?」 私はレイムの体を乗っ取る。人間の男の体は初めてだけど、意外に動きやすい。 「経験豊富なおじさんたちに教えてあげるわ」 「ああ?」 「その経験がアダになることがあるわよ。例えば」 私は姿を変える。おじさんたちが今まで会った、人々。その中には人でないもの、人としては超越しているもの。 「すごいわ、ファイアードラゴンにお知り合いなの?」 赤金色の鱗に覆われたドラゴン、ファイアードラゴンはその名の通り、火を噴くドラゴンだ。人間には脅威である。 「ひっ! ふぁ、ファイアードラゴン!」 「なんでこんな所に!」 おじさんたちがわらわらと逃げ出した。いなくなったのを見計らって、私は体を動かす主導権をレイムに返す。 「今のは?」 「あのおじさんたちの記憶を読ませてもらったの。その記憶を投影しただけ。私には姿を変える他に、人の記憶を読む事もできる。相手が一番傷つけたくないものに変身して逃げたり、強いものに変身して今のように蹴散らしたりするわ」 「ふーん。それで、今まで逃げていたんだ」 「あなたも、そういうのに会うといいわ」 「さっき、ファイアードラゴンに変身しただろ?」 「あくまで、目の前の人の記憶だからできないわ。だから相手が自分より強いのに会った事ない人には無理ね」 「面倒だな」 「ま、面倒な方が面白いことがあるわ」 「まあな。ウォンテッダーになってまだ会った事がない人たちがいるよ。なんかね、やたら強い剣士とやたら強い魔法使いのコンビがウォンテッダーにいるっていう話だ」 「そう。会えるといいわね」 二人、見た目には一人だったが、長い間一緒だったという。
今朝、自室のゴミを片付けようとしたら、なくしていたピアスが出て来た。すごいお気に入りな分、うれしかったです。たとえ、ゴミ箱から出て来たとしても。自室なだけに生ゴミとか入ってないから大丈夫ですよ。(何が?) リースリーズ。私の名前、とされている。本来の名前はあったけど、リースリーズでいいや。 私はレイムの中に潜んでいる。人間の中にいないと私は存在できない。 「リースリーズって、まだレイム君の中にいるんだよね?」 「ああ、そうだよ」 「出てこないのかな?」 「さあ」 今、出てくるつもりはない。しばらくこの子、イザリアの中にいたけれど、彼女は全く気づかなかった。私もその辺は配慮したつもり。この子の意識や注意を一瞬奪って物を盗ませたのだから。盗んだ物は私の空間に置いておいたから見つかるはずもない。 「さあって、リースリーズが暴れたりしたらどうするの?」 「そん時はそん時だ。でも、今のところはまだ大人しいだろ」 「そんな、のんきな......」 彼女はとても心配そうにしていたけれど、レイムの言う通り私は今のところ動くつもりもない。盗みもするつもりない。今は満たされている。貪欲に思い出を盗って来た結果、私は百年くらい食いだめしたようだ。 「結局、リースリーズってなんだったんでしょうか?」 リューが言う。この子からは懐かしい匂いがする。私がまだリースリーズに取り憑く前に会ったドラゴンの匂い。残念ながら彼女にはその記憶がない。 「思い出を糧にする、無害な魔族だよ」 「でも、盗むのはよくないです」 便宜上、魔族と名乗ったけれど、本当のところ妖精の一種だ。妖魔といってもいい。本当は思い出だけあればいいけれど、盗みをするようになったのはリースリーズの影響があるのかもしれない。彼女は、盗族なのだから。 ウォルティアはずっと黙っている。街を出てから、特にステルブと別れてから元気がない。仕方がない。彼女が好意を持った男が、あんな跳ねっ返り娘の夫だったんだから。彼女には慰めの言葉もない。思い出を食べてしまおうとしたが、あいにくお腹はいっぱいだった。いや、少し余地はあるけれど、彼女がステルブと築いた思い出は少し大きすぎた。 そんなウォルティアと別れ、リューと別れ、フォーランズに寄り、そしてジョウロフェンツァに着く。 「いろいろありがとう、レイム君」 「ああ。こんな結果になってしまったけど」 行く先々で、盗まれた物が戻って来たが、あまり喜びがなかった。私がおいしく思い出を頂戴したからだ。 「いいよ、仕方がないもの」 物わかりのいい子は好きだ。少なくとも私は。 「それに私にはすごくいい、忘れそうにもない思い出と品が出来たんだから」 確かにね。 「このワンピース。着れなくなっても大事にとっておくね」 「じゃあ、今度立ち寄るときは、花嫁衣装がいいか?」 「作ってくれる?」 「もちろん。ただし、高いぜ」 「期待するわよ」 「じゃ、イザリア、いい医者になれよ」 レイムは一人になった。そしてやっと私に話しかけてくれた。 「なあ、ここで髪飾りを盗む時、お前は誰に取り憑いていたんだ?」 「ああ、それはあの子のお父さんよ」 「あ、納得」 あの子のお父さんに取り憑いて、麻酔薬を流し髪飾りを盗んだ。その後、私がひっこんだだけ。リースリーズが死んでから、いや、今までいろんな人に取り憑いてきたけれど、私が取り憑いているということを本人が知っているのはレイムだけである。
おとといのペットショップのハガキですが、もっていくと粗品をくれるという事で持って行きました。(すごく近所) ステルブの記憶も街の人たちの記憶も戻った。声を掛けられても懐かしさは感じなかった。向こうもあまり感じていない。 「記憶が戻ったけど、すっきりしないんだ」 ステルブはそう言った。 「でもな、ヴェスラには謝れよ。そして、お前の子供大事にしろよ」 「お前にも、迷惑かけたな」 「全くだ」 本当にそうだ。おかげで、もう仕立て屋になる気がない。 「お前、どうする?」 「まだ、仕事が残ってる」 イザリアやリュー、ウォルティアを元の地に帰さなければならない。フォーランズによらないと。 久しぶりに実家に戻った。戻った事に関しては親父もおふくろも喜んでくれた。 「ま、俺の息子だからな。そんな甲斐性ねぇと思ってたよ」 と、親父。 「よく言うぜ。目くじら立てて、出て行け言ったのは親父だろ」 「んなのは忘れた。まあ、呑めよ」 「明日また出るんだよ。そんなに呑めない」 「ちぇっ、面白くねえ、息子だ。なあ、母さん」 「何いってんだい。毎晩のように、息子と酒が呑みたい言っていたのはおまえさんだろ」 おふくろは続ける。 「レイム、お前、また旅に出るのかい?」 「ん、まだやる事が......後始末があるんだ」 「お前、腕は?」 「最近、イザリアの、黒髪の女の子が着てるワンピースを作った」 イザリア、リュー、ウォルティアの三人はさっき家族に紹介して夕食を食べて宿に戻った。今は家族そろって(妹たちはもう寝たが)居間にいる。 「やっぱり、腕は落ちてないよね。うちで仕立て屋やるつもりないかい?」 「ごめん。俺、以外にウォンテッダーも向いているんだ」 「じゃあ、仕方がないね。止めやしないよ。あたしゃもう寝るよ」 と、おふくろは寝室に引っ込む。 「レイムよう」 「何?」 「あいつは、おめぇが帰ってくるのをそりゃ、首を長くして待っていたんだ。腕を聞いていたが、あんなもん建前だ。だから、いつでもたまにでも帰ってこいよ」 「うん」
国民的長寿アニメのこと。
先日、オープン前のペットショップからハガキが来た。なんでうちがジュニア(わんこ)を飼っているのを知っているんだろう(しかも名前まで)、と思っていたら近所のペットショップ(利用した事がある)から、『前の従業員が顧客リストを持ち出した』というような詫び状が来た。 そして、もう誰がリースリーズなのか分かっていた。 「イザリア、君の中にリースリーズがいる」 「えっ?」 「全く、うまい事を考えたもんだよ、彼女は。俺たちはあとを追っていたとばかり思っていたのに......。そして、人間に寄生しているんだもんな」 それが、彼女が人間とされるゆえんだろう。 「よく、分かったわね」 イザリアが姿を変えて行く。しばらくすると小柄な少女が目の前に立っている。リューもウォルティアも驚いている。 「あーあ、バレちゃしょうがないわね」 「あんたは、思い出を糧にする魔族なんだろ?」 記憶とか、感情とか、そういう形のないものを糧に出来るのは魔族くらいだ。 「そうよ。それらが私の糧。そして、こうして人間に取り憑てでしか生きて行けないの。この姿だって、もとはリースリーズって名前の盗族の娘だったわ」 「じゃあ、あんたの本来の名前は何だ?」 「忘れちゃった、そんなの」 「元のリースリーズはどこだ?」 「死んだわ。運悪く足を踏み外して谷の底に真っ逆さま。その前にその近くの人間に取り付いて、この体に会ったの。後は糧を得るだけだもの」 「俺は、あんたが盗んだものを返して欲しいんだが」 「ま、バレちゃーしょうがない。返してあげるわ」 彼女は手を胸の中に入れた。そこから髪飾り、女神の涙、勲章、時計の針が現れる。テーブルにそれらが並んだ。 「それからイザリアから離れろ」 「私は人間に取り憑かないと生きられないのよ」 「なら、俺に憑けよ。その子は将来有望な医者になるんだからな」 「そう言ってくれる人間、初めてだわ」 少女の姿が、またイザリアに変わって行く。そして、俺は何かが入ってくるような感覚がした。 『悪くないわね』 リースリーズの声が頭の中に聞こえる。 「だろ?」 見ると、イザリアが倒れていてウォルティアが様子を見ている。ややすると彼女は気がついたようで自分で立ち上がった。 「レイム君、私......」 「ま、気にするなよ。相手が悪いだけだ。それより、髪飾りが戻った事だし、ジョウロフェンツァに戻ろう」 彼女はテーブルの髪飾りを手に取った。戻ったというのに浮かない顔だった。 「なんでだろ? これを見てもお母さんを感じない」 それが、思い出を奪ったという事だった。 『本当なら、抜け殻はすぐに捨てるんだけどね』 そんなリースリーズの声が聞こえた。
ヴァルキリープロファイル シルメリア。本日を持ってクリアしました。あのイカレ魔術師を倒しましたぜ、奥さん。なんか、トライエースのラスボスってイっちゃってる方が多いな。 俺たちはリースリーズを追ってここまで来た。しかし、「追って来た」というのはあくまで俺たちの感覚だ。彼女は一緒に来ていたんじゃないか? そう考えると船で会った事も不思議じゃない。予告状は俺たちが現地に着いてからから出したのだ。俺たちは現地に着いて、それがいつ来た予告状なのかは聞いてない。もう既に何日か前に着ていると思い込んでいるからだ。それに、手紙類は人間より優先的に船に乗れる。急ぎの手紙ならなおさらだ。 リースリーズは人間ばなれした術も持っている。音も立てず俺たちについて来れるのは......。そう考えて、身震いがした。余計、眠れなくなった。 朝、眠い目をこらえて食堂に降りた。一晩中、考えて俺はついに解き明かしたのだ。 「おはよう、レイム」 「おはようございます」 「レイム君、おはよう」 三人が席に着いたのを見て、俺は言った。 「どうした? 眠そうな顔をしているな」 と、ウォルティアが言う。 「ああ、一晩中考えていた事があって」 「何をですか?」 と、リュー。 「ああ、リースリーズのことを」 「で、何か分かったの?」 と、イザリア。 「ああ、リースリーズは姿や形を変えてこの中にいるんだよ」
伯母に呼ばれる時はパソの調子が悪い時です。本日も呼び出されました。が、原因が分からないのは初めてでした。とりあえず、パソもモデムも大丈夫みたいなんですが......ケーブルかな? ともかく、私より(パソに)詳しい伯母の息子に聞いて解決する予定。酎ハイごちそうになって帰りました。えんどうまめプリッツはおいしいです。 その夜、ベッドで横になりながらも眠れなかった。昔の事がとりとめもなく思い出される。だけど、この街には俺のことを知っているのはヴェスラだけだ。 一体、なんだってリースリーズは盗むんだ? そう思ったら、彼女の盗んでいったものを順に思い出した。 イザリアの母の髪飾り、船で乗り合わせた婦人のブローチ(これは海に捨てられそうになったが)、フォーランズ国の国宝『女神の涙』、エリン公の祖父の勲章、ステルブの記憶、病院の時計、俺に関する記憶......。 ものに至っては関連性もなければ、ほとんど価値がない。そして、価値のありそうなブローチを捨てようとした。そして記憶を盗むという人間的でない術......魔法かなにかだろうか? 更に、エリン公の屋敷と病院では彼女の姿を見ていない。どさくさにまぎれたり、いつの間にか、だったり。 はたして、あの時は彼女は本当にいたのだろうか。 彼女の存在は確かだ。暗かったが、いる事にはいる。イザリアと年があまり変わらない少女だ。彼女は人間なのか? 考えがまとまらない。 眠れず何度も寝返りを打つ。今日は一人だった。ステルブは記憶がないながらも両親のところに行っている。イザリア、リュー、ウォルティアは別室だ。 「一人で寝るのも久しぶりだな......」 ある事に気づいた。
今日面接行ったら、相手は高齢の方で「履歴書は手書きだ」と言われちゃった。まぁ、言ってる事は分かるけれど。やっぱ手書きの方がいいのかな? とは思ったけど『パソコン出来る方』と。パソコンが出来る証拠として、と考えるとやっぱりパソコンでもいいかなぁ、と。 「ステルブまで記憶がないって......」 「なんの為かよくわからないけれど、リースリーズによってすべての記憶がない」 あくまでも本人の弁だが。 「一体何が起こっているの? リースリーズって?」 「盗族なんだけど、どうもそれだけじゃないようだ。俺にもよくわからない」 「じゃあ、街の人たちがレイムのことを忘れたのも、そのリースリーズっていうのが?」 「多分ね」 とりあえず、ヴェスラと別れた。また明日、会う事にする。 「今の人は俺のなんだ?」 ステルブは訪ねてくる。 「それは、思い出してからの方がいい」 宿に戻る前にステルブを両親に会わせる事にした。もしかしたら、少しは何か思い出すかもしれない。両親もまた、記憶が無い事を知ってがっかりしていた。それでも、ステルブが(体だけは)無事なことを喜んだ。 そして、ステルブの両親も俺の事は、記憶にない。
草うららか
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