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「フラワー・オブ・ライフ 1」よしながふみ 2004年04月29日(木) これはたぶん、学園コメディだと思うんですけど…(笑)一ヶ月遅れの新入生花園春太郎は、最初のあいさつで、白血病だったために1年遅れていることを告白。しかし、そんな重さを微塵も感じさせない陽気さ。 そんな彼を中心に、ぬいぐるみのように愛らしい肥満体の少年、一見理知的なのにオタク道まっしぐらの少年、オカマ風の担任…みんな愛すべきキャラです。散りばめられたエピソードに大笑い。自分がバカになった理由とか、古墳の話とか…(笑) しかし、よしながふみのすごいところは、爆笑させておきながら人の気持ちの深いところ痛いところをぐさっと突いてくれるところだと思います。 たとえば、「白血病だと告白することで、あんたは人間関係において強者の立場に立った」「自分の言った事で相手が多少気を遣うだろうくらいの想像ができなかったとしたら、あんたは馬鹿で子供で無神経」。こんなことをさらりと言う教師が、今まで漫画の世界でいました? 人気漫画などを見ていると、熱血で人の気持ちなんか考えずに突き進める人間が持てはやされてるっていうのに。 すごいなあと思うんです。無条件で笑えるのに、実は鋭い。 続刊も楽しみです。 ★★★★☆ 「面倒なこと」って、借金と同じで、自分が放棄したらその分誰かが背負わなきゃいけなかったりするんですね。 「自分は言っちゃってすっきりしたー」って思ってたら、それを言われた人が苦しんでたりして。 感想には書いてないんだけど、この間友だちに借りて読んだ漫画(わかつきめぐみの「そらのひかり」)で、人にあわせるのが嫌になって学校に行かなくなった男の子が、「そしたらまわりが自分にあわせるのがわかって、自分がしたくなかったことを人にさせてるんだって思ったら、自分と自分のいる状態がいやになった」って言ってて。 なんだか、ずっとそういうことの堂々巡りみたい。 |
「感染夢」明野照葉 2004年04月25日(日) 隼人の従兄が、妻と二人の子供を道連れに無理心中という事件を起こした。彼は事件の数ヶ月前から悪夢に魘されていたらしい。遺品を整理した隼人は、「たしかに彼女にどこかで会っている」「汚染された黒い空気」などとかかれた奇妙なメモを発見する。隼人は、従兄の葬式で見たある女を思い出す。初対面なのに、どこかで会ったような気がする…。最近見始めた悪夢。そして、マンションに越してきた女は、従兄の葬式で見た女であるような気がする…。 読み終わってみると、設定やらなにやらはありがちな話だなあと思ってしまうのですが、雰囲気作りがうまくて、読んでいる間はドキドキハラハラで、一息に読みきってしまいました。 ちょっとホラー読みたいなあという時にはお手ごろな、良質のホラーだと思います。 ★★★☆☆ |
「ジェシカが駆け抜けた七年間について」歌野晶午 2004年04月24日(土) アメリカの陸上競技クラブで仲の良かったアユミとジェシカ。しかし、アユミはカントクに選手生命を台無しにされたと、失意のうちに自殺。アユミは、以前ジェシカに、自分が二人いたら…という話をしていた。 そして、日本での競技中に起きた殺人事件。被害者はカントク…。 なんというか…作者のやりたいことは、わかります。 でも、これ、読んでおもしろい? その昔、「推理小説は人間が描けていない」なんていう論争がありましたよね。そういう論争はナンセンスだとは思いますが、この小説にはその言葉を送りたい。 丑の刻参りだとか、催眠術だとか、雰囲気作りなんでしょうけど、空々しい。説得力がなさすぎる。 この人の「ブードゥー・チャイルド」も、評判がよかったので読んでみたら失望させられましたが。今大人気の「葉桜〜」も読んでみたいと思っていますが、あまり期待しないでおこう…。 クイズやパズルのつもりで読むのなら、おもしろいのかもしれませんけど。あと、マラソン業界(?)の内幕という意味では、おもしろいのかも? 酷評ですが、ここは書評サイトではないんで。私の率直な感想を書く場所なんで。あしからず。 ★☆☆☆☆ |
「ワイルド・ソウル」垣根涼介 2004年04月11日(日) 戦後の南米移住政策。広大な農地と豊かな収穫物…バラ色の夢を謳った計画に応募者が殺到したが、彼らが連れて来られたアマゾン川最奥の土地は、とても人の手で切り開けるような地ではなかった。耕した土地は雨季にはあっけなく流され、病気に次々と倒れていく仲間。移住は、政府の棄民政策であったのだ。前半は、衛藤という一人の男の眼を通しての移住生活の苛酷さが語られます。 後半、入植地で生を享けたケイと松尾という若者、そして衛藤と同じようにブラジルをさまよった経験のある山本という男が、政府への復讐のために行動を開始します。 テーマがテーマだけに、硬くてへヴィーな内容なんだろうと構えて読み始めたのですが、文章も読みやすく、何より息もつかせぬ展開で、どんどん読み進めてしまえます。 前半の重さは、くどすぎず、それでいて悲しみや憤りも伝わってくるし、一転、後半の痛快さ、スピーディな展開にはにやりとさせられます。 後半は、報道記者の女性も事件に巻き込まれていくのですが、彼女も等身大で好感が持てます。男性の書いた女性とは思えないくらい。ケイとのやりとりがおもしろい。特にラストの手紙では彼女と一緒に笑ってしまいました。 久しぶりに、読み応えのある本を読んだ気がします。かなりオススメ! ★★★★☆ |
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