言の葉
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食後のコーヒーも終わって いったん部屋に帰って着替えたボクは またデッキへと足を運んだ 時刻はまもなく深夜といっていい時間だ
前年に初めてこの列車に乗った時 なによりも心を奪われたのが デッキからみる星空だったんだ
天の川とかよくきくけど これまで本当に星が川のようだって 思ったことはなかったんだけど その夜空には本当に星で埋め尽くされた ベルトが連綿と続いていた 空にはこんなに星がたくさんあるのかって 驚くと同時に どうしても目を離せなくなってしまったんだ
周囲は漆黒の闇 聞こえるのは列車の奏でる単調なリズムと 頬をきる風の音のみ そして降り注ぐ星
またそれを体験したくて デッキに出てきたんだけど またしてもそこには先客がいた 思わず胸がドキッとしなって うまく言葉がでなかった
ほんの数時間前まで 冗談を言って笑いあっていたのに 深夜のデッキ それも満天の星空の下でみるキミは ボクから言葉を奪ってしまった キミも先の饒舌さを置き忘れてきたらしく 二人で黙って星空を見続けたっけ
言葉はなくても とても暖かい そんな感じが嬉しくて いつまでも時間を掴んでいたかった
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列車が発車するとしばらくは 自分の個室で相方とおしゃべり その後車内の探索におもむいた
最後尾のデッキでのみ喫煙可ということで カフェ・ラテをデッキ前のバーで頼んで 風にあたりながら紫煙をくゆらす
南の大地の夕刻 カンガルーの姿を探す人々が デッキに陣取っていた 「あそこに!」 「あっ、そこにいる」 とにぎやかな声があちこちで起こる
カンガルーは夜行性の動物だから その姿を見られるのは 闇迫る夕刻と明け切らぬ朝陽の中のみという 灌木とブッシュの続く平地に チョコンとたたずむルーの姿は なんとも滑稽さを醸し出していた
そこに現れたのがキミだったんだ 初めて自己紹介をして キミたちの組み合わせの理由がやっとわかった ほんの1時間前に話したばかりなのに 思い切りうち解けてしまったボクたちは 日が沈むまでデッキで話続けたっけ そのときはまだ 「おもしろい子だなあ」といった感想しか もっていなかったんだけどね
「ミスター、食事の用意ができました」 スチュアードの案内でダイニング・カーへ たった二夜の旅なれど 食堂車の中は準正装といっていいほど めかし込んだ男女であふれていた
オーストラリアの食材を生かした料理を 目で、舌で楽しんだのち ボクと相方は再びデッキにタバコを吸いにでた そこには夜会服を身にまとい 少し顔を赤らめたキミがいたんだよね デッキの手すりに肘をついて 夜風を楽しむように
そして振り返った時のキミの笑顔が ボクの胸に響いたんだ
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始発駅のホームへは エスカレータを利用して昇っていく 日本のものよりも幅広で 大人3人が並んでもゆったりしていられる 上まで昇りきってホームに降り立つと 満面の笑みを浮かべたクルーたちが出迎えてくれる 1年ぶりにあった彼は 果たしてボクたちを憶えていてくれるだろうか そんな心配は杞憂だったと 思わず恥ずかしくなるくらいフレンドリーだった
ホームの一角に設けられた チェックインカウンターでも 1年ぶりの再会を喜び合う挨拶をかわし その後方にしつらえられた待合い席で コーヒーを楽しむ
待合い席といっても テントにテーブルと椅子を準備した 大変カジュアルな場所 昨年はホテルの一室で待っていたけど どちらかというとこちらの方が開放感があって 気分はいい
「今日の列車には日本人がもう一組いるよ」と 耳打ちしてくれたスチュアードの後ろ姿を眺めながら 団体ツアーでもなく乗り込んでくる日本人がいるなんて 珍しいなって考えていた
やがてチェックインしてきたのは どんな関係なのか?って想像も難しい 40代女性、30代後半の男性、20代後半の女性という組み合わせ
今思い出すと 初めて会った瞬間だったんだよね お互い少し気まずそうに黙礼をかわしたんだ
それがキミだったんだ
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南に向かう寝台特急に乗っていた
周囲は本当にあかり一つ無い漆黒の世界 列車のたてる音のみが静寂を切り裂いてゆく
日本と反対の季節だから夏 だとはいえ 夜の闇に潜む冷気と デッキにうずまく疾風が 歯の根もあわない震えを呼び起こす
でもボクは 一歩もそこを動けなかった
満天の星空に魅入られたのか はたまた 脇に立つ彼女の無言に縛られていたのか 誰にも説明のつかない 南半球の夜
部屋に戻ったボクは 寝るのが惜しくて哀しくて 部屋の灯りを全て消して 窓の外を流れる星をずっと見続けていたんだ
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かの地で出会ったあの人は
とりたてて美人というわけでもないし ボクなぞ眼中にもなく そこにいたある男性に向かって 「いい男〜」を連発していたけど
でも その気の置けない性格に惹かれてしまった わずか数日の そのまた数時間しか時間は共有できなかったし 日本に帰ってからの接点などないものわかっていたから 終点へと向かう列車の自室で 思い切り引きずられる自分がいた
終点の一つ手前の駅でホームに降りた彼女は 列車が動き出すと ずっとこっちに向かって手を振っていた その元気そうな姿がいまもまぶしい
星降る夜空を見上げるたびに思い出す 南のかの地に忘れてきた想い
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イブの夜 二人で見上げたイルミネーションは どこのものだっただろう
そんな風に考えながら 一人東京を歩く
道行く人々の表情に 安堵と焦燥を垣間見ながら
振り返ると そこには いつも笑顔のキミがいた
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どうしてこんなに 胸が抜けたように感じるのだろう 体のどこかに穴が開いて そこから何かがこぼれてしまったかのよう
そんな風に感じながら さっきまで笑いあっていた集団から 突如抜け出す
始まりはいつも突然 そして終わりはいつも必然
頭の中で何度も何度も 繰り返しながら その言葉の意味が消え去るのを ジッと待ってる
そんな自分は嫌いだろ? と 闇夜のカラスは笑った
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会社から出掛けようとして 階段をリズミカルに降りかけると 階下から 透き通ったようなにおひが ふわっと顔をつつんだ気がした
遠い記憶を呼び覚ますかのような 雨のにおひ
決して雨が好きではないけど その一瞬に感じるにおひだけは なんともいえず胸をうつ
雨の日の記憶の中に…
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決して背伸びする必要はない
今の自分を求めてくれる相手が きっとどこかに
そうでも考えないと 夜が長すぎてやるせない
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想いがつのって 苦しくて苦しくて眠れない夜 明日こそは告白しようと 布団の中で誓ったあの日
翌日彼女の姿を目にした瞬間 胸のドキドキで 呼吸すら苦しくなってくる
そして またも一人思い悩む
想いの染みこんだ夜は 浮遊感と絶望の間をさまよい続ける
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わずか半年でも 延命されたい気分の時と
すぐにでも殺してくれと 叫びたくなる時と
いずれの自分も 持てあまし気味なのは事実かもしれない
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そこにあると期待しつつ そっと開いて 何もなかった時
子どもの頃 夢の中ですごく美味しいものを食べていて ハッと目を覚まして 確かに持っていたはずの手をみて 虚空を掴んでいるのに失望した
そんな感覚に似ている
自分にはどうしようもない
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いったい何をいいたいんだろう いったい何をしたいんだろう
自分の中で いくつもの問いが渦をまく
混沌とともに昇華された想い
いつ気づくのか
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いつもいつも かけてもらいたかった一言は 「それでいいんだよ」っていう言葉
自分という存在に 果てしなき不安のみが宿る
見失いがちな その姿を 教えてくれるだけでいい
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そんな言葉は前時代の遺物だと 鼻で笑っていた時代もあったけど
生きるってことは その繰り返しなのではないかって フト考えてしまう
それがイヤでもなんでも無かったら 好きだって証拠だと思わない?
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2002年12月12日(木) |
初めてのメールフレンド |
指が凍えるようなこの季節になると いつも決まって思い出すのは 初めてのメールフレンド
もう何年前の話になるのだろう
今でこそ誰もがパソコンを使ってるけど ボクがパソコンを買った当時は フロアに2、3人くらいで だいたい何のためにパソコンを使うの? って感じだった
当時はまだインターネットなんて言葉は 全然流布してなくて パソコン通信と呼ばれ 特定のネットに加入して その中でやりとりをするものだった ボクが最初に始めたのもそんなものだった
そこの「メールフレンド募集」という掲示板を 1週間くらい眺めて やっと何通かメールを書いてみた 何を書いたらいいのかわからなかったけど とにかく今思えば赤面するような自己紹介とともに 日々の生活のささいな話を書いていたような気がする
初めて返事をくれたのが その人だった 地方に住むその人も そんなにパソコン通信に精通していたわけでもなく 日々日記の交換のようなメールをしていた 顔も名前も知らない相手にメールを書き その返事がくることが 不思議であり たまらなく嬉しくて 寒さに震えながら キーボードに向かっていたっけ
メールを初めて3か月 その人は突然いった 「今日で最後のメールです」 突然画面に浮かんだその文字は ボクの目の前をただ通りすぎていった 何が書いてあるのか全く理解できなかった
気を取り直して 何度か読み返してみて やっとわかったのは 彼女のご主人がパソコンに 寝る間も惜しんで向かう妻の姿に不信感をいだき メールを全て読んでしまったこと ご主人は何もいわないけれども そのことに気づいてしまったとのことだった
そしてボクとのメールは別に他愛もない内容なので 別に問題でもなんでも無かったけど 彼女にはそのときすでに好きな人がいたこと メールで写真を交換し そして電話で話すだけの関係ではあったけど すでに好きでたまらなく これから家を出るのでもうメールはできないという話だった
それまでそんな事 おくびにもださずに 良妻賢母ぶりをメールで語っていた彼女の 女を見た瞬間だった
あまりの急な展開に 途轍もなく驚いてしまったけど 何しろ何の現実感も無い話だっただけに ただうなずくしかなかった それも無機質なモニターに向かって
寒くなると思い出す 初めてのストーリー
彼女はいま 何をしているのだろう
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突然途切れた微かな糸は きっとキミまで繋がっていたんだって 自分に言い聞かせて
その先にキミの姿を見つけるまで 果てしなき道を歩こう
そんな覚悟をしてみたい
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2002年12月10日(火) |
キミはわかっていない |
いつだって どこだって キミの声を聞くと 思わずドキドキしてまいます
そんな風に感じる一瞬が好きなんだけど
でも 誰にも言わない もちろんキミにさえも
笑
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さりげなく けど 確実に降り積む雪の音に紛れて キミがいなくなった夜
ボクはシンと冷え込む部屋で 一人を感じている
朝陽をこれほど恨めしく感じたのは それが始めてだった
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さて この気持ちをどんな風に伝えよう キミはどんな風に受け取るだろう
見果てぬ先への期待と不安に押しつぶされそうになっても やっぱり想いは簡単には捨てられない
願わくば キミの中にもボクがいることを…
そんな風に想い悩むのも 苦しくもあり また 嬉しくもある
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胸の中で溢れててきた想いを どこにもっていけばいいの?
そんな質問には答えられない
だってすでに届いているのだから
そんな風にわかりあえたら なんと幸せだろう
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たとえば学生時代 好きな子と廊下ですれ違っただけで その日一日がとても素敵に感じた
ふとした瞬間に好きな子と目があって ドキドキしてしまったり 自分の視線に気がついてしまったのかと 不安に感じたり
毎日がささやかな幸せに溢れていた
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好きっていう気持ちと 自分なんかていう気持ちとの間で 心が揺らぐ
そんな漫然とした時間も また素敵な一瞬だったと思える時がくる
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文字通り15年ぶりに 桑田さんのライブにいった
デビュー当時から 相当入れ込んできた相手なんだけど ある時からぷっつりライブにいかなくなってしまった
というのは 高校生の時から足かけ9年間つきあった昔の彼女が 後援会に入るほどの熱烈なファンで いつも彼女に連れられていっていたから
別れた当時はなんとなく敬遠して また最近はなんとなくチケットを買うのがわずらわしくて いつしか足が遠のいていたんだけど 今回は立て続けにリリースされたアルバムを購入したせいもあり またたまたま申し込んだらチケットが買えてしまったということで いってまいりました
オープニングから立ちっぱなしの周りの若人のノリには 到底ついていけなかったけど
最後の最後まで声量衰えることのない 彼のナマ声に しばし感動
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小話をひとつ
「実は先週の日曜日に見合いをしたの」 2年前に一言もいわず ボクの目の前から去っていった元彼女は 携帯のメールでそう告白した
「なんで昨日食事した時に言わなかったの?」 「だってなんとなくいいにくくて…」
携帯の小さな液晶に浮かぶ文字は 彼女の表情は伝えてくれない
バックライトが消え暗く沈んだ液晶画面に 歪んだボクの顔が映る
見合い
その言葉にこめられた意志と意図に気圧されて ボクは何もいえなくなってしまった
以来2か月 ボクたちは生の言葉を交わすことなく ほぼ毎日携帯で挨拶をかわす
そこには幾ばくかの安心感と 聞けない焦燥が混在していた
「来週の日曜日に映画にいかない?」 久しぶりに彼女に投げた言葉は 「お見合いした人とデートなの」 というセリフで無様に砕けてしまった 「じゃ、邪魔しちゃいけないね、残念だけど」 心にもないセリフが 二人の間の空を回転する
「邪魔してくれないでありがとう 残念がってもくれないのね?笑」
彼女の泣き笑い顔を久しぶりに見た気がした
でも ボクには言えない
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最初の一段をあがったら 次は何をしよう いや 何もする必要はない
ただ暖めて暖めて 心から想いがあふれるほどに
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今年はなんていう年だったんだろう もう12月になってしまった
昨年末に異動になって W杯を見に行ってこいっていう 神の啓示だなんていって 6月まで狂いに狂って
そしたらなんと また6月に異動してた 新しいトコでも 前からの仕事を今年の10月までもってて またもや異動の内内内示?
たった1年なのに はるか遠い昔のよう
そしてまた新しい時間の始まりなのか
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