ケータイを変えた。 今日、近しい友人達やメールでの連絡先がはっきりしている友人には纏めてメールでお知らせをしたのでご存知の方も多いだろう。 様々な事情があって、今までのPHSから、ブランドイメージはなかなか良好のau by KDDIに乗り換えたのだが、そのキッカケはツマだった。ツマは以前から他のケータイとPHSとの写真の互換性にちょっと不満があるようだった。友人のケータイから送られてくる写真が見ることが出来ない、と彼女は時々嘆いていた。まあこれは俺も同様だったけれど、機種間の問題だから俺も諦めてはいた。 そうだ、この話とは直接は関係ないにしても、先日こんな“おもしろい”ことがあった。
会社で残業をしているとき、俺のポケットでケータイが震えた。ツマからの業務連絡のようであった。その内容は『今日の夕飯は家で食べますか』というもの。もしかしたら会社の仲間達と呑んで帰るかも知れない、と告げてあったので、その結果を知りたがっているようだ。夕食の準備をしてくれる側としては当然の確認であろう。俺は、いかんいかん……と思いつつ、ちょっとフザけた言い回しでこう返信した。
『 食べさせてください…… 』
いつもの軽いギャグのつもりだ。俺はケータイを閉じ、再び残業の資料作りに舞い戻った。 程なくして、再びケータイがぶるぶると言い出した。なんだろう、今度はメールではなく着信のようである。ケータイのサブディスプレイにはツマの写真が点滅していた。 「──はいはい、オットです……」 俺は送話口のところを左手で覆い、フロアの会議室に逃げ込みながら電話に出た。電話の向こう側からは雑踏の中にいるらしいツマの声が。 『忙しいところをすまないねえ』 「どーした」 『オット、さっき、メールをくれましたか』 「ああ、『食べさせてください』ってやつね。送ったよ」 『ああ、やっぱり! アレはオットからのメールだよねえ!』 異なことを仰る。ちゃんと着信にはオットの名前が出るはずでしょう──、というようなことを言うと ツマは俺の話を遮った。 『それがねえ、“オットじゃない人の名前が表示された”のよ〜』 「???」 『前に務めてた会社の課長さんがPHSを使ってたんだけどね、その課長さんの名前が表示されたのよぉぉ』 「その課長さんから“食べさせてください”ってメールが届いたことになるわけ?」 『そう! アタシ、間違ってその課長さんのほうにメールを送っちゃったのかと思った!』 どうやら端末自体の不具合で、本来、メール送信者である俺の名前が表示されるはずのところが、なぜかまったく関係ない人の名前が表示されてしまったようだ。 おもしろい。 しかし、考えようによっては怖い。 『今までメールなんかくれなかった人だからさあ、いきなり“食べさせてください”なんてメールが届いたから、怖かった!』 ツマの言うとおりだ。 その数週間前にも、ツマに謎のメールが届いていた。その送信者は、オット。 夕方の六時過ぎに、俺から『今から帰ります』というメールが届いた、というのだ。勿論、残業中の俺はそんなメールを送ってはいない。
たまたまこんな不具合もあって、ケータイを変える運びとなった。PHS自体も今までの端末も気に入ってはいたので、いろんな面でちょいと心残りはあるのだが、ま、新しいものが手元にあるというのは、それはそれで楽しいものだ。
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