いつぞやの台湾人に引き続き、今回は中国人。
中途採用でわが社の海外事業部(のような部署)に入社してきたTさんに、研修をやってくれという依頼があった。このTさんも将来は母国の中国(上海)でわが社の店舗開発の業務を行うことになっているようで、まずはその基本を勉強させたい、ということのようだ。 「部長、今まで黙っていて申し訳なかったのですが、ボクは本当に中国語が話せません」 「んなことは分かってる。彼は日本語バッチリだから安心しろ」 前回、研修をやったときは台湾から3人の参加者がいたが、今回はTさん一人。なのでこちらも講師役は俺一人ということになった。日中対決だ。
俺とTさんのお互いの自己紹介から研修が始まった。なるほどTさんの語学力は素晴らしかった。聞けば、日本留学を経て、就職も日本企業だったらしい。一時母国へ戻ったこともあったが、そこでもやはり日本企業に対するコンサルのような仕事をしていたという。 そりゃ日本語も流暢になるってもんだ。 俺が話す日本語はまず完璧に理解している。法律や契約に関する専門用語も解説をする必要はまったくなかった。ほとんど日本人に研修を行っているような状態。彼も学生の頃には日本語を一生懸命勉強したのだろうな、などと考えると、日ごろのオノレの勉強不足を痛感させられた。
研修の合間、休憩時間にはいろんな雑談をした。なにしろ日常会話どころか、俺の発するくだらない冗談も理解してしまうからすごい。 そんな雑談の中で、彼が発した台詞。
「──いやあ、ぶっちゃけ、かったるかったっスよ」
Tさん、そんなスラングな日本語まで、なんで知ってるんですか。
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